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第壱話 覚醒

相変わらず懲りないですね。鉄道に対して歪んだ愛を持つ変態が帰って参りました。

今回の大きなテーマは「私鉄&観光列車」です。各地方に著名な観光列車、ありますよね。

小さなテーマは「社員旅行(冒涜的)」です。運び屋達に休息など存在しません。

あの二つの帝国での出来事は、運び屋達に衝撃を与えた。

しかし、そんな中で望海や光莉を始め。

晴れやかな表情をする者達もいた。

改めて、運び屋という存在を理解し。新たな可能性を広げる事が出来たからだろう。


問題は山積みだろうが、それでも尚。

望海は前向きに捉えているようだった。


「パパ、だいじょうぶ?おやすみしなくていいの?」


夢の中では数週間を過ごしたが、現実世界での時間の経過はあまりにも遅く七、八時間程。

多少何処ではない疲労を抱えながらも、仕事をこなさなければならず皆、大変な一日を終えた。

望海達も夜、喫茶店に戻り。賄いの天むすを食べているようだった。


幼稚園に行き、父親と同じく昼寝をしていた零央から労いの言葉を児玉は投げかけられているようだ。

しかし、素直で聞き分けの良い零央でさえ。

昼寝が出来ず、怪獣のおもちゃで遊んでしまうなど睡眠の必要性に以前から疑問を持っていたようだ。


児玉も自身の肩や腰を叩きながら、此処は素直に疲れた表情をしているようだ。


「いや、今日は流石にパパも疲れたよ。二人も、ご苦労だったな。旭から聞いたぞ、向こうでも大変だったらしいな」


「本当だよ。望海なんて夜勤までしちゃってさ。まぁ、でも楽しかったよね。環境が変わっても関係性が変わっても私は私なんだって思えたし。未練だったり悔しい気持ちもあるけど、まずは皆んなで無事にこの困難を乗り越えられた事に感謝しないと」


「そうですよね。でも、月下美人が手がかりになるとは思いませんでした。隼さんは颯さんの本から知ったようですが、私達はほぼノーヒント状態でしたし。それを思うと、夜出歩くのも悪くなかったというか。非日常感を味わえた事や野師屋様に出会えた事は私にとってかけがえのない宝物です」


その言葉に三人は頷くが零央は珍しく不機嫌な顔をし、頬を膨らませている。

子供故に夢の中で仲間達が大冒険をしていたのだと純粋に思っているようだ。


「いいな、れおもあそびにいきたい!パパ、つれてって!」


「そうだな、動物園はどうだ?遊園地とか?」


しかし、零央は首を横に振った。そのあと、満面の笑みでこんな言葉を口にする。


「れおね、おてらにいきたいんだ。おまいりするの!」


「零央君、渋い趣味持ってるな。確か、大和の方に立派な寺あったよね?玉ちゃん、連れて行ってあげなよ。というか、零央君は自分で移動出来るもんね。いいな、私も温泉とかさ。偶にはゆっくりしたいよ。動物園も良いよね、馬とかも可愛いし。良いリフレッシュになるしさ」


その言葉に望海は少し考えながらも柔らかな笑みを浮かべながら頷いた。

いつも真面目で、仕事熱心な彼女だが今回ばかりは自分に甘くあろうという思いがあったのかもしれない。


「確かに、私達は元々多忙だったので良いんですが。他のグループの方々はいきなり行動範囲も仕事も増えて休息を摂る事のも難しいんですよね。いっそのこと、全体で旅行計画を立てて仕事に支障がない範囲で皆さんで変わり番子に休むのは如何ですか?各々が好きな場所を巡るとか?」


その言葉に光莉と児玉も良い案だと、笑みを浮かべていた。

それは敷島邸で通話をしていた節子も同じ事を考えているようだった。

現在の比良坂町では目紛しい発展を遂げたお陰で、携帯やパソコンなどの電子機器が充実している。

その為、黄泉や愛の計らいにより肆区の電波障害は原因究明も出来た事によって二人は携帯用の発信機を発明し瑞穂などの肆区の運び屋達にそれを渡した。

これによって、比良坂町での運び屋の環境も次第に整えられていくだろう。


あれから節子達は手紙のやり取りから、ビデオ通話へと手法を変えて頻繁に連絡を取り合っている。

今日も三人仲良く、会話をしているようだ。


「どうだい、お嬢さん?私がオススメした肥立(ひだち)製のノートパソコンは?結構使いやすいと思うのだけど」


「えぇ、お仕事でも使わせてもらってるわ。オススメしてくれてありがとう。流石は三大財閥の製品ね。感謝しないと」


比良坂町がこうして急成長を遂げられたのは肥立、瀬良(せら)三枝(みつえ)と言った三大財閥のおかげと言っても過言ではないだろう。

あの怪物の騒動から一転、比良坂町が安全な場所だと分かるとこのグループ会社は直様介入を始め都市開発を着実に進めて行った。

本社は別のようだが、各自支社を比良坂町に持っている。


しかし、どうしたことだろうか?

