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忘却と問題作と高性能と

「あれ?私は一体?」

 サーティス様が、少しふらつく身体で起き上がると、周囲を見回した。

「……サーティス様、気分はいかがですか?」

「気分は悪くないですが、私はどうして倒れていたんですか?ここに来た後の記憶がどうも曖昧で……」

 あ、忘れているのね。

 神様でも忘却という精神的な防衛反応があるのか。

 とりあえずサーティス様の発言に、痛いところは見受けられなかったので、ヨシとしよう。

 しかし何か忘れているような……


 なんだろう?

 あ!リグレット様か?

 私は視界にチラリと入った、リグレット様に意識を向けた。

 まだ沈んでいる。

 口から出でいる何かが、ナイトキャップを被り、欠伸をしながら口内に戻る準備をしていたので、多分もうすぐ復活するだろう。


 うーん、まだモヤモヤする……うん、これじゃない。


 こういう時は思い出してみよう。

 そもそも私はサーティス様が来るまで、なに考えていたっけ?


 ……

 …………


 そうだよ!ガワだよ。どのガワ選ぶか考えていたんだ!

 認識阻害魔法とかユニークスキルでガワのビジュアルはなんとかなるって、思い付いたんだ!


 あー、スッキリしたぁー。


 そうそう、忘れないうちにサーティス様に確認取っておこう。

 ついでにフォローも忘れない。


「サーティス様、多分色々あってお疲れだったんですよ。ところで全然話は違うんですが、こちらの着ぐるみに、認識阻害魔法を掛けることは可能ですか?」


「疲れか……確かにここのところ、主にリグレットの尻拭いで録に休んでなかったのもあるのかもしれませんね」


「そうですよ、記憶にないかも知れませんが、相当仕事の不満仰ってましたよ」


「ハハハ、情けないところ見せてしまって申し訳ないです。で、これに阻害魔法掛けられるかって質問でしたね、掛けられますよ。でも掛けてどうするんですか?」


 良かった、普通のサーティス様だ。


「え、着るんですけど」


「これ、着るんですか?正直いって、あまりお勧めはできませんが……奏さんがこれがいいっていうのなら、いいですが……しかし地球人の美的センスは、私とは違うのですね」


「いや、美的センスは大して変わらないですからね!

 リグレット様が私の希望する『排泄不要』で『生理なし』で『ムダ毛なし』な身体で転移するなら、これ着るしかないっていうから、仕方なく着るんですよ!

 別の方法あったら、そっちにしますから!」


「はあ、リグレットにはエルガルド運営や、システムやツールの使い方にも、目を向けろっていってるのに、一向に目を向けないから、いつもこういうことになるんです」


 あれ?

 生理とムダ毛には耐性ついたのかな?

 そう思っていると、サーティス様がわずかに眉を潜めた。


「リグレットと奏さんが、この部屋にいるって部下から聞いた時はリグレットも、ちゃんとシステムを理解したのかと、嬉しくなったのに……まさか問題作を勧めるなんて」


 あ、やっぱり問題作だったんだ、これ。


「奏さん、これ着る以外にも方法ありますから!」

 サーティス様はおもむろに、頭がテレビで、身体はやはり全身タイツで覆われた昔のCMキャラクターのガワ一式を脱がした。


「これが奏さんのご希望する身体で、転移するためのアイテム、憑魂(ひょうこん)人形です」


 憑魂人形はデパートにあるマネキンのようだった。

 よくみると人間と同じように間接があるので、どちらかというとデッサンに使う木人形の方が近いかも知れない。

 素材はというと、これが不思議だった。

 すべらかな陶器のようにも見えるし、無機質な金属のようにも見える。

 固体とも液体ともつかない、その素材感に私は、さすが異世界といわせてもらいたい。


「この人形の凄いところは、姿かたちやスキルを調整できるんですよ」


 サーティス様による詳しい説明はこうだった。


 憑魂人形はサーティス様たち神様が、下界(エルガルド)に行くときに使う、魂を憑依させることができる人形で、どんな魂でも憑依させることができるので、私でも使えるという。


 おおー、すごい、すごいぞ!! なんて高性能なんだ!


「でもなんで、リグレット様は知らなかったんですか?リグレット様も、これ使って下界に降りるんですよね?」


「リグレットは下界(エルガルド)運営より、他異世界がらみの仕事のほうが楽しかったようで、下界に降りたことがないんですよ。

 私も一度くらい見学のために下界に降りろとはいっているのですが……」


 あー、リグレット様って興味ないことには、見向きもしないタイプかぁ……


「その代わり一度興味持ち出すと、それはもう私も引くくらい、執着するんですけどね……

 あ……そうそう、そんなことより、早速試してみましょう。この部屋では機材がないので、ちょっと場所変えますね、詳しい憑依方法は後程説明しますので」


 その言葉ののち、サーティス様は憑魂人形を何もない空間に仕舞いこむと、資材室を後にした。


 これこれ!これぞ異世界って感じだよ!

 やっぱりサーティス様はミスター異世界だ!

 オラ、わくわくすっぞ。


 そんな気持ちで、私はサーティス様の後を追った。

 リグレット様?目が覚めたらゴキブリみたいに、どこからかやってくるよ……多分。

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