緑髪の不思議な子
商店街の建物に囲まれる路地裏。太陽の眩い光が照らす蒸し暑い商店街の大通りと比べ、建物の影でかなり暗いが、快適と言えるほど涼しい。そこには、太樹を路地裏へと引き摺り込んだかわいい系の顔をした背の高い――太樹よりも数段高い――緑髪の少女と正面に対峙して話していた。
「ごめーん。いきなり引っ張っちゃってー」
少女は悪びれた様子を見せながらも、肩口まで伸びた髪を右手で整え、馴れ馴れしい態度と笑顔で謝った。一方の太樹は、いきなり引っ張られたためこけてしまい、擦りむいた肘から出血している。
「い、いや。それはいいんだけど、なんで僕を引きずった?」
初対面ではあるが聞き覚えのある声に疑問を感じていたが、それを聞いたら変人扱いされるかもしれないと思い、引っ張った理由の方を聞いてみた。
「運命の人だったから」
「う、運命の人ぉ?!」
あまりにもぶっ飛んだ答えに、思わず太樹は聞き返す。出会ったことがないような人に、初対面で言われればそうなるのは当然のことだ。
「そう、運命の人。私とあなたは結ばれる。そういう気がしたの。なんとなくだけど」
「な、なんとなくって……君ねえ…」
当たり前だが、思いつきのような理由に、太樹が納得するはずがない。納得するどころか、逆に謎が深まった。
「と、とにかく。あなたは運命の人なの! だから、今日は私に付き合ってもらうの!!」
「う、うん」
訳がわからないが、特別予定があったわけではなく、このまま家に帰っても暇であり、そして、こう答えないと拉致をされる気がしたのでとりあえず、少女の提案のようなものに賛同することにした。
「あ、名前を名乗ってなかったわ。私は那珂早希乃。よろしくね」
「早希乃さんね。よろしく。あ、僕は――」
「三宅太樹くん、でしょ?」
自分の名前を言い当てられ、太樹は恐怖のようなものを感じた。
「なんで、僕の名前を?」
「私の頭に急に出てきた名前を言っただけなんだけど?」
早希乃のいったことが俄かには信じがたいが、現に当たっているため、そういうことだと信じることにした。
なんか凄いなこの子