実は運び屋とこの三大財閥は険悪な関係にある。

亘はその事を話し始めた。


「しかし、皮肉な物だな。僕達御三家は勿論、運び屋達もこの財閥の皆さんに嫌悪感を抱かれているようだ。じっちゃんが言うには産業の違いじゃないかって言っていたね。彼方は物理的、科学的な工業に対して此方は異能力者の集団だ。向こうから見たら不気味にも思うだろう」


「そうだね。実は先日、肥立財閥の副総裁にお会いした事があるんだ。仕事の都合で一カ月程滞在されるとの事でね。表ではにこやかに接してくださったけど。裏で私の事を「(くろ)蜥蜴(とかげ)」だと言っていたと御堂が言っていてね。なんでも他の運び屋にもそう言っているらしい」


その「黒蜥蜴」という不気味な単語に節子は反応した。

話的に運び屋に対する何かの差別用語にも見える。

何かの隠語なのかもしれない。


「蜥蜴って蛇の仲間よね。尻尾を切る姿も見た事あるわ。...もしかして、あの大鯰を海に流したからそういう風に言われてるの?私達が大鯰を外に逃して切り捨てたって。それはあんまりな話だわ、此方だって必死だったのに」


半年前、比良坂町の地下奥深くで謎の生物が潜んでいる事が運び屋達の調べで分かった。

その正体は全長四百メートルにも及ぶ大鯰であり、なんとか地底から引きずりだし海上へと誘導した。


それからと言うものの、比良坂町は穏やかな日常を取り戻したのだが、外の人間はそれを良く思っていないようだ。

自分達に被害が及ぶと思ったのだろう。

節子の言葉に二人は頷きながらも亘は悲しげな表情を浮かべながら溜息を吐いた。


「ただ、彼方さんは此方の状況を把握していないんだ。参入だって騒動が終わってからだったしね。皮肉を言われても仕方ない立ち位置にいる。そうだ、折角三人でこうして会話出来てるんだ。なにか楽しい話でもしないか?」


そういうと節子は嬉しそうに目を見開き、何かが書かれたノートをカメラに見せている。

パンダが好きなのか?そのイラストが表紙に描かれている物だった。


「そうなのよ!お二人にも協力してもらいたくて。皆さんが目覚めた後ね、普段話さないメンバーとまるで親友のようにお話をされていたの。これは良い兆しだと思って、今まで中々メンバーも揃わなかったじゃない?それに皆さん多忙の身だし、何処かで親睦を深めつつ休息をとってもらいたいなと思ってちょっとしたサプライズを計画したの」


嬉しそうに言う節子に瑞稀は釣られて笑い出し、クスクスと笑っているようだ。


「お嬢さんのちょっとは皆にとっては大きな事だと思うけどね。でも、御三家として皆への労いは大切な事だ。どうだろう?いっそのこと大規模に行かないか?他の運び屋団体にも協力してもらって、手軽な旅行プランを考えてみるというのは?」


「なら、バリエーションは豊富な方がいいだろう。僕の知り合いにも温泉宿に連れて行ってくれる運び屋がいるからね。声をかけてみるよ」


節子は自分の人脈などを確認しながらノートにまとめていく。

瑞稀や亘はアイデアを出し合っているようだ。


「参区は素晴らしい所だからね。お嬢さんの好きなパンダのいる動物園もあるよ。異国情緒溢れるリゾート地もね。最近、海に囲まれた土地だって分かっただろう?リゾート計画も複数持ち上がっていてね。観光客も多いんだ」


「素敵ね。そう言えば、壱区にも他の団体の方なのだけど期待の新人さんがいらっしゃってガイド職をしているそうなの。私も爺やにお忍びで連れて行ってもらった所も彼の担当で、食べ歩きとかも楽しそうよね。私も一緒に参加しようかしら?瑞稀さんやパンダさんに会いに参区に行くのも面白そうね」


いつも通り、好奇心旺盛な彼女に瑞稀と亘は嬉しそうに微笑んでいた。


「でも、考えとしては正しいと私も思うよ。今まで彼らは壁に囲まれて、隔たれていたせいで自分達の担当の区から出た事がない者も多いだろう。運び屋が集まる壱区は特にね。良い機会だし客人としておもてなしするのは如何だろうか?そもそも、それが役目の運び屋達だっている訳だからね」


「そうだな。では、後日意見をまとめた企画書を由布院(ゆふいん)に見てもらおう。そのあと、各自でプランを練ってもらってそのプランを瑞穂達や他の運び屋達に見てもらうと言う事で」


そのあと、節子達は通話を終えた。

その後日、望海達。各グループの代表者が協会に集う事になる。

新たな物語の幕開けとなった。

今作、肆ノ式ですが全13章構成を予定しております。

話数なんですが、不確定ではありますが約70話分になってしまうのではないか?と予想しています。

本編完結後は番外編3話+後書きで終了予定です。

そんなに書く事あるんか?って感じですよね。

なんかあるみたいですよ(他人事)

普段から、1話辺り2000〜3000文字を目安にして執筆しておりますので分割して話数が多くなっている可能性があります。

ですので、気長にお楽しみください。


相変わらずなんですけど、投稿日に遠出してました。

今回は四国に行って0系新幹線にそっくりなホビートレインを見る事が出来たので感激です。本命は別の場所なんすけど、特急列車が伊予西条駅に停車した際にチラリと見る事が出来ました。

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