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旅立ち


あっと今に

トタン屋根は小さくなって

そのうちに見えなくなった


どれくらいの時間を飛んだのか

どれくらいの距離を飛んだのか


空と呼べる場所も

地上と呼べる場所も

すべて同じ色で

上に向かっているのか

降りているのか

横に向かっているのか


全く解らない

シズルのこの手を

もしも放したら

私は落ちるんだろうか

シズルはどんどん飛んでいく


何かを考え込んでいるのか

表情が読めない


ただなされるがままに

手を引かれ

空を飛んで

シズルの後ろで

私は

上へ下へ

くるくると回っていた


(何にも風景が変わらないのは

寂しいな)


時々 遠くで

何かが小さく光る


光りに目を凝らすけれど

すぐに消えてしまって

正体はわからない


目の錯覚かも知れない




ザザァァァッ!


砂に引きずられ

やっと降りてきていた事に

気がついた


シズルはさっさと歩いていく


「あ、」


慌てて 追いかける。


シズルは振り向く様子もない

(私を気遣ったりはしない訳ね、

あーーー寂しい事)


キュキュキュキュと

砂の音を聞きながら歩く

相変らず 此処にも何もない


ただ、前を歩くシズルを

ふとすると

砂の中に消えてしまいそうな

シズルを 見失わないように

歩く


飛んでいたときに見た

光りが 此処でもみえる


うっかり光りに気をとられると

シズルを見失う


シズルはどんどん歩いていく


「シズルーーーー!!どこまで行くのぉ??

ねぇぇ!!」


(無視かよ)


はぁぁ

ため息をつきながら

仕方なく進んだ


シズルを追いかける以外

私にはやる事がない

見つけられない


何処に居ても

何をやっても

結局私は文句ばっかり

言うんだ


自分には何かがあると思ってた

在ると、思いたかった


周りにある

かけがえのない大切なものが

とても薄っぺらに見えた


くだらない


キュキュと砂が鳴る

シズルは 立ち止まっていた


「どうしたの?着いたの?」


其処には 何もないように見えた

ずっと変わらない景色

体が疲れていなかったら

歩いていた事さえ

幻に思えるほど


何も変わらない

白い世界


「ねぇ」


シズルは答えない


「ねぇってば」


不安で 腹が立った

此処まで歩いてきて

何だよ


「ねぇ!」


そういうと シズルを

押した


と、


「え・・・」


シャワッ


そんな音と一緒に

シズルが消えた


私は出した手を震わせて

座り込んだ


シズルだった場所に


「え・・」


嘘ぉ


シズルだった場所は

もう何処だかわからない


「どうしてぇ」


「どうしたらいいの?」


「ねぇ、何で?」


「ねぇ、どうしてなの?ねぇ」


もう、言葉にならなかった

さっきまで居たシズルがいない


さっきまで在った

少しの希望がない


少しの安心も


ただ、涙が出て、


シズル、

ごめん

きっと私がわるいんだよね


でも、どうしたらいいんだろう


泣きながら

シズルだった場所を抱いた

シズルだった場所は

少しだけ 暖かいような気がして

又、泣けてきた


シズル

わかったよ


どうして私が一人なのか


私、

きちんと人を大切にしてなかった

だから

天罰が下ったんだ


「お前なんか死ねばいい」

「お前は弱い」

「お前は何の価値もない」


私が

私を愛してくれた

大切な人に 言ってきた言葉だ


涙が止まらない

なんて事を

なんて事を言ってきたんだ

なんて酷い事を

してきたんだ


友達が私の為に

してくれた事

当然だと思ってた

私は 

居るだけで 

皆を幸せにしてるんだから

当然だと思ってた


どんな気持ちで

友達は


大切な人は

私を見ていたんだろう

私は一人でも

幸せに出来たんだろうか


家族にも

私は 少しでも

愛を送っていたんだろうか


欲に駆られて

他ばかりを見て


私はなんて

愚かな人間だったんだろうか

どうしよう


どうしよう


皆を傷つけて

一人になっちゃった


どうしよう

くしゃくしゃに泣いて

でも

足りなくて

私のやってきた

沢山の酷い事を

おもいだして


そのたびに

私を大事にしてくれた人を

思い出して

悲しくて 悲しくて

砂が口に入ってきたけど


「ごめんよぉ」


「愛してたよ」


「皆、大好きだったよ」


出来れば

あの日の私を

殺したい


悲しくて悲しくて

悲しくて


「会いたいよぉ」


「タクゥ」


「大事にするからぁぁぁ」


天を仰いで 泣いた


「あああああああああああっ!」


「ああああああああああああっ!」


足元がぐにゃぐにゃする

そういえば

泣くと空間が歪むっていってたなぁ


「あああああああああああああっ!」


「タクゥっ!」


泣いて泣いて

涙も枯れてきて

ひぃひぃ いいながら

見ると


「あ!」


緑の草が揺れていた


瑞々しい緑が

風に揺れて

何処までも続いていた

私はその中に座っている


「空は・・」


見上げると、


「あ・・お・・い」


大きな愛に

包まれている気がした

こんな私でも

許してくれる


唇をかんで

何だかわかんない

うなづきながら

泣いた


「そうか。」


「一人じゃないんだ」


風に揺れた草が

私の頬を撫でる


「此処から始めなきゃ」


立ち上がり、

二つの足に

力を込めた


「一人じゃない」


「私が作る!

今度こそ!私が!」


そう、

少しずつ

思い出していたんだ

私が

すべき事








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