表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/94

悪役令嬢、魔法戦

クレアはギレに指示を出して地雷を爆破させた。

だが、ついに敵の周りから地雷がなくなってしまう。


「さて、半数くらいは数を減らしたし、ここからは」


クレアは敵をじっと見る。

それから、悪魔のような嫌らしい笑みを浮かべた。


「ここからは、ただの殲滅戦になるわね」


そう呟いた直後、


ドォォォォォォォンッ!

と、爆発音が響く。


「ギャアアァァァァ!!!????」

「嘘だろ!?まだ残ってやがったのか!?」


敵を追う地雷がなくなったため地雷はもうないものだと考えたようだが、そんなことは無い。

幾つかまだ地雷は校舎の近くに残っているのだ。


「くぅぅ!!!」

「一旦ここで待機だ!」


敵は悔しそうに唸りながらも、その場に座り込む。

確かにすでにそこの地雷は爆発しており、攻撃もないため安全と言えば安全だ。


「ど、どうする?」


「わ、分かんねぇ。どこで爆発が起きるんだよ!」


騒ぐ敵たち。

彼らは爆発が起こって安全になった地域で、腰を据えて話し合っていた。


「……仕方ねぇ。今回ばかりは、一旦手を組もうぜ」


「……あぁ。そうするしかねぇよな」


お互い敵同士なのだが、今回ばかりは一時的に協力することに。

血湯と苦霞が初めて手を結んだ瞬間である。


ただ、そんな大事な瞬間にも興味を示さないのがクレア。

クレアは敵の姿を見ながら、


 ーー早くヤケになってツッコんできて、自爆してくれないかなぁ~。

とか、考えていた。


それから1分も経たないうちに、


「……よし!」

「やってやる!!」


話し合いがまとまり、やる気あふれる顔で敵が立ち上がる。

クレアはあくびをしながら、やっときたかと見下ろした。


「さぁて。詰めの作業ね」


「うおおぉおぉぉぉ!!!!」

「ハアアァァァァァ!!!!!」


気合いのこもった声で叫ぶ敵たち。

彼らの足元には、巨大な魔法陣が浮かび上がっていた。


彼らの発動しようとしている魔法は、大勢で魔法を発動する大規模魔法。

しかも、その中でも非常にたちの悪い、


「腐食系の魔法を選んだかぁ。これは予想外ね」


相手を腐食させる魔法。

敵たちは、クレアたちを校舎ごと腐らせてしまおうという考えのようだ。


「予想外だけど、利用できそう。今日の私は運が良いわ」


クレアはそう呟いて、校舎の中にいる友人たちの気配を感じた。

せわしなく動いており、大規模魔法にどう対抗するか考えているようだ。


「……ぇぇ……」


少しだけ声が聞こえた。

ハイロラが叫んだようだ。


その直後、せわしなく動いていた生徒たちが、一瞬動きを止め、一斉にまた動き出した。

 ーーさっきまでと違って行動に迷いがない。ハイロラも、以外と指揮とか出来るのね。


「うおおおぉぉぉ!!!」

「今だぁぁぁ!!!」


敵が気合いを入れ始めてから数分。

敵は魔法を発動させるようで、


「「「「『ラァァァァトゥンビィィィィイィィムッ!!!!!!』」」」」


ラートゥンビーム。

直訳すると腐ったビーム。


「腐らせるビームじゃなくて、腐ったビームなのね」


クレアが変なところで疑問を抱いていると、すぐに敵からビームが打ち出された。

ビームの色は泥のような色に緑やら紫が混ざっていて、非常に汚らしい。


「頑張って防いで欲しいわね」


クレアは自分の周りにだけ防御用の魔法を張りながら呟く。

すると、その期待に応えるように、


「「「「『リバァァァァァスバリアァァァァ!!!!!』」」」」


リバースバリア。

名前から分かるかも知れないが、防御用のバリアを張る魔法である。


ただ、他のバリアとは違って、この魔法のバリアには特徴がある。


「リバースバリアだと!?」

「くそっ!これじゃあ、たいしたダメージにはならねぇ!!」


敵は悔しそうに呟く。

彼らのビームは、確実にバリアを削っていて、


パリンッ!

