トタン屋根のお家
トタン屋根のお家
・・だと思うんだけど
屋根以外は砂にもぐってしまっているのか
見えない。
「どうやって入るんだよ」
ついさっきまでは
絶望して、反省して、
神様に謝っていたというのに
そんな事はもう忘れていた
屋根は小さい
「このくらいの大きさなら1kくらいかなぁ」
シズルがタクに似ていた事も
やけに人懐っこい事も
笑顔が可愛いのも
背が小さいのも
全部が私を安心させた
危険を感じないんだよ
まぁ、いまさらココで危険をかんじたところで
これ以上どうなるって言うんだ
出来たら私も世界と同じ様に
壊れたいと思っていたんだから
そりゃ出来ればぽっくり
え?死んだの?
位簡単に死にたい と、勝手な事は
思っているけど
今の私の望みは
とにかく死ぬ事
こんな 訳のわからないところから抜け出して
早く死にたい
(結局 何処に居ても死にたいみたい)
そのためには
寿命を使い切らなきゃ
自分で死のうにも
ココでは そんな希望も無い
飛び降りれば、飛べてしまうし
刃物は見当たらないし
死ぬ為に これからココで
何をすればいいのか
それを解決するきっかけを
シズルは持っている
と
思いたい
「ミウってば!」
「わぁぁぁぁっっ!!」
肩をつかまれた
「もしかして、迷ってるのかと思ってさぁ
待ってても来ないし」
迎えに来たよ
といって 砂の下へ降りた
「??」
「??!!」
どっから降りたんだか解らないけど
ズンッ
という音がしたかと思ったら
もう部屋の中に来ていた
思ったよりも大きなお家
20畳くらいあるかな
内の4畳半の家よりもずっと広いから多分
板張りの床に 四角い窓が壁四面に一つずつ
右手にはキッチン
左手にはベッドが合って
真ん中には絨毯と
食卓
すべて使い込んだ木の家具で
皆手垢で少し黒ずんでる
大草原の何チャラに出てきそうな
可愛いお家
しかも驚いた事に
窓の外には森があった
「ミウは、こういうところに住んでたんだぁ」
へぇぇとシズルが珍しそうに 歩き回った
「え?」
(住んでねぇよ)
「木のお家だね」
そういってニコリと笑った
「ご飯が出来てるよ」
キッチンでおいしそうな匂いをさせていた
モノ をシズルが食卓に運び
どうぞ、私を促がした
「ありがとう」
うろたえた事に
きずかれないよう
目を伏せながらテーブルに座った
「うわぁ、おいしそう!」
並んだのは
出し巻き卵、海苔、
味噌汁、秋刀魚
どれも焼き立てで
「これ、シズルが作ったの?」
シズルは、フフ、とだけ言うと
フォークで食べ始めた
私もフォークで食べるのか?
と見ると 私の前にはちゃんと
お箸が用意されていた
とにかく食べよう
早くしないと 大好きな出汁巻きが
しぼんじゃうよ
「いただきまっす」
出し巻きはふわふわで 出汁も上品
んんんんんんんん最高!
これだけでご飯がたらふく食べられるわ
海苔もぱりぱりで
味噌汁には 小松菜とお揚げが入っている
いい!
センスがいい!
