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7話・イケメン四天王

「あら。でもどうしてマーナはエドがそのシェルプト辺境伯だと分かったの? あなたもお会いしたのは今日が初めてでしょう?」

「あのお方の絵姿が王都では出回っているんですよ。白金の貴公子として。我がエベルー伯爵の次期ご当主様であるお嬢さまの兄上のアデマールさまや、王太子のジグモンドさま、殿下の乳兄弟のダニエルさまと並ぶイケメン四天王としてそれはもう大人気なんですよ」

「…ここでもか」

「なにかおっしゃいました? お嬢さま?」

「何でもない」



 わたしのボソッとした呟きにマーナが反応する。前世でも彼らはイケメン四天王として人気を誇っていた。それがまた再現されようとしている? イケメンはどこの世界に行っても贔屓されるのか?

 なんだか彼らが神さまから特別扱いされているように思われて面白くないわ。と、呟くとマーナが意味ありげな視線を向けてきた。



「それにしても辺境伯さまはお嬢さまとは親しいご様子でしたわね? かなり打ち解けていらっしゃったんじゃないですか?」

「そんなことはないわ。たまたま話が合っただけで」

「そうですか? あのお方はお嬢さまがさよならを告げられてからいつまでも見送っていらっしゃいましたよ」

「ふ~ん。きっとわたくしが知り合いの誰かに似ていたんじゃないかしら?」

「お嬢さま。そう捻くれて受け取らないで下さいまし。殿下から疎遠にされているからって。男なんて星の数ほどいるんですよ。見る目のない王太子殿下なんか見限って次にいきましょう。次へ」



  わたしから気のいい言葉を引き出せなかったのでマーナは追及を諦めた模様だ。気の良い彼女だ。わたしが嫌がる会話を続投するほど空気が読めない相手ではない。


 父やマーナを始め、我が家の使用人たちはわたしの髪や瞳の色が変わっても態度を変えることはなかった。お嬢さまのその髪は夜の帳のように綺麗ですよ。その瞳は星の輝きを宿してるようでいっそう綺麗におなりです。と、持ち上げてわたしに勇気をくれた。もともと前世では日本人だったわたしだ。黒髪、黒い瞳には抵抗はない。ただ貴族達の反応が違うということに虚しくなることはあったけど。



「マーナは前向きね」

「ありがとうございます。辺境伯さまはまたね。と、おっしゃられておられましたね?」

「そうだったかしら?」

「そうですよ。お名残惜しそうにお嬢さまを見てました。あの目は真剣でした」



 おや。まだ終わってなかったのか?と、思う。今回のマーナはちょっとしつこかった。そんなにエドが気に入ったのかな? わたし達は彼女が期待する仲にはなり得ないってのに。復讐のために手を結んだ相手だからね。



「屑殿下よりもあの辺境伯さまの方がはるかにお嬢さまとお似合いです。私応援しますわ」

「ありがとう。マーナ。でも残念だけどその可能性は低いわね」



  マーナもとうとう殿下を屑呼ばわりするようになっていたらしい。エベルー伯爵家ではわたしの髪や瞳の色が変わったことで露骨に態度を変えた殿下の所業が信じられないと使用人の皆が憤慨して影で屑呼ばわりしていた。

 わたしの答えに納得がいかないとマーナが聞いてくる。



「どうしてですか? お嬢さまは辺境伯さまのことお嫌いですか?」

「嫌いとか好きとかわたくし達には関係ないし」

「噴水前で辺境伯さまに求婚されていたのではないですか?」

「求婚?」

「違うのですか? あそこの公園で若い男女が噴水前で求婚するのが流行りなんですよ。てっきりそうかと思ってました」



 マーナは勘違いしてたらしい。わたしは出かける際に殿下に呼び出されたと伝えたはずなんだけどね。それを綺麗さっぱり忘れ去ってくれていたらしい。我が家の優秀な侍女どのは。


「おふたりともお似合いでしたのに…」


 非常に残念そうに深々とため息をつかれたけどこればかりはどうしようもない。わたし達は復讐のために手を結んだに過ぎないからね。


「まあ、いいですわ。こういうことは追々…分かりました。お嬢さまは急なことでお気持ちに余裕がないのですね」


 したり顔のマーナを前に何も言えなかった。無粋な言葉が聞こえたような気がしないでもないけど、わたしにとってそんなことはさほど重要なことではない。それよりもわたしには気になっていたことがあったのだ。エドのことだ。今日、彼と転生して初めて再会したが、彼はどうしてわたしにリベンジを持ちかけてきたのだろう? どう考えても納得がいかなかった。


  彼はわたしに借りがあるような発言をしていたけど、前世彼とはあの日のほかに接触したような記憶はないしあの日、彼に何か貸したような覚えもない。どういうことなんだろう? 今度会ったら聞いてみよう。と、この時のわたしは暢気にも思っていた。



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