表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/57

6話・頼もしきリベンジの協力者

  復讐という言葉はどこかおどろおどろしい。口に出すのさえ(はばか)れるような気がするのにそれがカタカナになったことで思ったよりも軽く言葉が飛び出した。言ったわたしも驚いたが口にしてみて始めて意味を為したような気がしてきた。復讐とは心のなかで思うだけでは駄目なのだと改めて思った。



「だから手伝ってくれる? エドバルト君?」

「二人でいる時は俺のことはエドでいい。おまえのことは何と呼んだらいい?」

「わたしのことはアリーと。これから宜しくね。エド」

「じゃあ、決まりだな。アリー。宜しく」



  わたしが手を差し出すと、それをエドは両手で握り締めてきた。前世では一匹狼だった彼のこうした歩み寄りを見て驚くと同時に気を許してもらえたようでくすぐったいような思いに駆られる。わたしのやや戸惑ったような様子に誤解してか、ああ。悪い。悪い。と、彼は手を慌てて離した。


 前世では知り合いでも転生してからは初対面なのだ。と、思い当たったようで自分の態度が非常に馴れ馴れしかったかも?と、思ったようだ。わたしは全然構わなかったのに。と、ほんの少しだけ離れた彼の手が恨めしく思った。


  黄昏色を背後にわたし達は手を結んだ。彼に利があるかどうかは分からないけど、彼はわたしを手伝うと誓ってくれた。それが心強く頼もしくもあって彼を見返せば、彼もまたわたしを見ていた。


「お嬢さまっ」


 そこへ切り込みを入れるように馴染みの声が割って入って来たことでわたしたちの目は離れた。声の持ち主を揃って見る。



「マーナ」

「お嬢さま。お迎えに上がりました」



 エベルー伯爵家に仕える侍女のマーナが中年御者のハバンを連れて立っていた。マーナはわたしより三つほど年上の侍女で、中年のハバンは彼女の父親だ。ふたりとも公園に入ったきり戻ってこないわたしを心配して迎えに来てくれたようだ。



「アリーズお嬢さま。こちらのお方は?」

「彼は…」



 ハバンはわたしの隣に立つエドに警戒の目を向ける。年頃の娘を持つ父親だけに気になるらしい。その彼はじっと切れ長の目をエドに向けて彼の着ているジャケットやクラバットを留める為に付けられたピンの紋章で気が付いたようだ。この国では大抵の貴族が自分の家の紋章を持ち物に付けるのが流行っていた。

彼をどう紹介したものか? と、悩んでるとハバンはとっくに察したようである。



「シェルプト辺境伯さまでしたか? これは失礼致しました」

「当家のお嬢さまがお世話になりました」



  と、すぐに頭を下げそれと同時にマーナも頭を下げている。さすがは出来た使用人達だ。この国全ての各貴族の紋章が頭のなかに入っているのに違いない。わたしは感心した。だって辺境伯は全然社交界に顔を出さないから知らない人もざらにいる。それがハバンたちには一目で分かったのだから。



「お迎えが来たようだし気をつけてお帰り。アリー」

「お気遣いありがとう。エド。あなたに会えて良かったわ」

「僕も君に会えて良かったと思っているよ。またね、アリー」

「さよなら。エド」



  エドはマーナ達がいるせいか、それまでの口調とは一転させた。いかにも貴族のような物言いに彼の前世を知るわたしは彼の微笑を頬に受けてそそくさとその場を後にすることにした。あのままいたら吹き出しそうだったのだ。馬車の中ではあ。と、深呼吸をして息を整えていると興奮ぎみのマーナから詮索されることになった。



「お嬢さま。いったい、いつの間にあの白金の貴公子シェルプト辺境伯さまとお知り合いに?」

「白金の貴公子? エドのこと? さっきお会いしたばかりよ」

「えっ? 初対面にしてもう愛称呼びですか? 進展早いですね。白金の貴公子さまは意外と押し押しなんですね」

「別に気があっただけよ」



 まさか前世で知り合いでしたなんて言える訳がない。そんなことを言ったらわたしの頭がおかしいのではないかと思われてしまう。こちらの世界では転生なんてものはない。人間は死んだら天に行き永遠の楽園で暮らすと信じられているのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ここまで読んでどうしても気になったのでコメントをば・・・・ どうして姿かたちが違うはずの転生先で相手が誰が誰の転生者だとわかったのかが謎? そこの描写をしっかりすると、もっと面白いか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