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「うわぁぁあああ!」
自分の絶叫で目が覚め掛け布団を放り出し起き上がった。着古したTシャツが汗で背中に張り付いている。
大きくため息をつき、手を挙げて伸びをした。
この頃嫌な夢ばかりを見る。何かに追いかけられていたり、いきなりビルの屋上から飛び降りようとしていたりするのだ。特にビルの夢は最悪で飛び降りた瞬間目が覚め足をつっている。
きっとストレスなのだろうか。嫌な汗を手で拭い、ベットから足を下す。
今日も朝ごはんはトーストで、コーヒーをいっしょに淹れるがそろそろこの朝食にも飽きたものだ。お皿を片付け制服に着替える。
教科書が一冊も入っていない学生カバンを肩にかけ、玄関の扉を開いた。
今日から夏休みである。部活一本に集中できる、俺にとって最高の夏休みだ。
と、思っていたのだが。俺の前に広がる景色は見慣れたアパートの玄関先でなく、どこまでも広がる大草原だったのだ。
普通はパニックになるよな、どんな人でもきっと。まぁ、俺もなったし。
青々と広がる草原は穏やかな風に揺られ、悠々とした情景を作り出していた。妙に明るい太陽を睨み、俺はいつの間にか歩きだしていた。
腰くらいまで高さのある草たちがくすぐったい。数十メートル先に丘が見えた。大木が一本、天に上るように生えており、木の影が落ちる地面はその部分だけ禿げていた。
しかし、いくら歩いてもその丘にはたどり着けない。数十メートル先にあると思った丘はもっとずっと先にあるようだった。
だが、丘の大きさは一向に変わらないし周りの景色も変化がない。もしかして俺は全く進んでいないのではないかと不安になった。
それでも足を休めずに進んでいると、へとへとになった頃にようやく丘についた。
丘には大きな木があり、辺りを影で覆っていた。その陰に収まるように座り込むと安心できたのか疲れがどっと襲ってきた。
「しんどい。」
ぽつりとつぶやいた俺はゆっくりと体を倒した。
はじめは慌てていたのに、今はこうやってくつろぐくらいには落ち着いていることが妙だった。不思議なことに、焦燥も恐怖も感じずただひたすらに穏やかな心境であった。
どのくらいこうしていたのだろうか、穏やかではあるが風の吹くここでしばらく寝っ転がっていたのだからあの嫌な汗はすっかり引きむしろ寒いくらいだった。
体を起こし空を見上げた。いつの間にか暗くなっていた空に驚くほどきれいな星々が散りばめられている。
「どうやって帰ろうか。」
入ってきたアパートの扉はもうない。俺は元の場所には戻れないのか。
そんなことをぼんやり考えていると大木の上で何か物音がした。
突然のことに驚き体を縮こませ、ゆっくりと後ろを振り返った。
「やぁ、君が今回の挑戦者だね。」