プレイ1日目 後半
※5/13 世界地図の概念と時間の概念について加筆修正を加えました。
「お、あった。ここが図書館か。ドアが木製なだけで普通の市営図書館みたいだな・・・。」
なぜ私が図書館に来たかというと、この世界の事を自分の目でしっかりと調べて知りたかったからだ。図書館であれば世界地図もあるだろうし、色々な伝承も分かるだろう、それに木工や錬金術、魔法についての本だってあるはずだ。モンスターの情報も仕入れておかないといきなり外に出て戦うのも怖いしね。
「おはようございます。図書館のご利用は初めてですか?利用料は1回10Gです、図書会員に登録されますと年間100Gでご利用頂けますよ。」
「それでは図書会員に登録をお願いします。」
「はい、それでは身分証のご提示をお願いします。」
ぐ、まさかここでも身分証が必要になるとは。まぁ、考えてみれば当たり前かもしれないが・・・。やはり最初に冒険者ギルドで登録するのが正解だったのか。
「すいません、身分証を持って居ないので10G払います。」
とりあえず10G払って中に入ってみると、入り口に案内板があった。どうやら種類ごとに分かれているみたいだ、まずは世界の歴史から勉強しようかな。
この世界の始まりはこの地に女神アリアが降り立った瞬間に始まったとされているらしい。女神アリアは大地を造り、海を造り、豊かな自然を育んだ。そして多くの魂を導き豊かな大地に生命が誕生する。同時に悪意ある生命であるモンスターも誕生する事になるのだが、女神アリアはモンスターに対抗する為に清い魂へ力を授ける、これがスキルの始まりとされているようだ。スキルを使ってモンスターに打ち勝ち、世界の安定を見届けた女神アリアは天界へ昇ったと記されている。
「なるほど、他にも色々な説があるみたいだけどこれが代表的なものなんだな。色々な伝承もあるみたいだし、結構面白いな。時間があるときに他のも読んで見よう。」
ついでに世界地図を手に取って見る。しかし、白地図のように大陸の形と主な国の名前しか確認する事が出来なかった。
<<幻想クエスト『世界地図の完成』が発生しました!>>
<<詳細はメインメニューに追加されたクエストの項目を確認して下さい。>>
幻想世界Onlineには多くのクエストがあり、発生したクエストが表示されるみたいだ。その中で幻想クエストは一番難易度が高く、報酬がいいレアなクエストらしい。クエストの内容はそのままで各地で地図を集めて世界地図を完成させることが目標らしい。メニューに地図という項目が追加されているが、まだ真っ白なままだ。
丁度司書さんが通り掛かったので地図が売ってないか聞いてみると始まりの街周辺の地図なら街の道具屋に売っているそうなので、後で見に行く事にする。
「え~っと、次はモンスターの情報を集めるか。」
図鑑を探して手に取ってみると、モンスターの絵と簡単な情報が載っている、所々読めない部分や情報が少ないものもあるがとりあえずこの街の周辺は大丈夫だろう。
<<幻想クエスト『モンスター図鑑の完成』が発生しました!>>
「む、またか。とりあえず確認してみよう。」
メニューを確認するとクエストの項目が追加されていた、その下にモンスター図鑑という項目が見えたのだが、まずはクエストの内容から確認してみる。
内容としてはメニューに追加されたモンスター図鑑を完成させる事、完成させるには生きているモンスターと出会い、ステータス鑑定をして倒さないといけないらしい。そうする事によって対象のモンスターの情報が100%コンプリートされるようだ。
「面白そうだな、狩人を自称しているんだしこれは目指す価値のあるクエストだな。問題は数が膨大な事と明らかに時間が掛かる事か。」
私はこのクエストにかなりの興味を引かれていた、冒険をしながら色々な景色を見てはじめてのモンスターを倒すなんて男の浪漫じゃないか。
「あ、どうやら図鑑で読んだモンスターの情報は私のモンスター図鑑にも表示されるようだな、これでどこでも確認出来るな。」
記憶力に自信が無かったのでこの機能は正直助かる。モンスター図鑑は大体大丈夫みたいだし、次はアイテム図鑑の確認をしてみよう。
「あったあった、だけどこれは多分・・・。」
<<幻想クエスト『アイテム図鑑の完成』が発生しました!>>
「やっぱりな。」
予想通りアイテム図鑑を手に取るとクエストが発生した。確認するとモンスター図鑑のクエストとほとんど同じ内容だが、こちらの方が遥かに難易度が高そうだ。内容は草から鉱物まで多種多様でこれを全て自力で集めるのは厳しいだろう。
但し、図鑑自体はかなり有用な物で分布図やアイテムの特徴等がしっかりと書かれている。クエストの達成が難しいとしても、いつでもメニューから確認出来るというのは大きいだろう。
「あとは、なんだっけな。あ!レシピ集があるか探すんだった!」
レシピ集はあったのはあったのだが、殆ど見る事が出来なかった。どうやら自分が持っているスキルLvに応じて表示されるようだ。木工であれば基本的な『木の矢』のレシピや『木の弓』のレシピがいくつか載っているだけだった。
気が付けばリアルでいい時間になっていた。幻想世界Onlineはリアルの4倍速で時間が進むが、プレイヤーは時間の影響を受けない。これはリアルと同じ時間経過になると社会人や同じ時間帯しかログイン出来ないプレイヤーが毎回同じ環境でしかプレイ出来ないのを防ぐ為だ。
プレイヤーは時間の影響を受けないのでゲーム内で睡眠を取る必要はない、それにゲーム内で睡眠を取るような技術はまだ研究段階で幻想世界Onlineには実装されていないのだ。しかし、ゲーム内のNPCはちゃんと夜が来れば眠くなるし、店の営業時間等もちゃんと決まっている。言ってしまえばNPCから見ればプレイヤーは三日三晩働き続ける超人なのだ。
だがしかし、プレイヤーが影響を受けないだけで幻想世界の時間はしっかりと刻まれている。この点は良くも悪くも評価が分かれる部分ではないだろうか。
「よし、今日は冒険者ギルドに登録して寝よう。」
受付のお姉さんに挨拶をして図書館を出る、入った時のお姉さんとは違ったので私がどれだけ長く図書館にいたのか分かる。辺りもすっかり暗くなっていた。
「しかし、ギルドや図書館が年中無休っていうのは助かるよな。」
NPCが経営する宿屋や、道具屋等は営業時間が決まっているのだが冒険者ギルドや図書館は年中無休であり、プレイヤーには非常にプレイしやすい環境が整えられている。今はまだ殆どないがプレイヤーの露店区画も年中無休の為、急な場合にはそちらを利用するのもいいだろう。
すっかり暗くなった街を見ながら冒険者ギルドへと辿り着いた。冒険者ギルドにはプレイヤーと見られる人が溢れていた。
「すいません、冒険者に登録をしたいのですが。」
「始めまして、受付担当のアプリです。登録には100Gかかりますが宜しいですか?」
「大丈夫です、お願いします。」
「畏まりました、それではこちらのカードに触れて下さい。」
言われた通りテレホンカードくらいのサイズのカードを触るとピッっという電子音と共に私の名前とクラス、顔写真等が表示され、よく見るとRankFと書かれていた。
「はい、これで登録完了です。詳しい説明をお聞きになりますか?」
「いえ、大丈夫です。調べてありますので。」
「畏まりました。これからよろしくお願いしますね。」
そう言って微笑んだアプリに会釈をし冒険者ギルドを出る。今日の所は身分証を作れただけでよしとしよう。明日ログインしたら早速簡単な依頼を受けて外に行ってみようと思う。
お読み頂きありがとうございます。