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花うたとアールグレイ  作者: 星田 憩
6/13

頭でっかち

部活を辞めた。

体力がもともと少ないせいもあるけど、たぶん気持ちから悪化していった。


自動車学校が終わるまでは新しいサークルには入らないと思う。気が付いたら、自分の将来について考えていた。

私は俗にいう一般入試で進学したことがない。全部推薦だった。状況が状況だったから本当に助かったけど、私の場合のそれは、裏を返せば「他の人が持っている何か」を持ち合わせずに同じ場所にいることを意味していた。たとえば微分が、古文が、会社で働く上で何の役に立つのかって。大事なのは信頼を得る力だって、人間関係をうまくやっていく力なんだって、一部の大人は言うけど。


じゃぁ、なんでまだ「成績」が存在するの?


いい成績でいなきゃいけない。遅刻欠席はしたくない。否定したいけど相性悪いけどどうしても自覚してしまう理系至上主義。私はなんて気持ち悪い人間なんだろう。

圧倒的にカーストの下の方の大学。周りを心のどこかで馬鹿にする自分が嫌だ。成績で左右されたくないくせに成績フィルターをかける私も嫌だ。他の人を嫌いたくない。馬鹿にしたくない。なのになんで、うまく動けないんだろう。だめなことはしたくない。グレーゾーンには手出ししたくない。心のどこかにいる優等生。お前はお前が思っているより「いい子」じゃないよ。


ずっと大学院まで行く気でいたから、卒業したら就職するって友達の言葉にハッとした。私はこの分野にいていいんだろうか。

適性ってなんだ。理系だねってなんだ。知識があるってことは別に向いているってこととは違うでしょ? 私がなりたいのはなんだ。やってて楽しいものは全部否定されてきた。好きなことを職業にできるって幸せなんだよ、って「あたり」の大人は言う。しててもいいことから「はずれ」たら好きなことを職業にできないの?


気が付いたら第一志望だった大学の院試のホームページを見ていた。初めて憧れた大学だった。いまだに「もしあのとき」を考えてしまう。たぶん私は、今の私が認められないし、今の私しか知らない人に、今の私として評価されるのが嫌なんだと思う。「私だって昔は」ってやつ。醜い。


お医者さんは、君は無意識のうちに自分を縛り付けている節があるよって言ってた。書いててわかるけどわからない。理想の自分がいることはわるいことではないし、うまくいけば向上心にもなるし、おとなはほめる。



ちょっとだけわるいこでいさせて。



数学と物理が本当は苦手で、正直福祉とかの勉強がしたくて、でもまぁ環境問題の勉強もしたいけど、工学の計算はいやだなぁって思ってて。部活辞めたのも人間関係が汚すぎたからで、理由を人のせいにしてみたりして。

それを本当に後ろ指さしているのは私だったりする。


どうしたもんか。


結局、かつて足切りされたTOEICの勉強をまた始めた。勉強ができることにこだわるのも変だけど、かなしいことに点数が上がれば楽しいし、できると自分を認めてあげられそうなのだ。自分を認めるってことと、他人を見下すってことはたぶん違うんだろうなぁ。


おとなになるまえに、少しでもこたえに近づけますように。



実家に帰省したら、玄関で鳩飼ってました。

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