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choice02~球体の楽園~  作者: 陽芹 孝介
4/29

調査

タクシーで九条のオフィスへ向かう途中、車内でアマツカの話を葵と歩はしている。


葵は歩道橋の上で、子供に貰った封筒の中身を、歩に見せた。


中には一枚の紙切れがはいっていた。


葵は紙切れを歩に渡した。

それを受け取った歩は、内容を確認した。

「これは……」


紙切れには…。

『今夜あなた達を、楽園にお連れします…』と、書いてあった。


葵は言った。

「実に興味深いです…しかも先手を打たれています…どうやら僕の行動は筒抜けです…」


歩が言った。

「この『あなた達を』って、ところかい?」


「はい…それはすなわち、僕が歩さんと一緒にいる事を、把握しているという事を示してます…それに…」


「それに?…」


「封筒を僕に渡したタイミングです…。あのタイミングで渡すには…僕を監視してなければ難しい…」


「監視……」


「ええ…どうやら、もう一人ストーカーさんがいたようです…」


「後手後手だな…」


葵は開き直ったように言った。

「それは仕方ない事です…、ステージは相手が用意するんですから…あと、紙の裏を見て下さい…」


歩は紙の裏を見た。

「Webアドレスと、23時00分…、これって…」


「『その時間に、そのアドレスを開け』と、指示しているのでしょう…」


歩は不思議そうに言った。

「しかし、これじゃあ…「罠ですよ」って、言ってるようなもんだぜ…」


葵は髪をクルクル回しながら言った。

「だから、九条さんと、有紀さんを『先に送った』のですよ…」


歩は不愉快な表情で言った。

「チッ!やり方が…汚い…」


「アマツカはわかってるんですよ…。

僕はともかく、歩さんは仲間を見捨てないと…、まぁ…僕も見捨てるつもりはありませんが…」


後部座席の真ん中に座る羽目になった五月は、左右で飛び交う二人の会話に理解できずいた。


「あの~、さっきから何を?九条さんって、あの九条司?…それに有紀さんって、さっきの綺麗な女の人ですよね?…。

送ったって、どういう事?ベッドで寝ていたし…、そもそもアマツカって?…」


歩は言葉を濁している。

「う~ん、説明すると長くなるね…」


葵が言った。

「もうつきそうですよ…」


五月の疑問をうやむやにするように、タイミングよくタクシーは目的地に到着した。


タクシーを降りた3人のまえには、綺麗なオフィスビルが並んでいる。


歩は九条のオフィスがあるビルを目指した。


「ここだ…」


九条のオフィスを目の当たりにした、3人は思わず、たたずんだ…。


「以外としっそですねぇ…」


葵が言うように、九条のオフィスビルは周りの豪華なビルと違い、シンプルな赤茶色のビルだった。


「このビルの5階が九条のオフィスだ…」

歩はそう言うと、ビルの入口へ向かった。


エレベーターに乗り込み、5階で降りると、正面に『Office-nine(オフィスナイン)』とかかれた表札が目に入った。


歩が言った。

「これが九条のオフィスだ、ここを拠点にして様々な事業を展開してるそうだ」


歩はOffice-nineの黒い扉を開いた。


開いた先は壮絶な光景だった。

4~5人の社員らしき者が、バタバタとしている。


電話対応に追われてる者や、棚から書類を引っ張り出し…それらを確認する者や、様々だ。


そのバタバタした社員の中から、一人の女性がやって来た。


葵ら3人を怪しげな表情で見ている。

「誰です?あなたたちは?…」


女性はチェックのシャツにジーンズと、ラフな格好をしている。


歩が言った。

「あの~、渡辺って言いますけど…山村さんから聞いてませんか?…」


女性は強張らせてた表情を軟らかくして、笑顔で言った。

「あぁ~、社長のご友人の…」


「はい、九条の仕事部屋に用があって…」


「はいっ!聞いてます聞いてます…ちょっと事務所、散らかってますけど…こっちです…」


書類の山や、段ボールで散らかっている、事務所の通路を通り、九条の仕事部屋へ向かう。


歩が言った。

「随分…なんだ…壮絶な光景だね…」


女性はげんなりした表情で答えた。

「社長が急に休むことになって、社内はてんてこ舞いなんです…。山村さんも社長に付きっきりだし…」


女性は愚痴りながら、九条の仕事部屋まで案内してくれた。

「ここです。鍵は持ってますよね?それでドア開けて、中に入って下さい…。じゃあ…私忙しいんで…。愛想無しですみません、ゆっくりしていって下さい…」


そう言うと女性は戻って行った。


葵が呟いた。

「九条さんがいないと、ダメな会社のようですね…」


扉を開いて九条の部屋に入った3人は、事務所と部屋のギャップに少し驚いた。


五月が思わず言った。

「違う会社みたい…」


五月の言うように九条の部屋はキレイに片付いていた。


黒をベースにした部屋に、棚や机、ソファーなどどれもキレイに使われている。


葵は言った。

「さっそくPCを…調べましょう…」


葵はデスクに置いてあるPCへ向かった。


葵はPCの電源をいれた。

しばらくすると画面が明るくなりホーム画面へ写った。


葵は手際よくPCを操作する。


そんな葵を見て五月は言った。

「勝手に…そんな弄くったら、まずいんじゃ?…」


葵は呆れて言った。

「PCの前で九条さんは倒れていました…調べるのは当然でしょう…」


「なんで、PCと昏睡が関係あんのっ?…そんなのおかしいよっ?…。

呪いのメールじゃ…あるまいし…」


葵は口角を上げて言った。

