正式サービス開始
※5/14 ステータスの初期値を変更しました。100→10
正式サービス開始まであと3分。トイレにも行ったし準備は万全だ。サービス開始時刻と同時にVR機をスタートさせる。幻想世界Onlineのタイトルが表示されると共に、意識が沈んで行く。
目を開けると眼下には美しく雄大な世界が広がっていた。今までに見たことがないような美しい光景に目を奪われた。
『ようこそ幻想世界へ。この世界はあなたを歓迎します。』
「あなたは?」
目の前には美しい女神が立っていた。事前情報で分かっては居たが実際に見ると想像以上だった。
『私はこの世界の神であり、新しい生命に器を与える母でもあります。』
そう言って女神様は優しく微笑んでいる。これが物語りのスタートであり、キャラクタークリエイトになるのだ。
『あなたのお名前を教えて頂けますか?』
「ハントです。」
私は基本的にどのゲームでも狩人プレイだ、そしてそのスタイルであるハンターから取ってハントと着ける様になっていた。安易なネーミングと言われるかもしれないが私的には気に入っている。
『それではあなたに新たな器を授けましょう。自分の意思で選択しなさい。』
女神がそう言うと目の前に大きな鏡が現れてリアルの自分が映し出された。そして種族選択のメニューが表示されている。
「なかなかしっくりこないな・・・。」
種族は<人族>、<エルフ族>、<ドワーフ族>、<獣人族>の基本4種族から選択する事になる。更にそれぞれの種族の範囲の中で自由にキャラクターを作り出す事が出来るのだ。勿論、リアルのままプレイする人も居るが、私は折角なのですこしいじるつもりでいた。しかし、どうにもしっくりこない。
更にいじり続けて約3時間が経過した・・・。
「これでいこう!」
ようやく決まった私の種族は<エルフ族>。エルフ族は長命という設定の為、基本の顔でもリアルより若くなっていた、そこに髭を生やして髪と髭を白く染めてみた、髪は長いので後ろで一つに縛ってある。目の色は黒のままだ、鏡を見ながら色々変えてみたのだがどうもしっくりこなかった。身長はリアルよりもちょっとだけ高い175cm程にした、体系は種族補正がかかり、お腹も若干スリムになっている。
冒険して獣人もいいかと思ったのだが、さすがに51歳にもなって獣耳を生やした自分の姿には思う所があって、即効で却下した。ドワーフも悩んだのだが種族特性で完全におじいちゃんの見た目になってしまったので、なんとなく反抗心というか嫌な感じだったので同じく却下した。
ちなみに種族によって優劣は付かない。ステータスもスキルも自分でポイントを割り振れるようになっている。
終了を選ぶと再び女神が現れた。
『ハントよ、あなたはこの世界で自由に生きなさい。そしてまたいつか会いましょう。』
女神の手が私の顔に触れると同時に光があふれ出す。次の瞬間、私はすでにハントとして宿屋の部屋のような場所に立っていた。
『ようこそ幻想世界へ。私は案内妖精のメアリーです。ここでは初期クラスの設定とスキルの選択をして頂きます。』
「あ、はい・・・。」
サービス初日で忙しいのか分からないが目の前の案内妖精さんは淡々と説明を始めてしまった。そしてあっと言う間に目の前に選択肢が現れる。
「と、とりあえず決まってる分だけ選んでしまうか。<弓術>、<木工>、<錬金術>、<料理>は決定と。後はどうしようかな。」
幻想世界Onlineでは初期スキルとして10個が選べるようになっている。スキルは個人の行動によって選択肢が発現し、スキルポイントを使って取得するのだが、最初だけはある程度自由に選ぶ事が出来るのでこの10個は重要になってくるのだ。
「う~ん、<ステータス鑑定>、<アイテム鑑定>は必須か。後は<鷹の目>と<夜目>と・・・。」
取得出来るスキルは多岐に渡っている。<弓術>や<剣術>のような戦闘系スキル、<火魔術>や<回復魔術>等の魔法系スキル、<鍛冶>や<木工>等のクラフト系スキル、<採取>や<採掘>等のギャザラー系スキル。更に<近距離攻撃力上昇>等のパッシブ系スキルに<鷹の目>や<夜目>等のサポート系スキルがある。
これらのスキルにはLvが有り、上位スキルに進化したり、派生スキルが発生する場合や、スキルが統合されて進化する事もある。
「残りは<隠密>と<遠距離攻撃力上昇>にしよう。これで決定っと。」
<弓術>は弓を使う際にプラス補正が掛かる。幻想世界Onlineでは武器に対応したスキルを持っていなくても使用可能だが攻撃力の低下や命中率の低下等のマイナス補正が掛かる、対応するスキルを持っていればそこにプラス補正が加わるようになっている。
<木工>、<錬金術>、<料理>はクラフター系スキルでアイテム作成時に補正が掛かる。クラフター系スキルを取得しようとした場合は対応したギルドに所属し、修行して試験に合格しなければならない為、お金も時間も掛かってしまうので生産職を目指す場合は初期に取得する事が多いみたいだ。
<遠距離攻撃力上昇>は弓や投擲等の遠距離からの攻撃力にプラス補正が掛かり、<鷹の目>は遠くが見えやすくなり、遠距離攻撃の命中率にプラス補正が掛かるみたいだ。<夜目>は夜間でも昼間のように見えるようになり、松明やランタン、ライト等の魔法がなくても夜間や暗い場所での行動が可能になる。<隠密>は気配を隠し敵に発見されにくくなるスキルだ。
<ステータス鑑定>と<アイテム鑑定>はその名の通り、対象のステータスを鑑定したり、アイテムの詳細を見る為のもので、殆どのプレイヤーが取得するほぼ必須のスキルになっている。
「さて次はステータスの割り振りか。」
ステータスはリアル20歳男性を平均として全員同じ条件でスタート出来る。これは病気を持った人や老人でもプレイ出来るようにという運営の方針の一つだ。これはスタートラインを揃える只の目安で、リアルは殆ど関係してこない。そこから更に自由に割り振れるポイントを10貰い、自分のオリジナルキャラを作り上げていく。
ハント
レンジャーLv.1
HP100/100
MP20/20
STR1
DEX1
VIT1
DEX1
AGI1
INT1
MND1
LUK1
ステータスポイント:10
スキルポイント:0
「いつもの感じで振ってみるか。」
ハント
レンジャーLv.1
HP100/100
MP20/20
STR1
VIT1
DEX5
AGI5
INT1
MND1
LUK3
ステータスポイント:0
スキルポイント:0
「これで決定っと。」
私は基本的に遠距離攻撃しかしないハンタースタイルである、なので命中率が上がるDEXとスピードが上がるAGIに振る。幻想世界Onlineでは遠距離武器の攻撃力はDEXとAGIの合計値に依存している。ちなみに近接武器、例えば剣や槍等はSTRとDEXの合計値が攻撃力に依存する。蹴りや拳等の格闘系スキルはSTRとVITの合計値に攻撃力が依存している。運を上げたのは、なにがあるか分からないが無いよりはいいだろうという判断からだ。
『では、これよりあなたの幻想世界での冒険が始まります。いってらっしゃいませ。』
「え、ちょっと・・・。」
案内妖精は淡々と処理してあっと言う間に設定が終わってしまった。そして宿屋の部屋には私だけが取り残された。
お読み頂き、ありがとうございます。
約2000文字書いたところで間違って消してしまったので書き直しました。書き直しって切ないですね。