第1話 元凶はこの人
私は「硬い岩」の皇子16歳、「四つの州の国」を治める「日の御子」である父上の側室が生んだ第七皇子だ。母上は父上の従姉妹でもと皇女、同母の兄上は皇太子である第四皇子だ。
父上の正室はご自身の姉君。第一から第三皇子をお生みになったが第一皇子は西州に婿入りされ、他の皇子は若くして亡くなられている。
他の兄弟姉妹は数えたことはないが、貴族の子女から迎えられた側室たちが生んだ子たちが確か第十一皇子と第四皇女当たりまでいたはずだ。父上もよいお年だし、これ以上増えることもないだろう。
私は成人(15歳)してすぐ正室を迎えた。北州の姫で巫女をしていた「木洩れ日」という名の女性だ。いくつか年上ではあるが大変可愛らしい人だ。性格は従順で、私を「岩の皇子様」と呼ぶ。長年兄上から石っころと呼ばれてきた私には嬉しい呼び方だ。
「岩の皇子様、お客様がお着きですって」
木洩れ日が我が子を抱いて立ち上がる。今日は私たちの第一子のささやかなお披露目だ。世嗣ぎではないものの、父上にとっては婿に出した第一皇子の子を除けば初めての孫だ。
「第一皇子誕生、おめでとう」
父上、母上、兄上もお揃いで到着された。兄上の正室はご気分が優れないらしく欠席だ。祝いの品を受け取り、礼を述べる。
「利発そうなお子ですこと」
母上が顔を綻ばせる。
「こりゃあ、石っころそっくりだな。気の毒に」
「兄上、私もそう思ってはいましたが、そこまでハッキリと仰らなくても」
この皇太子たる兄上が私の苦悩の元凶だ。
私との縁談の返事を聞きに行った兄上に同行した女官たちによれば、兄上と木洩れ日は相思相愛ながらも国のために別れたという。
「悲恋物語の主人公のようでございましたわ」
「わたくし、今思い出しても涙が、、、」
などと言っていた。あの二人の女官、壁に向かって立ち、目を閉じ、耳を塞いでいたのではなかったのか?