「呪いのメール…ふふ、確かにそうかも知れません…」


五月は笑う葵を不気味に思った。

「何が可笑しいの?…」


「怖いのですか?あなたはオカルトミステリーの美人代表でしょ…」


「私が不気味なのは、あんたよっ!」


「その不気味な人間を、ストーカーしてるのは…あなたでしょ…」


「私はストーカーじゃないっ!」


激昂している五月を宥めるように、歩は言った。

「まぁまぁ、五月ちゃん…落ち着いて…。葵君、何か気になるところある?」


「アマツカから受け取った、アドレスの履歴が残っていますね…」


歩は驚いて言った。

「なんだってっ?!」


「開こうと試みましたが……エラーですね…」


焦った感じで歩が言った。

「葵君、先々進むなよぉ…、心の準備ってのがあるんだから…」


葵は言った。

「ご安心を…最初から開くとは思ってませんよ…アマツカがそんなミスをするとも思えませんし、念のため試しただけです」


歩は言った。

「じゃあ…この紙切れは?…」


「時間が書いてあります…その時刻に開けるようになるのでしょう…」


「11時ってわけか…」


「とにかく、手懸かりを…何故九条さんを先に狙ったのか?…」


「そうだな小さな事でもいい…」


すると葵は五月に言った。

「ストーカーさん…その首にぶら下げているカメラで、部屋を一通り写して下さい…」


「だ・か・らっ!ストーカーじゃないっ!…。

でも、いいわ…撮影してあげる…、やっと私に協力指せる気になったみたいだから…」


「無理矢理ついてきたのですから…そのくらいの役に立ってもらわないと…困ります…」


「いちいち…一言多いわねっ!」


そう文句を言いつつ、五月はデジカメで部屋を撮影し始めた。


PCを操作する葵は何かを見つけたようだ。

「うん?…これは…」


「どうした?葵君…」


「九条さんは…どうやらアマツカについて調べていたようです…これを…」


そう言うと葵はPCの画面を見るよう、歩を促した。


「これは?『A&M company(カンパニー)』?なんだこれ?…」


葵は髪をクルクルさせながら言った。

「『島』へのチケットは、この『A&M company』から、ばらまかれたようです」


「どういう事?」


「これは九条さんがまとめた資料ですが…見て下さい、チケットの配分先です」


九条の資料には、九条の会社Officenineから、チケットがいくつかの企業や団体、協会などに、渡っていることが記されている。


その内容に歩は驚いた。

「これは!星城商事(せいじょうしょうじ)、それに警視庁…財界に東鷹医大っ!これは…」


「そうです…あのチケットはここから、ばらまかれたのです…」


「まさか、九条がアマツカに関与しているって事なのか?…」


「それはわかりませんが…利用された可能性は高いです…」


「でもどうして…」


「株主優待と偽って、九条の会社にチケットを送り、それを配分したって…ところですか…」


「しかし、それではピンポイントで俺を狙えないぞ…九条が何処に配るかはわからないんだ…」


「確かに…では、このOfficenineにアマツカの内通者がいたら?…」


歩は目を見開き表情を固めた。


葵は「ふう」と、ため息を一つついて言った。

「僕たちは、アマツカの事を考え直さないといけませんね…」


「どういう事だい?」


「アマツカが一人ではないのは、わかってました…チームか何かは…」


「じゃあなんなんだい?」


「組織ですか…しかも支援者のいる…。

これは、厄介です…」


「支援者……、そうか、アマツカのユーザーか…」


「はい…。アマツカはあの時、『富豪達』と、言っていました…、多分それが支援者でしょう…賭博に参加する事により、多額の資金を提供しています」


「やっぱ…普通じゃないよな…」


話の大きさに歩はどこか乗り切れていないようだ。


歩とは対照的に、葵は楽しそうに言った。

「ただの愉快犯では無いのは、わかってましたが…最終的な目的は…興味深いです」


「楽しんでる場合じゃないよ…どうやって2人を助けるの?」


「とりあえず…むこうに行くしかありませんね…。招待状も、貰った事ですから…」


そう言うと葵は、例の紙切れをヒラヒラさせている。


歩は頭を抱えて言った。

「やっぱりな…」


「おや?アマツカを追うと決めたのは歩さんですよ…」


「いや、そうじゃなく…。出来れば葵君には関わらないで欲しい…」


葵は呆れて言った。

「やれやれ…まだそんな甘い事を言ってるんですか?…。

アマツカは僕もターゲットにしていますよ…現にこの紙切れは僕の元に届けられたのですから…」


歩は葵がこの状況を、楽しんでいる事に危惧していた。


「上手くは言えないけど…葵君はアマツカに関わらないで欲しい…」


「またですか…僕は、アマツカとは違います…ご心配なく…」


歩はこれ以上言わなかった。

葵に関わらないで欲しいのは、歩の本音だが、葵に頼らないといけない現実もある…。


歩は葛藤し、思わず呟いた。

「ほんと…情けない大人だよ、俺は…」


そんな歩を見て葵は言った。

「そんな事を言わないで下さい…歩さん達がいたから…前回は勝てたのですよ…」


歩は葵に返す言葉が見つからなかった。


葵は言った。

「資料の事は、向こうに行ってから…本人に聞きましょう…」


歩は言った。

「そうだな…腹くくるか、葵君…」


「なんです?」


「皆を…助けよう…」


葵は髪をクルクルし口角を上げて言った。


「もちろんです…僕を誰だと思っているんですか?…」








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