一家団らん
ゆっくりと目が覚めるような感覚を覚えた。数回まばたきをすると、ぼんやりとした視界がはっきりとしてくる。目の前には見慣れた家の天井があるが、言葉では言い表せない違和感があった。
これは、現実じゃない。夢だ!
直感的にそう思って俺は勢いよく起き上がった。隣に目をやると、あの頃のようにもう一枚布団が敷かれている。まさかと思いながら、恐る恐る寝室からリビングに出て、俺は目を疑った。
そこには里美と美央がいたのだ。美央は二歳くらいの頃だろうか。二人とも俺に気づくと声を揃えて笑顔で「おはよう」と言った。美央はまだ舌足らずなところが懐かしくて愛らしい。
美央は「おとーさん」と言いながら俺の足に抱きついてきた。俺はかがんで美央の頭を軽く撫でた。さらさらとした髪の感触とほのかに温かい体温が心地よい。夢だから感触や体温なんて分からないはずなのに、本当にあの頃の美央に触れているような気がした。
里美が用意してくれた朝食を三人で食べた後は家で美央と一緒に過ごした。テレビを見たり、お人形遊びをしたり、お絵かきをしたり、俺にとってとても濃密な時間だった。
遊び終わってからは車を出して三人で買い物に出かけた。日用品の買い出しを済ませて、それからファミレスで夕食をとった。出てきたハンバーグに目を輝かせている美央を見てつい頬が緩んだ。ファミレスの帰り、お腹がいっぱいになって眠くなったのか美央は車の後部座席でウトウトしていた。その様子を見て助手席の里美と微笑み合った。
家に着いてからは美央を寝かせるために一緒にお風呂に入った。それまでうつらうつらとしていた美央もお風呂の中では水遊びにはしゃいでいた。しかし、お風呂からあがってからは遊び疲れたのか再び眠たそうに大きなあくびをした。
着替えと歯磨きを済ませて、俺は美央を寝室へと連れて行った。同じ布団の横に美央を寝かせ、電灯を薄明かりにする。頭を撫でると美央は安心したように目を瞑り、やがて寝息を立て始めた。
その様子をしばらく眺めていると入れ替わりで風呂に入った里美が寝支度を済ませて寝室に入ってきた。
里美は隣の布団に横になると、すやすやと眠る美央に優しい眼差しを向けた。二人でしばらく美央を愛でるように眺めた後、里美がそろそろ寝ようと俺に目配せをして電灯を消した。
目を瞑ると夢の中のはずなのに、眠たくなるような不思議な感覚になった。もう終わりということなのだろうか。もっと浸っていたい気持ちがあったが、意識はどんどん沈でいく。
そのまま深い眠りにつくように、意識はさらに奥深くへと沈んでいった。