この小松菜から好い出汁が出んのよね
フンフン
鼻で抗い息をしながら
もっしゃもっしゃと喰らいつく
「シズルぅーおいしいよぉー
あんた天才!」
秋刀魚もまた
丸々と太ってー
あーーーうんまいっ
「お代わり、あるよミウ」
「いいの?食べたい!」
口の中を一杯にしながら言うと
シズルは笑いながら
二膳目のご飯をよそってくれた
・・何だかシズル嬉しそうだなぁ
「あのね 私聞きたいことが
山ほどあるんだけど いい?」
そう、山ほどある
この世界の事
シズルのこと
このお家の事
他にも人はいるのか
「駄目だよ」
「え?」
「僕には答えられない、
答えはねミウ自身が出すんだ」
「え? あの どういうこと?」
それ以上シズルは答えてくれなかった
「シズルは どうして此処に居るの?」
「此処は何処なの?」
「どうして」
そういいかけたところで
「全部決まってるんだ。ミウ。
君は、忘れてしまったんだよ
ただ、それだけだよ」
「でも!」
「もう、其処までだよ!!」
温厚そうなシズルの大声に
黙ってしまった。
ヤッパリ トンでもない事に
なってんだなぁ
シズルは知ってるのに、私は知らなくて
なんだよお
死にたいってばぁ
もうやだぁ
シズルに会って
もしかして、何か解決するのかもと
そう、思っていたのに
解決なんかしないんだ
どうして生き残ったんだよぉ
私、
どうしたらいいんだよ
元々他力な私。
今回の事も
なんとなく 自分ではない誰かが
解決するもんだと
そう、
思っていた
急に
自分の置かれている
状況が
さっきまでと何も変わらず
それどころか
さっきよりもどんどんと
深刻な事になっている事に
きずいて
泣けてきて
泣けてきて
シズルはどうみたって
年下だし、もしかしたら敵かもしれないけど
もう、泣けてきて
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
30も過ぎて、こんなに泣く事があろうとは
息が止まるかと思うほど
子供の頃に泣いたけど
こんな風だったかなぁ
「わぁぁぁぁぁっっひっひっ」
だぁれも止めたりしないし
シズルも迷惑そうにするだけで
だから、好きなだけ泣けた
困るなら、困ればいい
私が一番困ってるんじゃ
「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!あぁぁぁぁぁ!」
後から後から出てきて、
一度出てきた涙はなかなか
止まらなくて
肩で息をしながら
泣いてます!私
泣いてます!候
じゃんじゃん泣いた
知らない世界で
知らない人で
どうやら、誰も味方ではなくて
誰も私を理解してなくて
誰も私を愛してなくて
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
タクも居なくて・・・
他に
誰も居そうにも無い空間は
私から見栄やらプライドやらを
取っ払ったみたいだ
さんざん泣いて
そろそろ疲れてきて
はぁはぁいいながら
周りを見ると
バンガローだった
「おおお!!いつの間に!!」
暫く泣いたら、
もうなんとなく 怖いものが
無くなった
元居た世界よりも
こっちのほうが楽かも
普通 とか、常識 とか
なさそうだし、
だって 二人しか居ないんだし(多分)
それに
愛する人も居ない
これは 楽かも
でも、考えながら少し寂しいけど
でも、
でも、
「バンガローーー!」
シズルを敵に回して
好いわけが無い
とにかく 仲良くなろう
どんなやつなのか知らなきゃ
ようやく泣き止んだ私を
チラッと見てから
シズルは
「泣くのさ 止めてくれる?君が泣くとさ 空間が歪むんだよ。解らないかもしれないけどそのたびに体をあわせなきゃならなくて、結構疲れるんだよね」
「そうなんだ、ごめん」
何で私が無くと空間が歪むのか
聞きたかったけど
(質問は 駄目だったよね)
今、解っているのは
シズルは
私の知る限りの
人間の形をしていて
大好きだったタクに似てるって事
砂漠の(ってことにして)
の先には滝があって
赤いトタン屋根の家があるって事
白ではない色は
この屋根しかないって事
家の中は、どうやら私のイメージで
変わるらしいって事
多分食事も そう
質問は駄目な事
泣くと空間が歪む事
歪むような
不安定な空間に
居るという事
今のところ
私のシズル以外に
人は 居ないと言うこと
(って、何にもわかってないじゃん)
「さぁ、行くところがあるんだ。ミウが泣くから
ちょっと道に自信なくなったけど」
なんか、怖いんだけど
これもヤッパリ
行くしかないんだよね?
「さぁ!」
シズルが伸ばした手に
顔を上げた
あーーー
今度はなにがあるんだろーー
シズルは私の手を握り
また、
何処だかわからない
ドアから
飛んで出た




