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第陸話 集合

「隼!忘れ物ない?小町がチェックリスト作ったからコレで確認して欲しいの!」


「大袈裟な、基本的な物しか入れてないって」


氷川の本拠地に荷造りしたボストンバッグを持って来た隼は小町にタブレットを渡され、ざらっとその一覧を見ていた。

その様子を山岸と青葉は見守っている。


「...の割には随分とバッグがパンパンだな。というか角ばってないか?着替え入れてるならそんな風にならないだろうに」


「末っ子君、案外心配性だからバッグにも色々詰めちゃうのよね。でも、こうなるのも無理ないわ。また、新しい問題が生まれたんだもの。確か、夜九時に洛陽に集合だったかしら?良いわね、Dr.黄泉に連れて行ってもらえるんでしょう?他の皆さんと楽しんで来てね」


ボストンバッグには沢山の武器を詰め込んでいたようだ。

小町にも手伝ってもらい、隼は使う物と使わない物で分けている。


「どうなんでしょうね?案外、騒がしい夜になりそうだ。こっちはまだ、穏やかな物ですけど。何があるかわからないんで、用心してくださいね。何かあったら、此方にでも近くの運び屋にでも連絡しますから」


隼の言葉に山岸と青葉は目を合わせた後、真剣な表情で頷いた。

この比良坂町で一体何が起きようとしているのか?

それは誰にも分からない。ただ、今の自分達に出来る事は敵対勢力に警戒されず、この休暇を楽しむ。これしかないだろう。


隼は黄泉の協力の元、洛陽に向かうが既に望海、瑞穂、剣城がおりカフェでコーヒーを飲んでいるという状態だった。

望海と剣城は此処の担当場所なので馴染み深く、瑞穂も近くの小坂担当なのである程度地理を把握しているのだがいかんせん、緊張感がない。


ガラス張りの外装の為、会話内容は聞こえないが普通に楽しそうに会話しているのを見て、隼は軽蔑の眼差しを向けながら輪の中に入りたいような入りたくないような不思議な気分だった。

そんな時、彼の肩を叩きながら黄泉が口を開いた。


「僕も久しぶりに人を運んだからね。疲れてしまったよ。隼君、一休みしようか?」


「まぁ、貴方が言うなら。と言うか、皆いつもの格好じゃないんだな。望海の洋服姿を見るのも初めてだ。完全にオフだな」


2人が近寄るとまず最初に望海がやはり育ちが良いのだろう。優雅に手を振っていた。


隼の言うようにいつもの袴姿ではなく、グレーのブラウスに青いスカートを着用している。

夜間という事もあり、暖房の為かダークグレーのコートを着ているようだ。

しかし、八月。夜間とはいえ、着込み過ぎではないかという印象を隼は覚えた。


「こんばんは、隼さん。銀河君はこの後、定刻に来られるそうです。私達が先に来すぎてしまって。一回此処で休憩をと思って。あっ、そうだ。良かったら豚まん食べます?4個入りなので、皆さん一つずつ召し上がっていますし。肌寒いですから、こう言うのが恋しくなるんですよね」


そう言って望海は豚まんの入った赤い紙箱を隼に見せているようだ。

隼は見た事がないと戸惑っているようだ。

無理もない。参区の名物とはいえ、壱区では馴染みのない物なのだから。


「大丈夫、希輝のお墨付きだ。壱区の人の舌にも合うだろう。何で向こうにないのか疑問に思うレベルだ」


これも一種の冒険だと、隼は豚まんを手に取り口に入れる。

すると気に入ってもらえたのか?夢中で食べているようだ。

そんな中で瑞穂はこのような会話をした。


「ねぇ、隼君!二人ったらね、酷いのよ。「綺麗な景色をご紹介します」「良いトレーニングになる」って私を近くの長い階段まで連れて行って、二人は先にエスカレーターに乗って上に行っちゃうし。帰りも「エスカレーターでゆっくり下りて行った方が景色を堪能できますよ」って望海ちゃんに言われて、全部下まで吹き抜けになってる所をエスカレーターに膝を笑わせながら私は下りて、二人はエレベーターで先に下まで下りて行ってるのよ?」


「君達二人は一体何をしているんだい?俗に言う深夜のハイテンションにも苛まれてるのかな?担当場所で遊ぶなんて」


黄泉の呆れながら言う言葉に剣城は真顔で、望海は照れながらそれぞれこう言った。


「洛陽の洗練だ」


「そ、そうですよ!べ、別に退屈してたとかじゃないんですからね!構って欲しいとかじゃないんですよ!」


望海が要らないツンデレを発揮する中、隼は何かに気づいたようだ。

全体的に、着膨れしているのか?望海の身体が大きくみえる。


「望海、なんか太っ...成長した?立派になった?」


状況的に太ったと言われても仕方ないのだが、その言葉に望海は目を見開き。同じく照れた表情をした。


「流石、隼さん。目敏(めざと)いですね。これでも武器は厳選したつもりなんですけど、皆さんに何かあったら光莉や児玉さんに顔向け出来ませんから。コートに武器を仕込んでいるんです。袴姿でそんな事するのは違和感も凄いですし、光莉も当日は同じく洋服姿で行くみたいですよ。珍しい格好が見られるかもしれませんね」


