3話 「転校生」
一定の距離感でついてくる、朝ご飯を乗せたお盆からお茶碗をとりばくばくと一心不乱に食べる。
何しろ、時間がない。
本来なら、優雅に歩きながら上品に食べる予定だったが今はそんなことを考えている暇などない。
「うぐっ…気持ち悪い…」
喉に何度か詰まりかける。
ようやく、完食するとお盆を家に戻らせ自分はまた駆け出した。
こんなことになるなら、朝ご飯食べない方がよかった…
後悔後をたたず。今更思ってももう遅い。
脇腹がはちきれそうになるもその痛みを我慢しひたすら駆ける。
一花は、こんなに辛い朝はないだろうと心の中で思った。
ようやく、見えてきた学校の門。
聖ミルヒア学園。
キリスト教を信仰している有名私立中。
私立という訳でもちろん学費も高い。
しかし、そんな中で一花は特待生としてこの学校に通っている。
入試では2位につき、1~2位までの全額免除を受けている。
だが、それを知っている生徒は、自分自身と先生のみ。
基本、裏事情は内密にされているのだ。
だから、一花は、入試一位が誰かも分からない。
「はぁっ、はぁっ、着いた…」
はぁっと一息つき大きな黒い鉄の門へと足を踏み入れる。
とその時。
『リーンゴーン』
この学校特有の変わったチャイムが学校中に鳴り響いた。
それがさすもの、つまり
「ち、遅刻だああ!」
秒針は既に12の位置を過ぎ3秒が経過している。
チャイムは、30秒流れる。
27秒でつかないといけない。
鞄を肩にかけ直し手足を動かす。
周りの木々が風とともに過ぎる気持ちよさを味わいながら校舎へと突っ込む。
ローファーを脱ぎ上履きに履き替えるとまた、一直線に伸びる廊下を走る。
残り15秒。
ダダダダダと階段を駆け上がり3階へ。
右側、二つ目の教室が目的地。
あと、12m
残り3秒
「間に合えー!」
教室のドアを思い切り開け転がり込む。
そして、その一秒後、チャイムがなり終わった。
作成中