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「これは…?」
「あ、そっか君説明されてないんだよね。魔法だよ魔法。うん」
そういうと中学生(仮)は俺の横を指さし上下に指を振った。指にはまとわりつくように青白い煙のようなものがふよふよと漂っている。その煙がゆっくりと俺の横に移動して来た。
「この白いのは、なんなんだ?」
「さぁ?僕は湯気って呼んでる。」
湯気…。
「もっとこう、カッコいい名前なかったの。エ、エクトプラズムとか。」
「んな中二病な。」
この状況で、一人称が僕の、魔法が使えるやつにそんなことを言われるなんて。
そうこうしているうちに湯気は俺の横で人型になっていった。みるみるうちに足、、胴体、手、顔、とどこかで見た人物が出来上がっていった。
「お、俺じゃねぇか!!」
「うん、そうだね。」
中学生(仮)は適当な相槌を打ちながらせっかく出来上がった俺の顔をパンチした。するとパンチされた顔から湯気の状態に戻りそこに俺2号はもういなかった。
「まぁこれが魔法ね。君たち人間の理解できる範囲のことではないし、いわゆる化学?を超越しちゃってる感じのものだからなんとなーく認識だけしてて。」
「お、おう。」
「で、さっき出したこの画面を見てよ。ここに君のスペックが載ってるんだけどまだ公開されてない情報もあるね。とりあえず、今出てるのは人間であることと名前、あと所持金。所持金はゼロだけどね。って君の名前、佐々木幸信っていうんだ。」
「あぁ。あ、お前の名前は?というか何者かもわからないんだけど。」
「えぇー。言わなきゃダメ?」
なぜ渋る。
中学生(仮だけど名前を言ってくれないからもう中学生で決定しちゃだめ?)は、いたずらっぽく笑い俺のほうに向きなおった。
「そんなに知りたいならこの契約書にサインしてよ、サイン。」
「契約書?って俺は一体何を契約すんだよ。」
「挑戦者になるっていう契約。契約書にサインすれば君の元居た世界に戻ることもできるけど。」
「本当か!?よしサインさせろ!今すぐだ。」
「んじゃ母印ねここに…。そうそう。はいどうも。」
俺は右手の親指をよくわからない真っ赤な液体に突っ込まれて母印を押させられた。あの液体が何だったのかは知りたくない。なんだか生臭かったのだ。
「おい、結局お前の名前は何なんだよ。」
「名前は内緒。そうだなー。僕は桜が好きなんだ。サクラとでも呼んでくれ。」
そうして俺は中学生(仮)もとい、サクラと奇妙な夏を過ごすこととなったのだ。