表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/57

5話・リベンジしたい

「へぇ。けっこうやるな。おまえ。転生してなかなか図太くなった。有村アリス」

「なぜその名を? あなた…まさか江戸(えど)大翔(はると)くん?」

「俺が分かるのか?」

「分かるよ。でもなぜわたしの前に現れたの?」



  わたしの目の前にいたのは息を飲むほど美しい青年だった。細身でありながら背が高く人懐こそうな蜂蜜色をした瞳がこちらを見ている。エメラルドの宝石のついた刺繍入りの臙脂色のジャケットに胴着を着て半ズボンに長めのソックスを合わせ、足元には磨き上げた革靴を履いていた。白金のようにも見える艶やかな銀髪を後ろで一つに束ねた彼はどこからどうみても前世の大翔君の面影などないというのに、悲しいことにわたしは一目見て彼が江戸大翔君だと悟ってしまった。


  前世の記憶を取り戻してから名高君たちの現在の姿が分かってしまったように彼のこともすぐに分かってしまった。これであの時の四人が揃ってしまうことになる。ああ。詰んだ。詰んでしまった。

 彼はわたしへと近付いてくる。わたしは衝撃のあまり動けなかった。



「さあな。俺にも良く分からない。気が付いたら前世の記憶が蘇っていた。おまえもきっとそうなんだろう?」

「そうよ。わたしにとっては思い出したくもない前世だったけど全て思い出したわ」

「そうか。じゃあ、あいつらをどうする?」

「どうするって?」

「おまえ、あいつから婚約破棄されたんだろう? いいのか? 許せるのか?」



  大翔君の言葉は前世の記憶を取り戻したわたしにこのままでいいのか? と、問いかけてきたような気がした。



「もちろんそのままにはしたくないわ。殿下には掌返したような反応されて正直傷ついたし、このまま大人しく婚約破棄されてやるのも悔しいわ。今までも散々、殿下には馬鹿にされてきたし正式に婚約破棄されたならわたしは社交界で笑い者になってしまう。婚約破棄された令嬢は立場ないもの。なにか性格やどこかに問題ありの人物と見なされて独身男性からは求婚されなくなるし、いいとこどこかのエロ爺の後妻か、修道院で生涯を終えるのが常だわね」


「じゃあ、リベンジするか?」

「リベンジ?」


「そうさ。リベンジ。見返してやるんだ。やつらを」

「やつらって殿下たちのこと?」

「ほかに誰がいるんだ? 考えてみろ。前世でも現世でもおまえにとって障害となっていたのはやつらだろう?」

「そうだけど…」

「手を貸してやろうか? おまえがリベンジを考えてるのなら手伝ってやらなくもない」



 大翔君はわたしに復讐を勧めて来た。確かにわたしを前世で「デブス」「力士」と、馬鹿にしてクラスの皆に虐めを煽って来たのは彼らだ。あの日も彼らの悪戯にわたしはショックを受けて命を落とした。


  わたしが甘かったのもあるが彼らに一方的に虐められて何も言い返すことなどなく、まして何もやり返せてなかった前世の自分にわたしは腹立ちのようなものがあった。機会があったらやり返したい。と、思ったこともしばしばある。


 だけど前王弟殿下の娘で公爵令嬢だった母を持ち、王太子殿下の許婚という立場にあることもあってままならない事情もあった。この世界の特に特権階級社会では縦社会の影響は大きく、女性は自分の感情を露にするのは美徳とされなかった。特権階級の女性は子供のうちは親に従い、結婚した後は夫を立てるのが賢婦とされた。


 前世を知るわたしにとっては時代錯誤な考え方だったけれども。


「なあ。どうする?」


 すぐに答えなかったわたしを大翔君は悩んでいるものと受け取ったようだ。わたしは苦笑した。



「どうしてわたしに肩入れするようなことを大翔君は言うの?」

「どうしてって? そりゃあ、おまえには借りのようなものがあるからな。それを返したいというか…」



 なんだか歯切れが悪いな? と、思ってると、彼があ。そうそうと、何かに気が付いたように言ってきた。



「それに現在の俺の名前、エドバルトだから。シェルプト辺境伯の地位を賜っている」

「シェルプト…?」



 ふいに告げられたシェルプト辺境伯という名前。その名前には聞き覚えがあった。わたしには幼い時からの辛い王太子妃教育の賜物でこの国の重要貴族名は大体、頭のなかに入っているのだ。



「もしかしてシェルプト伯爵って滅多に社交界に顔を出さないことで有名な? あのシェルプト辺境伯?」

「まあ。そういうことになるのかな? 俺はあまり大勢の人が集まる場は苦手だからな」



 やっぱり前世の影響は彼にもあるらしい。前世でも彼は一匹狼が気が楽だ。みたいな事を言っていたような気がする。


「それよりおまえはどうするんだ?」


 彼の頬に夕日が差していた。夕映えに彼の様子はそれはとても美しくわたしの目に届いた。それは思わず見惚れてしまうほど。イケメンってお得だよな。夕焼けでさえも彼を彩るツールでしかないなんて。羨ましいぜっと。

 わたしは蜜色の瞳に捕らわれてつい、彼がわたしの答えを待っていることを忘れそうになった。なあ。と、彼の声に促されて唇を動かした。



「…するよ。リベンジしたい」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