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第1話 前途多難

気が付くと、俺は何か狭いハコのようなものに入れられていた。


なんだこれは?


姿勢は仰向けに寝転がった状態、両腕は気を付けの形に伸ばしている。

まるで、棺桶にでも入れられているような・・・


割とぴったりとしたハコに入れられているせいで身動きが取りづらい、何とか身体を起こしてみると俺の視界に髪の毛がかぶさってきた。


俺の髪、こんなに長かったっけ?


取り敢えず、何とかハコから這い出る。

立ち上がると、薄暗い部屋の中に居る事が分かった。


しかし、デカい部屋だな。

なんで俺はこんなところにいるんだ??


そして思い出す。


そうだ、確かトラックに轢かれて死んだんだ。

そしてロリな神様に異世界転生させられてこうなっている、と。


でもなんで立ち上がれるんだ?

0歳スタートを要求したはずなんだが、間違えられたのか?


まぁなってしまったものは仕方がない。

取り敢えず、ここを出て人里へ行く必要があるだろう。


しかし、髪がうっとおしいな。

容姿端麗を望んだのは自分だが、なぜロン毛になっているのか。

あの女神の中ではイケメン、イコールロン毛なのか??

まぁハゲよりはマシだが・・・


それともあれか?

大は小を兼ねるという奴で長ければ好きな長さに整えられるでしょ、ということか。

なるほどあり得るな。

そうだとしたらあの女神はけっこう気が利くやつだったのかもしれん。


そんなことを考えながらも視線は部屋の出口を探す。

そして階段を見つけた。

昇り階段だ。

しかし、階段も一段一段がでけえな。

これは昇るのが大変だ。


俺は階段を昇るべく足を延ばす。


その時に気付いた。

服装だが、ズボンじゃねえ。

なんか、ヒラヒラした布を纏っている。

ローブか何かだろうか。


目を凝らしてみてみると、全容が分かってくる。


これは、スカートだ。

それもドレスのような生地の・・・


ナンデデスカ?


あの女神、女装させた?

あいつの中のイケメンは女装男子??


とにかくここはちょっと暗すぎる。

その割には見えてる気もするが、とりあえずもうちょっと光のあるところへ行って確認せねば。


そして俺は階段を駆け上がった。


そんなに長い階段ではなかったはずだが、昇り切るころには相当息切れしていた。


はぁ、はぁ、もう、だめだ・・・

み、みず・・・


ちょっとこの身体、体力無さ過ぎでは?

確かに異様なほど一段一段が高い階段ではあったが・・・

チートはどうなった?


そして昇り切った場所はファンタジーに出てくるお城の玉座の間のような場所だった。

ちょうど玉座の真後ろに階段はあったようだ。


ここは普通に光が差し込んでいる。


そして俺は自分の姿を確認すべく目線を下に向ける。


まず、髪。

さっきから気になっていたんだが、金髪で相当長い。下を向けば下に、横を向けば横に髪の毛も一緒にバッサバッサとついてくる。

次に服装。

やはり、というべきか、女性のドレスのような服装だ。

それもファンタジーアニメに出てくるようなけっこう装飾に凝った作りの紫色のドレスだ。

ゴスロリ?とかよくわからんけど、そんな感じにも思える。


肝心の顔は分からない。

鏡や、その代わりになるようなものはこの部屋にはないようだ。


せめて、イケメン顔であることを望む。


このような女装をさせられている以上、ザ・日本男児、というようなイカツイ面構えだとその場で吐く自信がある!ちなみに俺が考える日本男児とは、西郷どんのような凛々しい面構えを指す。


ちなみになぜ女装と考えたのか。

転生ものにはTSものもあるにはあるが、性別までは変わってないだろと考えた理由。

それは胸にある。

何も邪魔することなくつま先まで確認できたのだ。

ということは女になった、という線はないだろう。そういうことだ。

ちなみに靴もドレスに合いそうなヒールだった。

そんなに高いヒールじゃなかったのが幸いだ。

もしかしたら階段を駆け上がって死にそうになったのは靴のせいかもしれない。

そうだ、体力がないわけではないのだ。

なんせ、チートだしねっ!


まだ若干息が荒いままだが、現実逃避した俺はそれを靴のせいにする。

とにかく、確認できるのはここまでか。


しかし、華奢な体にされたもんだ。

イケメンを望んだのがイカンかったか。

最近の主流は草食系男子、女子より細いくらいの体躯に甘いマスク、確かにそんな風潮ではあった。


異世界であることを考えると、恵まれた体格を望んだ方が良かったかもしれん。

柔道100キロ超級の選手のような・・・


まぁなってしまったものは仕方がない。

女装姿なのは気になるが、まぁ甘いマスクならワンチャン女の子として認識されるかもしれん。

イカツイ面構えだったときは諦めよう。

その時は女装野郎のレッテルを甘んじて受けるのみだ。

そして、人里でちゃんとした男物の服装を手に入れよう。

金はないが、ドレスを売ればなんとかなるだろう。

わらしべ長者的な考え方だね。


そして俺は玉座の間を出た。


ここは、ほんとに城のようだ。

しかし、誰もいない。

無人の城、廃墟なんだろうか。

その割には傷んでいないが・・・


玉座の間から真っ直ぐに廊下を歩いて行くと、下りの階段を発見した。

ここも一段一段が高いな。

思えば玉座の間や廊下の天井もやたらと高かった。

廊下のわきに備え付けられているさまざまな調度品にしてもそうだ。

全体的にビッグサイズなように思う。

巨人族(いるのか知らんけど)の城だったのか?


