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16話・靴を脱がさないで

  それから三日もしないうちにエドがいつものように訪ねて来た。ここの所彼はちょくちょくわたしの元へ顔を出していたので、我が家の気の利いた使用人たちの間では顔パスだ。他の貴族の子息を通す時のような取り次ぎは省き直接、わたしの元へと彼を案内して来る。

 わたしはまだ王太子殿下の許婚とされていた。王太子殿下が離宮に謹慎となり婚約破棄の件は陛下のもとで保留とされているのだ。


  そのわたしのもとへ、若い貴族の男性を通し二人きりにするだなんて絶対に避けなければならない行為だろうに我が家の使用人たちは屑殿下より、辺境伯のことを高く買っていた。

 それに父もエドのことは陛下から色々聞かされていたらしくその彼がわたしと親しくしていると聞いて気分を害することもなく逆に親馬鹿丸出しで


「娘が殿下に暴言を吐かれて気落ちしてるだろうからぜひ娘の話相手として時々は我が家を訪れてくれないか?」


  と、頼み込んでいたようである。そのせいもあって彼は誰に見咎められることもなく我が家に出入り出来た。

 今日はハーブ園でパラソルの下、優雅にティータイムを楽しんでいたわたしは彼の登場にははん。こういうことか?と、思った。今朝マーナが本日はお天気も良いのでたまには外でお茶でも如何ですか? と、言ってハーブ園に丸テーブルを用意してくれてなぜか椅子を二つ用意してたのでおかしいと思ってたのだ。


  マーナは何食わぬ顔をして焼き菓子と紅茶の用意をしてわたしたちを残してその場を去った。その時にわたしへ目配せして行くのも忘れなかった。



「おい。どうした?」

「あ。うん」



  エドと他愛無い話をしていたわたしはいまいち盛り上がりにかけていたらしい。笑いかけたエドが不審そうな顔をしてわたしを見ていた。わたしはこの間見かけた彼と王女のことが気になっていたのだ。それをここで口にしていいものかちょっと悩む。



「なんだ? 言いたい事があるなら言えよ。黙ってたら気になるだろう? 話も上の空だし」

「そ。そうかな?」

「おまえは心に思ったことが顔に現れやすいんだ。隠し事は止めたほうが良い」



  他人の目がない場所では彼は前世同様に雑な口調になる。それはわたしに心を開いてる証拠だと思いたいがさあ。白状しろ。と、エドに言われても自分でもどう言ったものか困る。だってわたしが気になってるのはエドが王女さまと会ってたってことでそれを口にするということは、まるでわたしがエドのことを気にしていますって言ってるようなものだし…? えっ。それって…?



「本当にどうした? 熱でもあるのか? 顔が真っ赤だぞ」

「えっ。え。なんでもない。あ……、熱いわね」



 エドが異性であることを意識した途端、わたしは顔に熱が集中してくるのを感じた。それを誤魔化すように顔に昇った熱を冷まそうとぱたぱたと扇子を仰ぐと、その手が捕まれる。



「エド……?」

「何でもないはずあるか? そんな顔して。風邪でもひいたんじゃないか? 耳まで真っ赤だぞ。我慢するなよ」

「我慢なんてしてない」

「いいから。こういう時は素直に甘えておくもんだ」

「え。えっ。 えええ?」



 彼は身を屈め椅子に腰掛けていたわたしの背と腰のしたに腕を差し入れて抱えあげた。



「わ。わっ。わああ……いきなり何?」

「落ちるぞ。俺の首にしっかり腕を回しとけ。部屋まで運んでやる」



 エドに身体を持ち上げられて驚く。これってまさかのお姫さま抱っこというやつ? 前世のわたしが望んでもお目にかかれなかったやつだ。こんなこと生まれて初めてしてもらったわたしは心臓がばくばく言い出した。こんな不意打ちってないよ。あの殿下さえ、わたしにしなかった行為なのに。


  わたしの顔のすぐ横にエドの整った顔がある。キス出来るような距離。わたしは彼の頬に自分の興奮した鼻息がかかるのも申し訳ないような気がして顔を背けた。これは何の罰? 羞恥心半端ないだけど。

  さっき食べていたクッキーのかすが口元にのこってたりしないかしら? 口臭が気になる。どうしよう~。


 内心わたしが悶えてるうちにエドは易々とわたしを部屋まで運んでくれた。案外、力もちなんだなぁ。エドって。彼に抱え上げられてこうしてると頼りたくなってくる。


 ぽやややあ~ん。と脳内が浮かれていたわたしは現実に意識を取り戻して慌てた。エドはわたしをソファーに下ろして身を屈めている。彼の手にあるのはわたしの足先。彼はわたしの靴に手をかけて脱がせようとしていた。



「やだ。エド。何してるの?」

「なにってこれから靴を脱がせるんだが? 靴を履いたままでは寝れないだろうが? 寝室は隣の部屋か?」



 わたしの戸惑いにエドはそれが何か? と、いう態度で接してくる。それが何かじゃなくて。エドは女性の靴を脱がせる意味を知ってるよね?


エドがわたしを下ろしたのはベットではなくソファーに変更させてもらいました。

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