プレイ9日目
「ん、ここは?あれ?」
まず、目に入ったのは真っ黒な画面。そして現実だと気が付く。どうやら昨日無理をしすぎてVR機のストッパーが掛かり強制ログアウト、そのまま寝てしまったようだ。時計を見るとすでに昼前だった。
「強制ログアウトってこんな感じなのか、ちょっと無理しすぎたかな」
3時間止まる事なく意識を張り詰めて走り続けたのだ、脳にかなりの負担が掛かっていたのだろう。最新のVR機にはこういった脳の異常を感知するセンサーが付いており、ある一定の水域を越えると強制的にシャットアウトされるようになっている。これで不慮の事故を防いでいるのだ。
「取り合えず、手紙は届けたし。あっちはなんとかなるだろう」
あれがクエストの一環であれば手紙を届けた時点で次のフェーズへ移行しているはずだ。そうであれば慌ててログインする必要もない。
「まずは風呂に入ってすっきりしてご飯を食べてからログインしよう、さすがに身体がダルい」
ギルド長の部屋で強制ログアウトになったという事はキャラクター自体はギルド長の部屋にあったはずだ。であれば安全だろう。フィールドで同じ状況になっていれば殺されて神殿に送還されているだろうが街中であればモンスターに襲われる事はない。
以前、街中で強制ログアウトや、どうしてもログアウトしないといけなくなったらどうなるのか検証した報告が掲示板に上がっていたのを見た。それによるとプレイヤーの身体はその場に残り、何をしても起きないそうだ。触る事は出来るが、プレイヤーからの攻撃は不可、現地のNPCからの攻撃は可能だったという。さすがに死ぬかどうかはNPCが嫌がったので検証出来なかったようだが、多分死んでデスペナルティの状態になるだろうという予想だった。
それからNPCの間で突然倒れた冒険者はギルドに報告し、衛兵がギルドの仮眠室に運ぶという光景が度々見られるようになった。装備品やお金、アイテムを盗まれる心配は今の所ないがあまりいい状態ではないだろうし、故意にそういう状態になる行為は褒められる物ではないだろう。
つまり、今回の場合は誰かがどこかに私の身体を寝かせてくれていると予想出来る訳だ。
「取り合えずログインしたらすぐ謝罪だな・・・」
礼儀は必要だもんなと大きく息を吐き、背伸びをする。風呂に入ってご飯を食べたら軽く身体を解してログインする。
目を開けたらどこかのベッドに寝かされているようだった。部屋の中を見回して、何も無かったので取り合えず部屋から出る。扉にはゲストルームと書かれていた。歩き回るのは悪いかと思ったがじっとしていてもしょうがないので人を探して歩き出す。
「すいません、ギルド長にお会いしたいのですが」
偶然通り掛った職員らしき人にギルド長と会いたいと伝えるとすぐにギルド長室まで案内してくれた。どうやら職員には連絡が行っていたようだ。
「おぉ、大丈夫か?エルフの冒険者よ」
「はい、もう大丈夫です。私はハントです。急に倒れてしまいご迷惑をお掛けしました。介抱までして頂き、ありがとう御座います」
しっかり頭を下げて感謝の気持ちを伝える。
「よい、お陰で薬も準備する事が出来た。時に冒険者であるお主に依頼があるのじゃが、ワシの護衛として一緒にエルフの里へ来てくれんか?」
イベントが進行していると考えて間違いないと思うが、護衛となると戦闘も必要になるだろう、大丈夫だろうか。
「あの森を単独で抜けて来たお主なら問題はないじゃろう。冒険者ギルドを通した正式な依頼とするし、なによりこの依頼はエルフ以外には頼めない物なのじゃ」
「分かりました。お受けします。出発はいつでしょうか」
「すまんが、今からじゃ。先程薬が準備出来たばかりじゃが、事が事なので出来るだけ急ぎたい」
<<特殊クエスト『里への護衛』が発生しました。このクエストは再挑戦が不可となります。本当に開始して宜しいですか?YES/NO>>
釈然としないものはあるがYESを選択する。これでもう後戻りは出来ない。多分、これは正式なエルフの里への行き方ではないのだろう。
エルフの里へは徒歩で向うらしい。ギルド長、大きなバックを背負った数名の職員と護衛のエルフと共に王都を出発した。
来た時と同じようにオーラル川を上流に向って歩く。最短距離ではないが危険性は下がるらしい。他の護衛のエルフは私と同じ位のLvだったので感知系スキルを駆使してモンスターを避けるように移動する。ゆっくりと安全第一で進み、無事にドルテムと出会った付近へ辿り着いた。
「ここからはワシの出番じゃな」
するとギルド長がなにか唱え始める。それと同時にギルド長から何か出たような感覚が<魔力感知>によって分かったが、それが何なのかは分からなかった。