先ほど昇った階段よりは少ない段数を下り、またしばらく廊下を進む。


そしてようやく城の外に出た。

今日は快晴だったようで、森の中に佇む古城にも暖かな陽の光が差し込む。


「ぎゃあああああああーーーーーーーっ!!」


全身を刺すような痛み、焼かれるような熱さを伴ったソレに俺は思わず絶叫する。

やたらと高い声が出たがそんなことを気にする余裕もない俺は地面を転げまわる。

ドレスも髪も、砂まみれになるが知ったことじゃない。

とにかく痛い、そして熱い!

なんだこれは!?

さっそく何者かの攻撃を食らってしまったのか。


しばらく転げまわった後、徐々に痛みがマシになってきたので俺は立ち上がる。


「ぐっ!」


陽の光が当たった瞬間、またあの痛みを感じて思わずしゃがみ込む。


原因は、陽光か?

この世界、紫外線が強すぎる?

まさか、人類が生きていけないような環境になってしまっているのでは?


城から出た場所が森で良かった。

ところどころ陽光が地面に降り注いでいるが、多くは木々で遮られているようだ。


俺は先ほど日光を浴びた左腕を見る。

真っ白な腕はところどころ焼けただれたようになってしまっている。

けっこうな重症である。


これはヤバいな。


こういう時、どうするか。

数あるファンタジー作品を観てきた俺の知識をフル稼働する。


ヒール、だ。

ヒール的な何か、回復魔法のようなもので傷を癒す。


これしかないだろう!!


しかし、出来るのか。

女神に魔法適性は全属性を望んだが、すでに使えるものはあるだろうか。


『ステータス』、とか確認できれば良いのだが・・・


『ステータス』を表示します。


頭の中に声が響いた。

え?まさかの便利仕様?さすが女神さまっ!


おれは腕の痛みも忘れて興奮しながら画面をのぞき込む。

なお、ステータスは体の前方に突如出現した半透明状の板のようなものに表示されているようだ。


どれどれ・・・



【ステータス】

名前・・・未定

種族・・・ヴァンパイア

性別・・・女

使用可能魔法・・・なし

使用可能スキル・・・血糸ブラッディスレッド

女神の祝福・・・魔力(極)、状態耐性(小)、魔法全属性適性、詠唱破棄、剣技(Lv.1)


・・・・・

ん?

いろいろツッコミどころ満載なんだが・・・


まず、ヴァンパイアって?

それで日光でダメージを食らったのか、納得ではある。

そして、性別、なんで女?

てか、下見た時、胸ナカッタヨ?


それにどこにチート要素が・・・?

魔力(極)は凄そうだが・・・

まぁ全属性に適性があったり詠唱破棄も凄いんだろう。

これがチートってことか?


しかし、なんだ、使用可能スキルの血糸って??

血糸、ちいと、チート。。。まさかね?


俺は思い出す。

あのロリの言葉を・・・


『む?それが望みか?血糸はあくまで種族が持つ固有能力の一つじゃ。他に剣でも槍でも鎖でも作れるじゃろ。』


これか、確かに言ってたわ。


しかし、勘違いにもほどがあるよね?

俺が悪いんか?


・・・・・


そして性別、やはりこれは納得できん。

なぜ、女にされたのか、そして年齢、0歳からって言ったのに。

見た感じ幼そうとは言え、10歳前後ではあろう。

どう考えても0歳ではない。


まぁ今更どうこう言っても仕方がないか。

今は痛む腕と、日光があるうちは移動は出来ないだろうから、これからどうするかを考えねば。


そして俺は城へ戻りこれからのことを考えるのだった。

答え合わせ


女神デルメゼ

「ん?なぜ女にしたかじゃと?お主、自分で容姿端麗にせよと申したではないか。ヴァンパイアは男は醜悪な面構え、女は美女と決まっておるのじゃ!それに年齢も合っておる!魔族は親から誕生するものと魔力溜まりから誕生するものがおるのじゃ。魔力溜まりから誕生した場合はある程度成長した身体をもって生まれるというだけのこと、お主の年齢はまぎれもなく0歳じゃ。」


この答えが彼女に届くことはなかった。

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