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指切りの船  作者: 影津
6/23

2-1

 しばらくイレブンは、ソラと最上階の展望デッキから大阪湾を見ていた。海遊館、USJなどが過ぎていく。さらにしばらくすると、堺市が遠くに見える。このまま関西国際空港や和歌山方面に向かって行くだろう。船から見て、進行方向右には淡路島も見えるかもしれない。


 イレブンは案外自分が事故の後遺症がないことに驚いた。


 デッキにいるほかの乗客が疎らになり始める。まだ日は高く、かなり暑いのだ。


「水でも飲みに行く? てか、酒持ってきたんだけど」


「スイートルームにはスパークリングワインがあるぜ。ちゃんと見てないだろ」


「マジか」


「ま、イレブンの酒を断る理由はないけどな。ありがとな」


「なぁ、ソラ、この辺って」


「――分かってる」


 今まで黙祷をしたことはある。それは、学校の行事とかで。だから、気持ちを込めて目を瞑ったことは一度もなかった。だが、イレブンは一年前の六月のクルーザーの通った航路と、このあおいとりが航行する航路の交わる地点をよく覚えている。


 関西国際空港より北西十キロの地点であおいとりと衝突した。


 イレブンは自然と口を閉じて瞼も閉じてしまう。


 ここでみんな亡くなった。ある者は流され、ある者は三日後に病院で息を引き取った。


 脳裏に事故直前まではしゃいでいたみんなの顔が過る。


「おい」


 ソラに睨まれた。


「やるならちゃんとやれ。黙祷」


 ソラが敬礼して目を瞑る。イレブンも自然と長い黙祷した。


「イレブン。悪いけど、俺は今夜は飲めそうにねぇわ」


 ソラの罪、無免許運転、飲酒運転、煽り運転。車だったとしても、危険運転で捕まる事案だ。


「だよな」


 ――どうしてソラとまた船の上で、馬鹿騒ぎできると思ってたんだろう。


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