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34話・こりない奴ら

 ヴィルジニアもわたしに同意しながら告げて来る。


「その通りですわ。王太子殿下を始めとしてそれをいさめる立場にある宰相や将軍が一人の女を使って王家を思い通りにしようだなんて思い上がりも甚だしい。これで母上もきっとご決断されることでしょう。歴代王家に忠節をもって仕えてきた将軍家に相応しくその罪をあなたの命であがなってもらいましょうか?」

「よ。止せ…ヴィルジニア」


 ヴィルジニアは将軍との断絶を口にし腰の剣に手を掛けていた。将軍は娘の本気に当てられて震えていた。彼女はやると言ったらやるだろう。わたしは放って置く事にした。


「王家を欺いた罪深きそこの娘も引き立てよ」


 衛兵は陛下に命じられてフロアも縛り上げた。その彼女へエドがつかつかと歩み寄る。


「きみには窃盗罪もあるね。アリーズから奪ったものを返してもらおうか」


 エドが親指と人差し指をぱちりと鳴らした途端、わたしは身のうちから何かがあふれ出してくるのを感じた。皆が目を見開いていた。


「アリーズ…?」

「おお。アリーズ」

「アリーズが!」

「アリーズが元の姿に…!」

「神さま。感謝致します。アリーズ。良かった」


 驚愕するジグモンドに歓喜する父や兄。陛下や王妃さまの顔にも喜びが溢れていた。目の前のエドは優しく微笑む。


「アリーズ。きみはこの国になくてはならない女性だ。幸せにおなり」

「エド…?」

「見てご覧。悪い魔女から取り返したよ。きみの色を」


 エドの物言いに不審を覚えたわたしの気を逸らすように彼が指した先には、衛兵に縛られているフロアがいて不思議なことに彼女の髪や瞳の色が変わっていた。彼女の髪の毛と瞳は黒い色へと変化していたのだ。そのせいか彼女の甘い顔立ちがきつい面差しへと別人のように変って見えた。彼女の見目の変化に周囲の者も驚き、一気に夢から覚めたような顔をしていた。


「アリーズさま。元に戻られましたのね? 薔薇の妖精がここに帰ってきましたわ」


 ヴィルジニアが良かったぁ。と、わたしに抱き付いてすすり泣く。事情が分からないわたしにエドが手鏡を渡して来た。そこには社交界デビューした当時の姿のわたしがいた。あの時よりはちょっとだけ大人びた顔した亜麻色の髪に苺色した瞳のわたしが映っていた。


「この女は四年前、エベルー伯爵令嬢のアリーズ嬢から髪の色と瞳の色を魔法具に呪いをかけ盗んだのです。これが証拠の反射鏡です。これを用いて自分の髪と瞳の色をアリーズ嬢と入れ替えてました」


 エドは証拠の品を陛下に差し出す。あれがもしかしたら彼が狐になっていた時の首輪に付けられていたものかと思う。

 フロアがコンを自分のキューンだと言い張った時に、首輪に反射鏡をつけていたとわたしの前で言っていた。それをエドは証拠として手元に持っていたらしい。さすが抜け目のないエドである。


「人の姿を奪うなど魔術規定にも反する行いです。彼女はそれだけでなく一人の女性が正当に得られるはずだった幸せも奪いました。アリーズ嬢はその間、不当な扱いを許婚の王太子殿下始め、殿下の取り巻きの人々から受けてきました。それはどんなに深く彼女の心を傷つけて来たことでしょう。

どうか陛下。そのこともふまえてご処分頂けますようにお願い申し上げます」

「うむ。当然だ。アリーズ嬢は余にとっても王妃にとっても我が娘同様に思っていた存在だ。その娘から不当に奪ったのだからそれなりの罰に服してもらおう。そこの国家反逆罪の男らと共にな」

牢屋に連れて行け。と、冷たく陛下は兵に命じて宰相らをこの場から退出させた。宰相たちは抵抗する気も失せた様で大人しく従って行った。


「アリーズ。許してくれ。この通りだ。私が悪かった」


 ヴィルジニアに抱きつかれているわたしにジグモンド殿下が言い寄って来る。


「どうかしてたんだ。あんな女に夢中になるだなんて。変な呪いにかけられていたとしか思えない。私の愛する人は君以外にいない」

「アリーズ。良かった。僕の自慢の妹が返って来た。アリーズ。僕の天使」


 そこに殿下を押しのけるようにして兄のアデマールまでもが加わりヴィルジニアとわたしの間に割り込もうとしていたが、わたしはうっとおしく思われて彼らを蹴り落とした。その勢いでジグモンドとふたり床の上に転がり落ちた。



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