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【改訂版】夢のつづきを見にいこう  作者: 羽藏ナキ
第三章:恋する少女

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熱愛発覚

 わたしは家に帰り着替えてからすぐにポータブルテレビを起動させた。今日は宿題がないからゆっくりと自分の時間を過ごすことができる。撮り溜めたアニメを観た後は、ユーチューブを開いた。ユーチューブではスガッチが出演している男性アイドルグループのアニメの曲を聴いたり、スガッチが生出演している番組を見たりする。最近の声優はキャラクターに声をあてる以外の仕事も盛んだ。スガッチもつい最近アーティストデビューをして、数曲オリジナルの曲を歌っている。近い将来、単独ライブをすることもあるんだろうな。もし参加できたら、生でスガッチの姿を見て声を聴くことができる。いいな、そんな未来が来てほしい。でも……。


 わたしはふと、考えた。もしもスガッチがライブを開く未来が来たとして、わたしは参加できるだろうか。チケットが当たる当たらないの話じゃなく、お母さんが許してくれない気がする。あなたにはまだ早い、と、いつも頭ごなしにダメと言うお母さん。わたしはいつになったらお母さんの監視から逃れられるのだろう。

 お母さんへの不満を覚えると、引きずられるように今日の学校での出来事も思い出されて、わたしはため息をついた。今日だけで何回ため息をついたか分からない。窮屈だ、とても。

 嫌な気持ちを振り切るように頭を振り、わたしは再びユーチューブに集中した。検索ボックスに『スガッチ』と入力し、動画を探す。ひとつの動画から関連動画を渡っていく。そうしてアニメの切り抜きや主題歌、ラジオの文字起こしを見ていく中で、目を疑うタイトルの動画があった。


『人気若手声優スガッチこと菅原潤 熱愛発覚!?』


「なに、これ……」


 わたしは声が出なかった。

 嘘……。スガッチ、嘘だよね……?

 わたしは震える指で動画をタップした。確かめるのは怖いけど、見てみぬフリはできなかった。


 動画は投稿主がスガッチに関わる素材画像を貼りながら熱愛報道について淡々と説明していくものだった。本題に入り画面に貼りつけられた一枚の写真を見て、わたしは絶句した。その写真は今日発売の週刊誌に取り上げられたもので、女性と手をつなぎながら笑顔で買い物をするスガッチが映っていた。別のアングルから撮られた何枚かの写真も同じ。楽しそうにしている二人を見て、わたしは胸が締め付けられた。

 女性はいわゆる一般女性だった。同じ声優仲間でもなく著名人でもない一般女性。週刊誌の写真でも女性の顔はモザイクで隠されていて、黒髪で落ち着いた服装をしたその人は街中ですれ違っても分からないような雰囲気だった。

 わたしが最も動揺したのは、今回の報道に対するスガッチの所属事務所の回答だった。週刊誌の取材に対し、所属事務所は「プライベートは本人に任せています」と回答した。それはもう容認しているのも同然だ。スガッチはこの件に関してまだなにも言及していない。

 動画の終盤はSNSでのファンの反応が載せられていた。ほとんどがわたしと同じように、信じられない、とショックを受けているものだった。動画のコメント欄も同じだった。みんなまったく予想していなかったのだ。


 わたしは動画を見終わった後、すぐに一階に降りて家族共用のパソコンを開いた。さっき見た動画の内容が全部嘘の可能性だってある。わたしは『スガッチ 熱愛』と検索した。すると、わたしの願いとは裏腹にたくさんの記事が出てきた。個人のまとめサイトから週刊誌や情報誌の公式サイト。ブラウザでSNSを開いて検索すれば、たくさんの生の声が溢れてきた。

 目の奥がカッと熱くなり、わたしは急いでパソコンを切って部屋に上がった。布団を頭までかぶるとぽろぽろと涙がこぼれてきた。なんでこんなことになったんだろう。せめて……。せめて、相手が有名人だったらよかったのに。そしたら少しは諦めがついて、ショックも少なかったかもしれない。お似合いのカップルだって祝福できたかもしれない。

 まるで悪夢だ。夢なら早く覚めてほしい。そう思ってハッとした。そうだ……! 夢!

 わたしは鞄からファイルを取り出し、一枚の紙を引き抜いた。今日、夢野さんのお店で書いた紙。夢の内容は『スガッチとの新婚生活』だ。これがあれば、わたしがスガッチの隣にいられる。スガッチがわたしの名前を呼んでくれる。

 わたしは急いでお風呂に入り、着替えを済ませてから紙を枕の下に置いて布団をかぶった。


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