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36話・リベンジから二年後のいま

思うところがあって一部改稿させていただきました。

 その後ジグモンド殿下は陛下が仰ったとおり王太子を廃され王籍からも外れて一臣下に下った。公爵となった彼は開墾事業を手がける部署に送られて地方へ送られる事になった。開墾事業はこの国では地味な部署だ。王宮育ちの彼に耐えられるか疑問だが功績が認められなければ一生その地から戻って来れなさそうだ。

国家反逆罪に問われた宰相は罪人としてお家断絶、財産没収の上、将軍共々国外追放となった。後に残された家族は離散し行方が知れない。

同罪の将軍は牢屋に投獄中に奥方から離縁された。将軍は婿入りしていたので今回の騒動で奥方に三行半を突きつけられたのだ。ヴィルジニアには二人の姉がいて嫁いでいたが長女は婚家から離縁された時に夫の前で首を切って自死し、次女の婚家の方は夫の方が離縁を拒んだものの人前に妻を出さないという両親や親族との約束で、妻を田舎の古城に一生監禁することになった。

ペーテル家もお取り潰しが決まり奥方と娘のヴィルジニアは修道院に送られることになった。その途中ヴィルジニアは流行り病で病死し奥方だけが修道院に送られた。奥方は夫と娘たちの為、お祈りを捧げる日々だという。

その裏でエベルー伯爵家の遠縁にあたる子爵家にリブラという名の茶髪に黄緑色の瞳をした美少女が養女として迎えられ後にダニエルと婚約する運びとなった。


そのダニエルは、ジグモンド付きの騎士で彼の側にいながら主人の行動を諌めることなく、婚約破棄騒動に加担したとみなされて王族付きの騎士という名誉ある職から一介の騎士に降格した。

そしてわたしの兄のアデマールも同じく行動を煽ったと言うことと、後に発覚した王家からわたしへ支払われていた婚約支度金の一部に手をつけてフロアに横流しをしていた事で、廃嫡されエベルー伯爵家から追放された。


父にしてみれば断腸の思いだったと思う。兄は優秀ではなく常にふらふらしていて女性に甘かったが、それでも女に唆されて横領までするなんて。と、深く嘆いていた。 父にはわたしの事や兄のことで心配ばかりかけて申し訳なく思う。


 以前ジグモンドはわたしを貶める為に断罪などという言葉をしきりに使ったがもともとこの国ブロワには死刑という刑は公には存在しない。この国の守り神である白狐神キュンティアさまが人間が同族を処刑にて殺す行為を禁じているからだ。


だからといって咎人をこの国は放置しておくほど甘くもなくキュンティアさまがその代わりに王に持ちかけたといわれるやり方で刑が執行されていた。それが国民には秘匿されているだけなのだ。

元将軍の方は役職を罷免され王宮を終われて海向こうの大陸に渡りそこでフロアの養父である商人の護衛兵として雇われているようだ。未婚のままお腹を大きくして出戻って来たフロアがそのままでいるのは外聞が悪いとすぐに挙式をさせられてフロアの夫に納まったが、養父の家にフロアと転がり込んだようなものなので厄介者扱いされて肩身の狭い思いをしながら生活をしてるようだとヴィルジニアではなくなったリブラが苦笑しつつ教えてくれた。

国家反逆罪を企んだ宰相と将軍に対して国外追放という処分は甘いように思われるが、その言葉通りではないことをわたしは知っている。みなに明らかにされてないだけで二人にはそれなりの刑が執行されているはずだ。

ブロワ国では罪人は禁足地に送られる。そこに送られ人間がどうなるのか誰も知らない。わたしが知っていることといえばそこに送られた罪人は二度と帰って来れない。と、いうことだけだ。

 フロアの残して行った嵐の爪あとは大きかった。





「今夜も風が強くなりそうね。こんな頃だったかしら? コンがうちに来たのは?」

「そうですね。あれから二年になります。コンは元気でしょうかねぇ?」


 ガタガタと窓枠が鳴るのを耳にしながらわたしは真っ暗な窓の外に目を留めた。胸の内に郷愁のような思いが押し寄せてくる。

 フロアを断罪してからあっという間に二年が過ぎた。あの後わたしは王家で主催した舞踏会で公爵となったジグモンドから正式な謝罪を受け名誉は回復された。また以前のように薔薇姫と称されるようになると、目ざとい沢山の取り巻きが出来て現在は辟易している。

 ジグモンドとの婚約破棄が公となったことで婚約の打診をしてくる貴族の子息たちの申し込みが殺到したのだ。結婚に気乗りでないわたしは断ってくれるように父に頼んでいた。

 父はわたしが殿下の一件で婚約に懲りてると受け取ったようで早婚が当たり前の貴族社会で結婚適齢期を過ぎつつあるわたしを急かすことなく見守っていてくれる。兄も無理してお嫁にいくことはないさ。家にずっとこのままいれば良いよ。なんて調子の良い事を言っていたけど、その兄が廃嫡されて家を追われたのは皮肉な話だ。

