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49話・懐かれました

 そして翌日。目が覚めて背伸びをしたフェリックスは隣に誰かいるのに気がついて目を剥いた。


「な。なんで……?」


 自分の隣で女性が寝ている。しかも裸で。どういうことだ? と、思いながらも大声を出さなかったのは幸いした。今頃大声をあげていたのなら、その声を聞きつけて侍女達が押しかけてきていたことだろう。

 とりあえず落ち着こうとフェリックスは自分の体を確信した。一応、服は着ている。

 でも自分に記憶がないだけで、もしも……と、考えると怖い。とりあえず相手の女性から話を聞こうと、彼女の顔を覗きこんで驚いた。

 この女性には見覚えがあった。昨日、ナックスに言い寄られていた女性だ。


(どうしてここに?)


 フェリックスがひるむと、相手の女性が目を開けた。


「あの。あなたはどうして私のベッドの中に? 私には記憶がないのですが、私から無理やりその……あなたを……?」

「ああ。ごめんなさい。あまりにも居心地が良いものだからゆっくりし過ぎたわ。もう帰るわね」


 そう言って女性はフェリックスの頬にキスをし、ベッドから抜け出した。日の下で見る彼女の裸体は眩しいばかりで、フェリックスは直視できずに顔を背けた。


「あの。帰るってその格好では……その……」

「なに顔を赤らめているの? 可笑しな人ね」


 ふふふ。と、笑いながら彼女は姿を消した。


「えっ? 今のは夢……?」


 まさかあの人が幽霊だったりしないよな? と、考えてゾッとしたフェリックスの足にふさふさしたものが触れた感触があった。それと目があい、フェリックスは白狐を抱き上げた。


「おまえ。どこにいたんだ?」


 白狐はぺろりとフェリックスの頬を舐めた。さきほど女性がキスした辺りだ。


「お腹すいたのか?」

「もう。あなたったら鈍感ね。わたしはおまえではなくてよ」

「えっ?」


 自分が抱く白狐から言われたような気がして、フェリックスは耳を疑った。


「狐が話している……?」

「そんなところも好きだけど。」


 白狐は目を細めて笑ったように見えた。ぺろりとフェリックスの口を舌で舐めると、ぴょんと彼の腕の中を飛び出し振り返った。


「わたしはティア。また来るわ。フェリックス」


 そう言って白狐のティアは、窓の外へと飛び出して行った。



 それからもティアは白狐の姿で毎晩、フェリックスのもとへ通って来た。白狐の姿は実に愛らしくフェリックスは狐姿の彼女は歓迎したが、人の姿に戻られるとどうして良いか分からなかった。

ティアは就寝前まで狐の姿でいるのに寝てしまうと人の姿になってしまう。それもなぜか裸で。

 翌朝になって困惑するフェリックスに「じゃあ、またね」と、言っては白狐の姿に戻って帰って行くものだから、彼は気になって仕方なかった。


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