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choice02~球体の楽園~  作者: 陽芹 孝介
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プロローグ②

病院を出てしばらく歩いていると、歩が葵に言った。

「葵君…晩飯でもどう?奢るよ…」


「そうですね…けっこういい時間ですね…、お供します…」


「じゃあさっ!この先に俺が医大にいた頃…よく行ってた店があるんだ…そこでいい?」


「僕はどこでも構いませんが…」


「じゃあ決まりだね…」


歩のおすすめの店への道中に、歩はしびれを切らすように言った。

「さっきから…みょ~に、視線を感じるんだけど…」


「僕もです…心当たりはありますが…」


「葵君のお客さんかい?」


「ええ…おそらく…」


葵は後ろを振り返って言った。

「ばれてますよ…出てきて下さい…」


葵の声に反応し、電柱の影から小柄な女性が現れた。


葵は呆れて言った。

「また、あなたですか…ご苦労なことです…」


女性は気まずそうにしている。


歩が言った。

「誰だい?この娘?…」


「ただのストーカーです…」


葵のストーカーという言葉に、女性は激昂した。

「違うっ!ストーカーじゃないっ!」


歩が言った。

「やかましいストーカーだなぁ…」


女性は興奮ぎみに言った。

「ストーカーではありませんっ!私は 東鷹大学!オカルト研究サークル、美人代表の…春野五月(はるのさつき)21歳ですっ! 」


歩は笑いながら言った。

「はははっ!この娘自分で美人って、言っちゃったよ!あ~面白れ~!」


五月はムッとして言った。

「何がそんなに可笑しいんですかっ?!」


葵は呆れて言った。

「やれやれ…前にもこんな事があったような…」


歩は笑をこらえて言った。

「で…なんで、葵君を追ってんの?」


五月は胸を張って言った。

「『天変 月島のいる所、怪事件あり』です!」


「そうなの?葵君…」


「ただの妄想癖でしょ…放っておきましょう…」


「そうだね…行こっか…」


二人は五月を無視して先に進んで行った。


「待てっ!私を無視するなっ!」


五月は走って二人の後を追った。


歩のおすすめの店に到着して、店員に座敷席に案内されたが…。


「どうして君までいるのかなぁ?」


五月はちゃっかり参加していた。


「旅は道連れって言うじゃないですかっ!」


葵は呆れて言った。

「勝手についてきただけでしょ…。それにしても…前にもこんな事がありましたね…」


歩も呆れて言った。

「しょうがないか…君も食べて行きな、これも何かの縁だ…」


五月は笑顔で言った。

「さすがはお兄さん、月島葵と違い、話がわかる…」


葵が言った。

「少しは遠慮したらどうですか?この間の警部殿との事といい…困った人です」


五月は目を尖らせて葵に言った。

「払うわよっ!時分の分はっ!」


「どうして、そう僕に敵意丸出し何ですか?何か恨みでもあるんですか?」


「あんたが真実を語らないからでしょっ!」


葵は表情を変えることなく言った。

「真実も何も…あなたが知りたい事など何もありませんよ…」


歩は二人の間に入るように言った。

「まぁまぁ…いいじゃない…楽しく飲もうよ…注文は?」


「そうですね…久々の再会です、カルーアミルクを頂きます…あっ、彼女には…そうですね…濃いめのウーロンハイを…」


五月が葵に噛みつくように言った。

「なんであんたが、勝手に決めんのっ?!」


「おや、先輩が後輩からのお酒を断ると?…」


葵の明らかな挑発に、五月は簡単に乗った。

「いっ、いいわよっ!飲むわっ!」


……10分後……


「ぐう~、ぐう~、ぐう…」


寝ている五月を見て歩は言った。

「寝ちゃったよ…」


「前もこの手に掛かったのに…懲りない人です」


「でもなかなか…いいキャラだよ…」


「付きまとわれる、僕の身になってください…」


「俺だったら嬉しいけど…こんな可愛らしい娘…」


「あまり茶化さないで下さい…」


少しむすっとした葵を見て、歩は話を変えた。

「明日…山村さんに言って、九条の仕事部屋に入らしてもらおうと思ってるんだ…。葵君は…って、来るに決まってるか…」


「当たり前です…しかし、歩さん…いつもに増して積極的ですね…」


「まぁね……、こう見えて責任感じてるんだよ…」


「あなたが悪いわけではない…医者なら誰もがとった行動です…」


歩はあらためて葵に言った。

「なぁ…葵君…」


「どうしました?」


「どうしてアマツカを追うんだ?」


「今更ですか?…」


「いや、もう島からは脱出出来たんだ…無理に追わなくても…君はまだ若い…」


「僕は記憶が残っています…どちらにせよ、何か仕掛けられますよ…僕に限らずですが…」


歩はくいさがった。

「けど…何も起きないかもしれない…」


葵は髪をクルクルさせながら言った。

「アマツカが…何を目的にしているか気になる…では、いけませんか?」


「俺の勘だけど、やつは危険だ…」


「それも今更ですね…」


「君もしってるだろ…やつは、戦場やテロを目の当たりにしている…。それを経緯に今の活動をしている…」


「まぁ…何かの思想的行動である事は、わかりますが…」


歩は少し言葉を選ぶように言った。

「君は頭がいい…だが、やつもそうとう…頭がいい…」


葵は歩が言いたいことを察した。

「僕が…アマツカに、似ていると?」


歩は黙っている。


葵は言った。

「心配無用ですよ…。僕はアマツカを認めるつもりは毛頭ありません…。アマツカは人の弱い部分に付け入り、其をコントロールし、操る…。順平君を操ったように…」


小林順平(こばやしじゅんぺい)…夏に知り合った人物で、島で殺人を犯した人物…。


順平は日常に自分の居場所がなく、自暴自棄になっていたところで、あの島に行き…そこで美夢と容子の優しさに触れ、居場所を見つけた。


美夢と容子に認めてもらいたい気持ちをアマツカに利用された…。順平も被害者だ。


葵は言った。

「それに、九条さんを救うのが先決で…アマツカは…ついでですよ…」


「そうか…だったらいいよ…」

歩はこの時、同族嫌悪というフレーズが浮かんだが…口にする事はなかった。


二人をよそに五月は気持ち良さそうに、眠っている…。

五月はそのうち目が覚めるだろうが、九条はどうなるかわからない…。


葵と歩は九条を救う事を、選んだ。


それがどんな結果になろうとも…。




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