閑話 西森望の人生
作中でも触れた点を確認の為閑話形式にしてみました。
私の名前は西森望、51歳のバツ1。趣味はオンラインゲームで中学生くらいから色々なゲームをプレイしてきた、中でもFFシリーズが好きだった。好きな食べ物は豚骨ラーメン、嫌いな食べ物はトマト。身長は169cm、体重75kg。一応健康に気を使って毎朝30分のランニングが日課になっている。タバコは吸わないし酒も殆ど飲まない、ギャンブルもしない。外に出る時間があれば家でゲームをしていた方がよっぽど有意義だと考えている。
そんな私は今、自宅で一人幻想世界Onlineをプレイしている。これは発売されたばかりの日本初のVRMMOで自由度が高く、もう一つの自分として楽しむ事が出来る。一部ではもう一つの現実と呼ぶ人たちもいるくらいだ。そんなゲームに私もどっぷり嵌っていて、朝から晩までプレイしている。
朝から私は昔からこういう性格だったので殆ど外で遊ぶ事もなく、現実世界の友達は少なかった。 大学時代に軽いのりで友達と手をだした株でかなりの金額を稼いだが全て将来の為に貯金して、それっきり株は辞めた。大学卒業後は普通に就職し、自動車の部品を作る会社に就職した。就職してからも夜の付き合いは程ほどに、家に帰ったら寝るまでMMOをプレイする。その繰り返しで人生を過ごしていた。
30歳も目前になったある日、会社の上司からお見合いを勧められた、簡単に断る訳にもいかず渋々お見合いをする事になった。相手も私と同じ年で趣味もゲームという、初対面なのに不思議な感覚を感じてすぐに付き合いに発展した。そして1年後には結婚もした。私は結婚には全く興味が無かったがその時は彼女を愛していたし、2人で一緒にゲームをしたりと本当に幸せを感じていた。
翌年には長女が誕生した。その頃になると妻はゲームを殆どプレイしなくなっていった、しかし私は子供が生まれても殆どをゲームの時間に費やしていた。勿論家族は愛しているし、無駄使いはせず、飲み会にも殆ど参加せずに帰宅して家族でご飯を食べる、朝だってみんなで食べてそれぞれの仕事や学校へ向かう。
誕生日や記念日はちゃんとお祝いパーティもしていたし、会話もそれなりにあったと思う。
そんな毎日に私は何の疑問も抱いていなかった。そう、私は上手く行っていると思っていただけで妻は違った。ストレスは貯まっていたのだろう、殆ど喧嘩らしい喧嘩もしたことはなかったが娘が成人した日、離婚したいと告げられた。妻はもう1度外の世界を見て、後悔しない人生を過ごすのだと言っていた。
娘はそんな私に似ることなく、すくすくと育ってくれた。子供の頃から活発でよく外で遊んでいた。小中高校とバスケット部に所属し、何度か試合も見に行ったことがある。家ではよく本を読んでいたり、部屋に篭っていた様だがそこは娘のプライバシーなので何をしていたか詳しくは知らない。今は大学四年生だったか、たまにメールをやり取りしていて就職が決まったとか言っていた気がする。
妻と娘に対して申し訳ない気持ちは今もずっと心に残っている。
そして離婚して私は一人になった。結婚を期に購入したマンションは妻に譲り、今は別のアパートで暮らしている。近くにはスーパーもあって、大きな公園もあるいい所だ。離婚するまで料理等した事も無かったが、やってみると意外と楽しく、家事も苦痛にはならなかった。
離婚して1年が経った頃、幻想世界Onlineの発売が発表された。日本で始めての国産VRMMO、それは非常に興味をそそる言葉だった。当時すでにVRMMOは存在していた、アメリカが発売した物で今年で約10年続いているゲームだ。しかし、VR技術が未熟な時期に発売された事もあり私がプレイしたいと思えるゲームではなかったので手を出す事はなかった。
私はこれを絶好の機会だと思った。昔から大好きなMMO、しかも国産で前評判も良く、PVは圧倒的なスケールで見るものを感動させる。ずっと昔から妄想していた理想の世界がもう直ぐ目の前に広がる。そう考えただけで子供の頃に戻ったようにわくわくして、居ても経ってもいられなくなった。
結局、会社は早期退職制度を使って辞めた。これで時間が出来た。贅沢しなければ普通に暮らすだけの貯えは残っている。後は幻想世界Onlineが手に入れるだけの状態になった。しかし、ベータテストの申し込みは当選せず、悶々とする日々が続く。なんとか第一期販売分に当選する事が出来たが、発表の前後は生きた心地がしなかった。
正式サービスが始まるまでは掲示板等を見ながらどうやって遊ぼうか、沢山妄想した。昔から基本的に武器は弓か銃を使う。剣や魔法よりも弓の方が好きだった。特に弓道等をやっていた訳ではないのだが、弓に惹かれていた。
幻想世界Onlineにも弓があるので絶対に弓を使おうと決めていた。他にも色々なスキルがあって悩んでいたが狩人プレイをする事は決定事項だったので、基本的にそれに沿ったスキルを選ぶ事にしていた。やはり狩人といえば木工は必要だろう、自分で作った弓矢でモンスターを狩る、そして食べる。と、いう事で料理も必須スキルになる。一人で行動するなら薬も必要になるかもしれない、狩人秘伝の薬と言えばなんだがかっこよく聞こえる。日々そんな事を妄想していた。
そして始まる幻想世界Onlineの世界。私は今夢と理想の世界へ足を踏み入れる。
お読み頂きありがとうございます。
作者はそこまで年齢が高くないのであくまでもイメージの50代です。