そんな風に談笑していると周囲の反応が騒がしい。

無理もない。洛陽で普段は見られないような運び屋達が揃っているのだから。


「あっ!ドクターよみだ!ぼくとしゃしんとってください!すごい、しゅんもいる!カッコいい!」


「ありがとう、少年。僕と出会えた事は何よりの幸運だからね。しかし、隼君もそうだし。皆は今、プライベートなんだ。写真やサインは僕が引き受けるよ」


そのあと、黄泉はカフェを出てファンサービスに没頭しているようだった。

それとすれ違うように苦笑いを浮かべながら、一人の少年が来た。

空や海にも似た瑠璃紺色の学生服とその帽子、首元を纏うように星やその軌道が散りばめられた、マフラーが印象的だ。


「流石、Dr.黄泉。凄い人気だ。皆さん、お早い到着で何よりです。この僕、今西(いまにし)銀河(ぎんが)のツアーにご参加頂きありがとうございます。夜間専門の八雲さんや瀬璃菜さんに比べればまだまだひよっこですし、風間様のような華やかさはありませんが、様々な方が満足して頂けるような多様性のあるプランを今回は考えさせて頂きましたので、きっとご満足してもらえると思います」


銀河の挨拶に皆、笑みを浮かべるが望海は少し遠慮がちにこう言った。


「同業者ですし、お互い気楽に行きましょう。少し、私達の方も生田まで下見をして来まして。少し気になる場所が」


望海の言葉に銀河も頷き、彼は自分の担当場所でもある参区の地図を皆が使っていたテーブルの上に広げる。


「この、一年半のうちに比良坂町は様変わりしています。道を知り尽くしてる運び屋達でも対処出来ない程に。真相究明の為にも、皆さんの協力を仰ぎたい。望海さんの言う通り、生田の異国料理店付近に謎の建物が存在しているんです」


瑞穂も同じく生田を担当しているということで地図を指差しているようだ。

彼女の考えによれば、肥前と生田そして都築にはある共通点があると言う。


「此処ら辺って、異国の文化が集まりやすい地域なのよね。もしかしたら、他所の文化や宗教が根付きやすいのかも。是非、隼君や剣城君の意見も欲しいわ。自分達の担当場所って違和感に気づき難いし」


その言葉に隼と剣城は頷き、準備は出来ていると言った様子で立ち上がる。


「まさか自分の担当場所以外も足を運ばされるとは。まぁ、でも。母さんも引退してしまったし。二代目、彼女の息子として比良坂町を守らないと、じゃあ移動しよう。頼めるね?」


隼は銀河に目配せし、五人は最初の地点。生田へと向かった。

望海と剣城は京都駅で遊ばないでください。

京都駅って市内でも京都タワーと一緒に景観保護条例の対象外という事で高い建物にしても良いとなっているせいか、思いっきり駅としては珍しい10数階の建物になっているんですよね。

京都駅がというよりは周囲の百貨店や商業施設がという状態ではあるんですが、作者は中央口の側、ミスドの側でも良いんですかね。


あの長い階段とエレベーターが凄い苦手なんですよ。

高所恐怖症気味なのもあるんですが、東京スカイツリーとか展望台のような極端に高い所なら良いんですが、吹抜けになってて上から下が見える場所がまぁ苦手ですね。膝が笑ってしまいます。

そのまた更に空中回廊みたいなのもあるようなんですが、ちょっと自分は遠慮しておきます。


・伝統的にクトゥルフ絡みの集合場所はサイゼと相場が決まっているんですが、今作はスタバみたいです。

因みに、京都駅で抹茶フラペチーノを飲んでも特別な事はありませんでした。作者、全然地元のスタバもそうなんですけどカフェを5年近く使ってないですね。

今年は秋田、福井、新宿のスタバ。

鳥取のスナバコーヒー、和歌山のタリーズコーヒーしか行ってないです。

移動費で一年分の飲み物代になってると思いますけどね。


・望海の服装ですが現在は山陽新幹線のこだまで使用されている500系をモチーフにしています。

ただ、500系には欠点があって先頭車両に関して現在のN700系は降車ドアが前後で2つ存在するんですが500系には一つしか存在しないんですよね。

これが、沢山の乗客を抱える東海道新幹線には相性が悪くてダイヤ乱れの原因になりやすく、特徴的なロングノーズの影響で席数が少なく利益が回収しにくいという問題がありました。


ですが、デザイン性が素晴らしく今尚人気のある存在ですね。

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