19話・夢のなか
今回は短めです。ごめんなさい。
わたしは夢の中にいた。
「あまりにも警戒なさすぎだぞ。アリー」
「ん……? んん……?」
聞き覚えのある声が耳元でした気がしたけど気のせいらしい。まどろみの中に落ちていたわたしは薄く目を開けてそう思った。やはり誰もいない。ベッドの中にはわたし一人だけ。そう思って寝返りをうった時、心臓が止まるほどに驚いた。
「だ。だれ?」
わたしのベッドの中に誰かが入り込んでいたのだ。その相手と向かい合うような体勢になって目を瞬くわたしの唇を塞ぐように押し当てられたのは相手の唇。強く抱きしめられて相手が何も着てないことに気が付いたわたしは、相手から逃れようとした。
「や……! 変質者っ。痴漢」
「落ち着けって。アリー。俺だ。俺。俺」
「オレオレ詐欺なんて。なにかの間違いです。そんな知り合いわたしにいないから離れて……」
「懐かしいな。オレオレ詐欺だなんて。そんな言葉を知ってるのはこの世界広しと言えど、俺とおまえのふたりだけだろうな」
「ふぇ?」
嬉しそうに相手が頬ずりして来た。わたしは戸惑う。会いたくて仕方なかった相手がいるのは嬉しいけど。なぜに深夜? そして……。
「エド? なぜここに? なぜ裸でいるの? きゃっ」
エドはわたしの反応を見てくすりと笑った。自分で問いかけておきながら物凄く恥かしい。
「これは夢よ。夢。夢。夢に違いないわ。わたしがエドに会えなくて寂しいからって裸の彼を夢に見るだなんて……。わたしなんてこと……」
「そんなに自分を責めるなよ。俺にとっては都合のよい夢だけどな。だからこんなことも出来る」
「え? エド……? あん。くすぐったい」
エドは慌てふためくわたしにキスの雨を降らせ寝巻きを肌蹴させて肩を露にする。そこに彼は顔を伏せた。
「エドっ」
非難の声を上げた時には肩や鎖骨に彼の唇が触れていた。ちゅうっと吸い上げられて前世でも異性との経験がないわたしはびっくりした。
「やあん。エドなにしたの?」
「おまえが俺のものだって印をつけた。嫌だったか?」
「嫌じゃないけど……」
エドは満足したように言う。わたしは彼の唇の痕跡が残ってる部分に手を当てながら非難した。でも嫌ではなかった。気持ちよかった。そう思うと自分が未婚の身で淫らな領域に足を踏み入れたようで怖い思いがした。
前世でも彼氏が出来なかったわたしだ。当然、こういうカップル間の交渉事も知らない。経験もなく踏み入れ早くも自分がのめり込みそうな予感があってそれを回避する為に踏みとどまろうとした。
「これ以上はしない。寝るぞ」
「……うん」
「おやすみ。アリー」
エドが頬にキスをしてくれたのでお返しにキスしたら止められなくなるだろう。と、切なそうな言葉が返って来た。彼の腕のなかは温かくてわたしは素肌の彼に寝巻きくらい用意してあげたほうがいいかな。と、思いつつも目蓋が下がってくるのに抗えずに寝てしまった。