「ふむ、何か感じたようじゃな。今のは『精霊』じゃよ」
ギルド長は何かを追いかける様に歩き出す。それを慌てて追いかけると色々と教えてくれた。
「この森の中心にあるエルフの里の周りには結界が張ってあり、普通に歩くだけでは辿り着く事は出来ん。先程使った『精霊』の案内がなければな」
「先程からおっしゃっている『精霊』とは?」
「なるほどお主は里のエルフではないのか、それならば知らぬのもしょうがあるまい」
<<種族クエスト『精霊魔法』が発生しました。>>
これも初めて見るクエストだし、始めて見る魔法だな。
「里のエルフの中で『精霊魔法』の素養を持っている者は里の試練を受け、その試練を乗り越える事でこの世界に存在する精霊に呼びかけ、魔法を使う事が出来る」
ゆっくりと前を向いたままギルド長は続ける。
「その魔法は普通の魔法とは違い、決まった形を持っていない。精霊に対価である魔力を渡し、イメージを形にするのだ。決まった形がないのである程度自由な使い方が出来る、しかし大きな力にはより大きな魔力が必要となる」
こちらを振り向いて私の目をしっかりと見てくる。
「お主には素養があるようじゃ。今回の報酬として里の試練を受けれるように口添えしようと思うのじゃが、どうかの?」
「是非、お願いします。私に試練を受けさせて下さい」
ギルド長の目を見て真っ直ぐに思いを伝えた。このチャンスは絶対に掴みたい。
「よろしい。それでは最後まで護衛を頼む」
それから程なくしてエルフの里の中に入ったようで、それまで感じていた不思議な感覚は無くなった。多分あれば結界の効果だったのだろう。予想では結界内では方向感覚や五感、スキル等が使えなかったのではないだろうか。
「無事里へ辿り着く事が出来た。これで依頼は達成じゃな」
<<種族クエスト『エルフの里へ』を達成しました!>>
<<特殊クエスト『里への護衛』を達成しました!>>
<<クエスト一覧から達成の報酬を確認して下さい。>>
「無事に辿り着く事が出来て良かったです」
「わしらはすぐに薬を持って行かねばならない、この里の案内は別の者にさせよう。報酬の件は後日という事でよいかな」
まずは一緒に来た職員さんに案内されて宿屋へと案内された。その後、里の色々な説明を受けて依頼の完了となった。
種族クエストの報酬はエルフの里への通行証とスキルポイントが5ポイントだった。特殊クエストはギルド長が言った様に精霊魔法を覚える為のエルフの試練の挑戦権だった。
「キリもいいし、一旦ログアウトしてからどうするか考えるか」
夕食にはすこし早かったが、なんだかんだで疲れたので早めにログアウトしてゆっくりする事にした。
お読み頂きありがとうございます。
精霊魔法を使えるようにしようと思いますが、まずは生活魔法Lvの使い方から、徐々に戦闘に組み込めるような形で進めようと考えています。精霊魔法一発で敵を倒せるような威力は持たせる予定はありません。
今後の簡単な流れは精霊魔法を取得してから王都へ戻り、騎獣のクエストを達成する事になりそうです。
一応ある程度の形は決まっていますが、引き続き騎獣についてコメントやリクエストがあれば感想にお願いします。
ハント
弓術士Lv.13
HP220/220
MP80/80
STR13(+5)
VIT13(+5)
DEX29+9(+8)
AGI29+9(+8)
INT13(+5)
MND13(+5)
LUK15(+5)
ステータスポイント:0
スキルポイント:10
冒険者ギルドランクE:18/30
<<スキル>>
<中級弓術>Lv.1<遠距離攻撃力上昇>Lv.8<身体強化>Lv.3<鍛冶>Lv.6<木工>Lv.9<錬金術>Lv.7<料理>Lv.4<鷹の目>Lv.7<夜目>Lv.7<遠見>Lv.5<ステルス>Lv.3 <ステータス鑑定>Lv.6<アイテム鑑定>Lv.6<気配察知>Lv.8<魔力感知>Lv.6<熱源感知>Lv.6<採取>Lv.7 <採掘>Lv.3<ダッシュ>LV.6<跳躍>Lv.5<不意打ち>Lv.5
<<称号>>
『孤軍奮闘』『弓の名手』
<<装備>>
武器・・・初心者の短剣・樫のショートボウ DEX+1
頭・・・なし
胴・・・ウルフベスト DEX+3 AGI+2 命中率アップ
手・・・ウルフグローブ DEX+1
脚・・・ウルフボトム AGI+1
足・・・ウルフブーツ AGI+2 消音効果アップ
背・・・ブラックウルフマント DEX+3 AGI+3 隠密効果アップ 耐寒 耐熱
装飾品・・・レンジャーリング DEX+1 AGI+1
<<所持金>>
36,250G