表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
53/71

第伍拾参話 月と真珠

「失礼、富士宮様でいらっしゃいますか?私、肥立財閥の役員をしておりまして。是非、お話しを伺えればと」


丁度良い所に自分から富士宮に声をかけて来た男性がいた。

名刺を手渡され、内容を確認した後。隼に渡した。


「お話とは何でしょうか?この富士宮の当主にお聞きしたい事でも?」


しかし、男性は隼を見ると口を噤んでしまう。

それを察した富士宮はこう言い返した。


「若者だからと侮られては困ります。私と彼は未来を約束した身。彼抜きに話すようでしたら、お引き取りください」


「噂には聞いておりましたが、傲慢な方のようだ。貴女のような方なら、権力者と結婚してその子を愛人にでも据えておけば良いのに。富士宮家もここまで落ちぶれましたか」


その言葉に富士宮は怒り心頭するものの、冷静な隼の手助けにより冷静さを取り戻した。


「咲耶さん、俺なら大丈夫ですから。ありがとうございます、俺の為に怒ってくれて。ある程度言われる事は覚悟出来てますから。逆にこの状況を利用しましょう」


「利用?隼、どうするつもりだ?」


そのあと、隼は静かに微笑んだ後、役員に対してこんな質問を投げかけた。


「自分は音楽の才能を彼女に買って頂いて、楽器の購入をしてもらったり。投資をしていただいて、可愛いがって頂いてるんです。...まぁ、その代価はお察しの通りなんですけど。富士宮家って権力も金もあるでしょう?俺は比良坂町で1番あると思って彼女に近づいた。でも、役員である貴方がこうして彼女に近づけるという事はそれなりの地位にいるという事ですよね?」


隼は微笑み、向こうに期待をするような目を向ける。

自分は音楽の為に彼女に近づいた青年という役柄に転じたようだ。


「がめつい若者だ。そこまでして金が欲しいのか。良く覚えておきなさい。富士宮家は確かに366億もの資産を保有しているが、我が肥立財閥の経済規模は2000兆にも及ぶ。格が違うのだよ。此方と貴方達とでは」


その言葉に隼は二重の意味で口をあんぐりさせた。


「...凄いな。それならオーケストラで使う楽器どころか、ホールそのものが買えてしまう。富士宮家が可愛くみえますね。俺も財閥の一員になりたいです。どうすれば良いですか?」


隼が子供のように質問を投げかけると、露骨に嫌な表情をされた。


「お断りだ。お前たち、黒蜥蜴の一員だろう。富士宮家の当主だから良い顔しているものの、仕事でなければ話すだけでも虫唾が走る」


「あぁ、そうだ。私との会話が仕事と仰るなら要件をお聞かせください。手短に済ませましょう、いま此処で」


この話の流れであれば、隼も話の輪に入れるだろうと思った富士宮は澄ました表情でそう言った。

彼女の狙い通り、男性は口を開くものの辿々しく小声で言うが隼はその話を拾えているようだ。


「...我が肥立は長年。瀬良や三枝と対立関係にある。お前達黒蜥蜴は協会とは表の顔で、裏では奇妙な事件の解決をしているそうではないか?その異能力で、我が肥立救って頂きたい。富士宮の号令があれば、人は動く。そうだろう?」


相手の疑問に対し、富士宮の方が首を傾げてしまう。

しかし、隼が凛とした表情と佇まいでこう言った。


「何か勘違いしてないか?俺達の主は彼女ではなく、殿。朝風暁、その人だ。彼女は彼の秘書。組織図も知らないのか?何の下調べも無しに、彼女に接触を図るなんて失礼極まりない。彼女の実家は開祖である以上の意味を持っていない。咲耶さん、行きましょうか?話にならない」


辛辣な言葉を並べ、一気に立場が此方有利に傾いた。

ここで富士宮は男性を庇うような言葉を並べる。


「隼、そんな言い方はよしなさい。実は彼は、先程話しに出た朝風暁の子孫でして。とても彼を尊敬しているんです。だから、こんな言い方になってしまった。実際、富士宮家は権力集中を良しとしていません。なので朝風傍系の御三家等に会長職をお願いしております。もし、ご用件があるのでしたら其方の方に」


