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花うたとアールグレイ  作者: 星田 憩
2/13

イヤホン

音楽も聴かずにイヤホンをしていることがよくある。


気分の音楽が見つからなくて、たまに自分の録音した歌声を聴いて反省したりする。それでも、イヤホンを外すと「うるさい」と感じてしまう。


少しメルヘンな話かもしれないけれど、私は散歩しながら光と緑と会話するのが好きだ。その日の空の色を眺めてその空を囲う電線を目で追うのが好きだ。体調のいい日はイヤホンをせずとも光と緑だけで歩いて行ける。悪い日はずっと白いイヤホンが手放せない。何も聴いていないのに。


たぶん、感受性がばかなんだと思う。


少し頭が痛い日とかは色んな声が聞こえる気がする。ちゃんとした服を着ないと、すれ違う人みんなが私を嘲笑っているような気さえする。コンタクトを手放せないのもそれが原因なのかもしれない。


自分にそういう気持ちがあったように、他人の気持ちがわかってしまう。誰かの忠告が聞こえる。気を遣ってしまう。私の居場所がなくなる。心の中でさえも。


他人の顔を窺っていきてきたからか、やけに声が聞こえてしまう。空回りのこともあると気づかないから、イヤホンにしがみついているのかもしれない。



敬意って大事だと思う。たぶん、私は何処かで他人のことを見下しているから自分も「見下されているんじゃないか」って思うんじゃないか、なんて。仕事ができるから、頭がいいから、容姿が優れているから。そんなんじゃなくて、もっと、こう。


私は頭がよかった。というか、何も努力せずともそれなりになんでもできた。高校名を言えば大体の人が驚いてくれる。私の下から数えて何番、という状況を知らない人なら。いつのまにか周りは「努力する癖」がついている人たちばかり。それか「それなり」の威力がまだ続いている人たち。いじめじゃない、いじりなんだろうけれど。「あいつは勉強ができない」って声。入学が決まった大学も、胸を張れないでいる自分がいる。


ヘンな定規で測っている気がする。私が知りたいのは階段でできた世界じゃない。色と波と光。見下して、見下されたからわかるものがあった。人の本質に近い個性みたいな何か。その人の特色、その日と自分の波、見え隠れする光。いろんな色があってほしい。格差と敷かれた道しかないのは嫌だ。


私の親にも色があることは、最近知った。いわれたことをやり、注意されたことを守れば危険から逃れられた。そんな「かみさま」みたいな時期はとっくに終わっていたのだ。母は18歳の母であり、年と同じだけ娘だ。私に似た意地っ張りの、感情をきれいに成形できない女の子だ。だから、どうしてもその小さな女の子が顔を覗かせることがある。それが私の持つ大人への偶像とときどき違う。やっと少しわかったのは、母に大人であってほしいと願うより、私が母の持つ女の子と対話した方が、ずっとやさしくわかりあえるということ。


バイトはじめました。豆腐と豆乳と会話してます。お年玉ってお金の価値がわかった頃に終わるシステムなんですね。


それでは、微分してきます。

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