 王宮ではジグモンド殿下が臣下に下ったことで次期王は誰に? と、噂が耐えないようだ。陛下が次の王太子を指名して明らかにしないせいもある。こんなことは王家至上始めての出来事らしく周囲もそわそわしている。王太子殿下がそれまで行ってきた国内や海外での視察や表敬訪問などは辺境伯であるエドが代行してると、聞く。本人に会う事もなくなってしまったわたしには本当かどうかは分からないままだけど。

 次の王太子の有力候補は前宰相が王宮を去った後に宰相となった王弟のランマエデル公爵の優秀だと噂される子息か、陛下の末妹姫の降嫁したラーニャ伯爵の利発な第二子ではないかとか、陛下の従弟にあたるグランマイル侯爵家の博識で知られる跡継ぎさまの内のどなたかが選ばれるのではないかと人々の憶測を招き落ち着かないでいる。

 将軍の方は副将軍が昇格して将軍に納まり、その書記官としてリブラ(ヴィルジニア)の夫となったダニエルが推挙された。きっとこの後、彼はさらに扱かれてゆくゆくは将軍の地位に付くことになるのかもしれない。それははるか遠く険しい道のりだけど彼には勝利の女神リブラ(ヴィルジニア)がついてるから大丈夫だとわたしは思っている。残る懸念材料は王太子の一件が落ち着く事だけだけど。どうなることやら。

 わたしはジグモンドとの婚約破棄が決まってからも王妃さまや陛下さまとのお付き合いは変わらなかった。時々お招きを受けてお茶会をご一緒させて頂くこともあった。


「さあ。アリーズさま。もうお休みなさいませ。そんなに根をつめると寝れなくなりますよ」

「そうね。今日はこれでお終いにするわ」


 わたしはレース編みの手を止めた。わたしが編んでるのは小さな靴下。リブラのお腹の赤ちゃんの為のものだ。彼女は現在三ヶ月。父親が国から追われた後、彼女はダニエルと婚姻し一緒に王都の小さな館で暮らし始めた。わたしのもとを訪れる彼女は幸せいっぱいの顔つきで実に羨ましくなる。

 わたしのリベンジ劇場が終了した後、脚本を書いたエドはわたしの元から去って行った。じゃあな。幸せになれよ。と、いう言葉と共に。

 エドと思いが通じこれからもずっと彼と共にいられると思っていただけに彼に告げられた別れの言葉はわたしの胸を深く抉った。ジグモンドの裏切りなんか目でないほどにわたしは強い衝撃を受けその場に立っていられるのがやっとな思いでその理由を訊ねたが返って来た答えは到底、わたしの心を満足させられるものではなかった。


「そろそろ領地に戻らないといけない。俺はここに留まっていい人間じゃないんだ」

「じゃあ、わたしもエドと一緒に行く」

「だめだ。おまえは連れて行けない」

「なぜ?」

「おまえには大切な家族がいるだろう?」

「離れていても連絡ぐらいとれるわ。あなたはわたしのことを好きじゃないの? 嫌いになった?」


 エドは泣きそうな顔をした後、それを振り切るように手を伸ばし強くわたしを抱きしめてきた。エドの胸板に頬を預ける形となったわたしはエドが何か隠し事をしてるように思えてならなかった。


「おまえのこと嫌いになんかなれない。ごめん。でもおまえを連れてゆく事は出来ないんだ」

「エド」

「どうか俺のことなど忘れて幸せになってくれ」


 彼はそれだけ言うとわたしを腕の中から押し戻し泣き笑いの表情で踵を返すと立ち去った。わたしは呆然とエドの背中を見送り続けることしか出来なかった。その時に改めてわたしは彼についてあまりよく知らない事に気が付いた。一応、この国での彼の肩書きは知っている。シェルプト辺境伯で王の息子で魔法使いで。養父はマロー侯爵。でも彼のプライベートなことは何一つ知らない気がする。彼はわたしの家を良く訪ねて来たがその逆はなかった。

 そのことを自覚したことでわたしは彼に抱いていた思いを打ち消すことに必死になった。エドのことをすっかり忘れるには至らずに二年経った今でもこんな風の強い日には彼が狐になって訪れた夜を思い出し心が軋む。

 そろそろとベッドのなかに潜り込んだわたしは今もなお、心の隅に追いやられながらもしがみ付いている相手の顔を思い出しながら目蓋を下ろした。


将軍や宰相の処分について色々意見を上げてくださった方々ありがとうございました。m(__)m

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