プレイ3日目
私の朝は早い、毎朝6時前に必ず目が覚める。会社を辞めても長年染み付いた習慣は抜けないようだ。そして夜は0時までは起きていられる。若い頃から趣味がネットゲームしかなかった為、仕事の日でも0時までは毎日プレイしていた。
勿論、課金等せずに給料はしっかりと家庭に入れていたが家族の時間は殆ど無かったように思える。後悔していないかと聞かれれば、家族には寂しい思いをさせたかも知れないとは思うが私個人は非常に充実した毎日を送っていた。
そして私は幻想世界Onlineの為に会社を辞め、今日も朝から晩までプレイしている訳である。
「さて、今日は何をしようかな。矢は昨日作ったし、まずは資金稼ぎと冒険者ランクを上げる所からかなぁ。」
ログインすると真っ直ぐに門の外へと出る。昨日聞いた情報だとグリーン森林の近くにはゴブリンが多く出没するという事なので依頼達成の為にモンスターを狩りながらグリーン森林の近くまで移動する事にした。
「そうだ、掲示板で調べたスキルも狙ってみるか。」
掲示板に上がっている情報の中で私がまず気になったのが<ダッシュ>と<跳躍>だった。ダッシュは短距離を素早く走ればいつの間にか取得するようで比較的簡単に覚えられる上に、スキルとして取得すれば移動速度にプラス補正が入る優れものだ。跳躍も似たようなモノでジャンプしていればいつの間にか取得する事が出来る、スキルLvが上がればより高くジャンプ出来るし、そのうち立体起動的なスキルにならないか期待している。
「おっと、ラットか。これならスキルなしでも倒せそうなんだよな、試してみよう。」
ラットに見つからないように10m程離れた草陰から矢を射る。<鷹の目>と<遠距離攻撃力上昇>の効果だけで弓術スキルを使わなくてもラットの頭を一撃で射抜く事が出来た。
<<ハントのLvが4に上がりました。>>
「お、Lvが上がったか、今日は朝から幸先がいいな。」
ラットは『ラットの尾』という素材をドロップする。これは錬金術の素材の一種でどうやら毒薬の材料になるようだが全てストレージの中に仕舞ってある。どの素材も最低1Gで買い取ってもらえるのだが、いつ必要になるか分からない為殆どのアイテムを売らずに残してある。ハントは非常に貧乏性のようだ。
その後もダッシュしたりジャンプしながらモンスターを倒しながら進む。パッシブスキルである<気配察知>を覚えていることもあり、比較的離れた場所でモンスターを感知出来るので周りから見ると変な行動に見えるかもしれないが、本人は至って真面目にプレイしている。
「ほっと。ふぅ、そろそろゴブリンが出てくるかな?」
離れた場所からラビットを仕留めて息を吐く。弓で確実に頭を射抜くにはそれなりの集中が必要で雑魚相手と言えども精神的な疲労はある。
場所的には森の近くだと思うので一旦この辺りをベースにしてゴブリンを狩っていく事にする。
「お、いたいた。どうやら2体みたいだな、もっと沢山で行動してる場合もあるみたいだし、取り合えずどんな反応をするか試してみるか。」
相手が1体であれば離れた位置から頭を射抜いて終わりなのだが、複数で固まっている場合1体だけ倒しても他のモンスターに気付かれる恐れもあるし、タイミングをしくじれば私の紙防御力じゃ油断出来ないからな。
まずは20m程離れて片方を狙う。
「よし、<鷹の目>からの『ストレートショット』!」
シュ!という音の後、すぐに第二射を構える。スキルを乗せた一撃はゴブリンの頭を貫く。横のゴブリンは驚いてキョロキョロしているがまだこちらの姿を確認出来ていないようだ、念の為<隠密>を使った状態で攻撃したのも良かったのかも知れない。
ゴブリンがオロオロしている間に素早く二射目を放ち仕留める。
「ふぅ、遠距離攻撃に<隠密>は相性がいいな。ゴブリン相手ならなんとかなりそうだ。ただ、3体を越えるとどうなるかなぁ。」
数が増えたり、知能が高いモンスター相手だとどうなるのかまだ分からないが、現状は平気そうだ。
昼食の時間までひたすらゴブリンを狩ることにする。
「ちっ、気が付かれたか!」
途中で4体程の集団を見つけて、迷ったのだが挑戦する事にした。1体目は何の問題もなく一撃で仕留め、2体目もこっちの場所に気付かれる前に倒す事が出来た。しかし、さすがに2回も攻撃すれば大体の方角は分かったらしく、ゴブリンがこちらに走ってくる。3体目はこちらに走ってくる途中に倒したのだが盾を持った4体目のゴブリンが残ってしまった。
「まだ、距離はある。それなら・・・。」
立ち上がりゴブリンと逆に走りだす。相手よりも足が速いので引き離しながら足を狙って射る。
2発、3発目でやっとゴブリンの足を止める事が出来た。ゴブリンが倒れた所へストレートショットを撃ち込み倒した。
<<ハントのLvが5に上がりました。>>
「Lvアップか、しかし今後の課題が山積みだな・・・。」
倒す事は出来たがハントが気が付いただけでもいつくか課題が見つかった。まずは弓、初心者の弓はどちらかといえばショートボウに近く取り回しは利くが射程がすこし短い。だがロングボウだと射程が長くなっても速射性に問題が出るかも知れない。リアルの弓とは違いある程度素材やプレイヤーの作成の腕次第でその辺りは改善出来るかもしれないが直ぐという訳ではない。これは頭を悩ませる問題になりそうだ。
次が盾を持っていたり、装甲が厚いモンスターの場合。こちらを認識されてしまうと盾で防がれたり、装甲で弾かれたりする可能性がある。その辺りをどうにかする方法を探さねばならないだろう。
「よっし、今日は取り合えず3体組以下のゴブリンだけ狙おう。」
ハントは気を取り直してギルドクエストの為にゴブリンを狩り続ける事にした。
<<条件を満たした為、スキル<ダッシュ>が発現しました。>>
<<条件を満たした為、スキル<跳躍>が発現しました。>>
昼休憩の為、街へ戻る途中にやっとスキルが発現した。Lvが上がりスキルポイントも余っているので早速覚える。
「早速使ってみるか<ダッシュ>。」
ダッシュは思ったよりも違和感無く走る事が出来た。これなら戦闘中でも使えるかもしれない。
いつもの門番さんにギルドカードを提示し、街へ入る。今度あの門番さんに名前を聞いてみようかな。
昼食までにギルドランクを上げられなかったが、取り合えず昼食を食べたらもう1度狩りをして、まだ大丈夫だけど木の枝を採取して矢も補充しないとな。
ブックマークが70件を越えていました。皆様本当にありがとうございます。
今後は主人公にいきなり強いスキルを取らせるか、すこしゆっくり進めて徐々に強くするか迷っています、何かリクエストがあれば感想にお願い致します。
すいません、ちなみに作者は基本的にゲームで弓を使うのですが、リアルに弓に詳しい訳ではないのでおかしい点が多々出てくるとは思いますが、勉強しながら書いていきますのでよろしくお願いします。