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針子
「清水寺から降りてくると、自販機があるじゃけん。そこで待っとる。会わせたい人がいるじゃけぇ」
近頃黒澤修二が頻繁に来るようになり、その度に花を連れ出すので、「商売あがったりやわ」と、おかみが文句を言った。
「ほな、行きましょか?」
花が玄関に行くと、蛍が待ち構えていたかのようにそう言った。
いつもと違ってレースをあしらったワンピースを着ていた。
「それどうしたん?」
花がワンピースのレースを見ていると、「うちが付けた」と蛍が言ったので、花は驚いた。
「レースを付けたん?」
「コサージュは、失敗したさかい」
見ると、蛍の草履には、小さなリボンが付いている。
「ハイソックスなら新しいの持ってるわ」
花が言うと、「ハイソックス?!」と、蛍が大袈裟に驚いた素振りをした。
「サンダルなら、古市で買うたらいい」
そう言いながら花は、サンダルのボタンをパチンとしめた。
「財布のひもは、締めなきゃあかん」
蛍はそう言ってから、嬉しそうに、「ほな、行ってきやす」と、奥に声をかけた。