「...ややこしい組織だ。作った物の知能を疑う。富士宮家は権威は持っても権力を得ていないという事か。通りで若い男侍らせている訳だ。では失礼させて頂く」


そのあと、役員の男が立ち去ると富士宮は悲しげな顔をしながら隼を見つめていた。


「本当に申し訳ない。私は何も分かっていなかったな。君は私の大切な相方の息子で。君は私の事をこんなにも思ってくれているのに、外から見たらそんな純粋な関係に見えないんだな。それでも君は私の側にいてくれる。とても、頼もしかった。かっこよかったよ」


富士宮は笑顔で隼の手を握っている。

彼もホッとしたのか?笑みを浮かべているようだ。


「ありがとうございます。でも、こう言う演技が出来るのは信頼関係の土台があるからで俺が咲耶さんに少しでもそんな素振りがあれば出来ない事ですから逆に誇りに思っても良いと思いますよ」


「何言ってるんだ、澄ました顔して!実際に楽器をねだってたのは本当じゃないか!?しかも、総資産まで知られてしまったし。チェロとヴァイオリン両方買えと言われそうで怖かったよ」


「えっ?買ってくれないんですか?...まぁいいか。ピアノは弐区の別邸に設置してもらったし。練習しないと。でも、確かにこんな関係じゃ婚約者とは言えないか。咲耶さんと俺は平等じゃないと。...ちゃんと対価払った方が良いですよね?」


「良いよ、別に!先行投資、出世払いと思ってくれれば良い。若い子は直ぐそうやって何か対価を支払ったり、得ようとするが本質は違うんだよ。私達大人はね、羨ましいと思ってるんだ君達の時間が。若い頃にはもう戻れないからね。そんな若者の未来を壊したいと願う大人達がいる事を良く覚えておきなさい。私は出来るだけ隼に若い頃に良い経験を積ませてあげたいと思ってる。君の望む事を叶えてあげたいと思ってる。勿論、限界はあるがな。まぁ、私の事はもう1人の母親と思ってもらえれば良いんじゃないか?」


しかし、隼はその言葉に首を傾げていた。

それと同時に彼女も首を傾げる。


「母親ですか?俺、咲耶さんを頼もしいと思った事はありますけどそんな風に思った事は一度もないです。なんでしょう?青葉先輩はやっぱり、母性というか母親のような物を俺とか颯先輩に与えてくれるなと思いますけど。貴女は俺を導いてくれる存在というか、目標と言った方が良いんですかね?そう、志しみたいな。以前、貴女が言ってくれたような心の中に聳え立つ志し。俺の心の支えになってくれる人。そんな風に思ってます」


「...あぁ。父上が言っていた言葉の意味がようやく分かった気がする。ありがとう、隼。私にも見えるよ、大きな志しが。君にとって私がそう美しく見えるのならこれ以上の物はない。どうか君の富士宮咲耶で居させて欲しい。結婚してくれないかな?」


「...咲耶さん。あの、ちょっと。ここは公共の場所なので返事はまた今度。嬉しいです。とても嬉しい。そうだ、夜の貴女には真珠が似合うと思うんですけどダメですかね?やっぱりダイヤモンドが良いですか?」


「あぁ、そうか。真珠なんて頭になかった。隼、君はやっぱり変わり者だ。でも、そんな君が愛おしいよ。婚約指輪は真珠にしようか。...ずっと、真夜中の私を嫌いだと思ってた。美しくないと思ってた。でも、月夜に照らされる私も悪くないかな」

相変わらず、この2人はイチャイチャしてますけど一応パールとかダイヤモンドというのは有名だと思いますが太陽が富士山に重なる現象をダイヤモンド富士と言うんですね。

その対として満月が富士山に重なるのがパール富士となっています。後者の方が、発現回数が少ないようですね。

作者もパール富士は余り聞いた事がなかった単語ですね。


一連流れから、夜の貴女が好きと隼が言っていたので真珠を選びました。元ネタは寝台列車ですしね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