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花うたとアールグレイ  作者: 星田 憩
4/13

体力ちょみ子

あ、しまった。この世界は生きづらいかもしれない。


たまに悪い予感がする。普遍に近い生徒がほとんどだから、ときどきずれたことを言うとほんとに変わり者を見るような目で見られる。やりにくい。


こっちで新しい病院に行った。女の先生だった。いっぱい話した。身の上話をするのに抵抗がないのはいいことなのか、わるいことなのか。いい人だった。ちょっと不安なのが、いままで不安を緩和する薬とねる薬だけだったのに、初めて抗うつ薬を貰った。おいおい。まじかよ。環境が変わったから神経質になってるのか、もともとそういう状態だったのか。自分ではしょげやすくて、寝るのが下手な人って思ってるんだけど。うーん。悩みは尽きないけど、話せる人もいない。テストが近い。


肌に合う人が見つけられない。性的な意味じゃなくて。変に高い志半ばで滑り込んできたから、周りとのギャップをひしひし。話しやすい人もいるけど、今までの人ほどじゃない。余分な感情なしに言うと、周りがほんとうに普通の人だから話しにくい。普通の会話ができない。うまい相槌も、愛想笑いもできない。一緒に過ごしてきた時間が違うからか。


なんか、疲れているのかもしれない。関東にいた頃みたいに、街の煩さで寂しさを紛らわすことはもうない。つまらないというか、味気ないというか……。外の音が少ない分、大きく聞こえるし、自分の声も大きい気がしてくるから、都会にはないくるしさなのだと思う。外国にいるみたいだ。


親に内緒でバイト始めた。とはいっても精神科に行くから仕送り増やしてって言いづらいからなんだけど。体力ちょみ子だから週一でのんびり家庭教師。妹と同い年の女の子を教えている。女の子のお母さんがいつもおやつと家で食べる用の夕飯をくれる。それがすっごく美味しかったり、そうじゃなかったりする。アールグレイを出してもらったときにやたら喜んだせいか、次の回から冷たい紅茶を出してくれるようになった。普段、節約のために水しか飲まないからすごくしみるんだ。ちょっとしあわせ。


夏休みは帰省して、高校の頃通っていたAO塾にバイトしに行く。AO入試のことを親戚は一芸入試と呼んだ。確かにそうかもしれない。学力じゃない判断って一見邪道のようだけど、私はAO塾が好きだったし、すごく救われた。先生は今まで出会った人の中で、いちばん人としておもしろい……興味をそそられるひとだった。高校生を大人のように扱うし、なかなか好きなように生きてるし、そしてとんでもなく頭がキレる。理系研究者としての道に進まなかったとしたら、その先生の右腕になるのもありだなぁ、なんて思って。連絡取ったついでにやんわーり話したら、今度授業やってみないか、と。あの先生が言った「絶対向いてる」って言葉がだいぶ嬉しくて、ちょっと泣いた。


これからのことはまだわからないけど、わくわくすることは多いほうがいい。


ついったーで学生向けお悩み相談室をつくりました。ときどき連絡が来るので頑張ってます。


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