第1話〜青天の霹靂〜
「あのね。りおに話さなくちゃいけないことがあるの。」
真面目な顔をして私を見つめる両親は、見たこともないくらい真剣だった。
荷物整理が一段落したのでキッチンへウーロン茶を飲みに階段を降りると
お母さんが「あ!」と私の方を見て居間へ来るよう手招きをした。
「何ー?すぐ終わる?」
「あなたによるわね。」と言いながら母は居間へ入っていった。
後ろを追いかけるともう母と父が並んでテーブルの前にいたので
何だろうとりおは眉をつり上げ、目を細めた。
りおが2人の向かいに座るやいなや母が口を開いた。
「今週の金曜日にはもうオーストラリアへいくでしょ?」
思いがけない言葉にりおは拍子抜けしてしまった。
「うん……え?何?それがどうかしたの?」
2人は顔を見合わせて、もぞもぞと体を動かした。
ふぅー…と母は息を吐いた。
「りおは……オーストラリアに行かないのよ。」
「はぁぁ!!??!!??」
りおは目をこれ以上開かないというくらいに見開いて今目の前にいる人が
たった今発した言葉が理解できないような顔をした。
そんな反応だと思っていたのか、母は言葉を続けた。
「あのね。りおに話さなくちゃいけないことがあるの。」
「そうじゃなきゃ話は進まないよ…」
りおは目を泳がせた。
「お父さん。あなたが言ってくださいな。」
父はピクッとしてすぐに首をかしげた。
「俺は……俺からは、なんというか…話しにくいってか…上手く言えないな。」
母は大きなため息をついた。りおはその行動に不安を覚えた。
母が小さな声で「私にだって上手く話す自信ないんですからね。」
とお父さんに伝えたのを聞き逃さなかった。
「(何?何なの?私に荷物整理させて、オーストラリアの学校に編入するってまで
言ってたくせに…私は日本に残れってこと??どうしてこんなに深刻そうなの?)」
私は頭の中でぐるぐるといろんな考えが音を立てているのが聞こえてきた。
するとお母さんがおもむろに隣に置いていた段ボールを私の方にぐっと押し出した。
「なに…こ」
「開けてみてちょうだい。」
私の言葉を遮ってお母さんは段ボールをまたぐっと押した。
大分前のような段ボールを私はゆっくりと開いた。
「…!!」
その中にはこれからの私の未来を大きく変える物がたくさん詰め込まれていた。
「りお…」
りおは段ボールから目が離せなかった。
「それは全部これからのあなたにとって、すごく必要な物なのよ。
さっきお父さんはそれをずっと探してたの。見つかって良かったわ。全く。少し古いのは…
あなたが産まれたときからとっておいたものだから…」
お母さんはお父さんに次の言葉を言わせるようにお父さんの脇腹を肘で突っついた。
「あー…りおには、9月からクルワール魔法専門学校に行ってもらうんだ。」