バリアが砕け散る。


だが、


「再生しやがった!」

「くそぉ!!」


リバースバリアは、破壊されるとすぐに新しいバリアを生み出すという非常に面倒な力を持っている。

コレによって、破壊したとしてもすぐに新しいバリアが出てきて、敵は学園側に壊滅的なダメージを与えることが出来ないのだ。


「おのれぇぇ!!!」

「俺たちが力を合わせて使った魔法を良くも!!」


敵は顔を歪ませる。

だが、その言葉の節々からは諦めが感じ取れた。


「落ち着け!確実に腐食はさせられてるんだ!こうやってじわじわ追い詰めていくのも悪くはないだろ!!」


「そ、そうだな!」

「確かにそうだ!それなら、俺たちが全力で苦しませてやるよ!!」


声を掛け合いやる気を取り戻す。

実際、防御の魔法を使っていて、


「くぅぅぅ!!!」

「再生してもすぐに破壊されちゃう!」

「もっと強度は上げられないのか!?」


学園側は学園側で、悔しそうな声が上がっていた。

どうにか持久戦へと持ち込めているが、このままではじり貧。


せめて、バリアの破壊される速度をもう少しだけ遅くしたかった。

生徒たちはすぐに破壊されるバリアを見て、絶望に近い表情を浮かべている。


「だ、大丈夫だ!このまま持久戦に持ち込んで、相手の魔力切れを狙うんだよ!あんな強力な魔法がそう長く持つはずがない!」


ガガーラナは、そんな生徒たちを勇気づけるために言葉を出す。

その甲斐あってか、生徒たちの顔に少しだけ明るさが戻った。


「そ、そうだよな」

「あんな魔法が数十分も持つわけないよな」


「よし!他にも防御魔法を貼って、少しでも時間を稼ぐぞ!」


「「「おぉぉぉ!!!!」」」


やる気を取り戻した生徒たちは、自分たちの使える弱い防御魔法を各々発動させていく。

その結果、少しだけ破壊される速度が緩和される気がした。


「負けてたまるかぁ!!!」


やる気を漲らせ、全員が声を上げる。

そんな状況がかなり長い事続いた。


「くぅぅぅ」


唸るような声。

その声は、校舎の中や、敵の方でも聞こえた声だった。


そんな声が聞こえてきたのは屋上。

クレアのいる場所だ。


「くぅぅぅうぅ………ふあぁぁ~」


………あくび。

先ほどの唸るような声は、クレアが眠気に絶えている声だったようだ。


「暇ねぇ。ほんと暇だわ。早く魔力が切れないかしら?」


クレアとしては本格的に動くのは魔力切れが終わった後だと思っているので、今はまだ動かない。

ただ、そのため非常に暇なのだ。


「ねぇ。セカンド。暇つぶしに何かしない?」


「……のんきだな。お前は」


暇すぎて、護衛のセカンドを呼び出す始末。

のんきだなとは言いながらも、遊びに付き合ってくれる辺りセカンドは優しい。


だから、セカンドが優しいだけで、遊ぶ間セカンドの頬が赤かったのは気のせいなのだ。


ただ気のせいでないのは遊びの間に変化が起きていることで、


ドロドロドロ。

ガラガラガラッ!


だんだんと腐食していき、壊れていく校舎。

生徒たちも元いた教室から避難し、奥の方へ逃げている。


「あぁ。私たちの教室もやられたわね。私の私物回収しといて良かった」


腐れ落ちた教室を見ながら、クレアはそう呟いた。

クレアは教室が何かしらの被害を受ける可能性を予想していたので、事前に持ち物を持ち出していたのだ。


「……そろそろ、私も移動した方が良さそうね」


下の方の被害も見ながらクレアはそう判断し、少し奥の方へ移動する。

直後、


ガラガラガラガラ、ガシャァァァンッ!!!

クレアのいた場所が崩れ落ちた。


「危なかった」


クレアはあんまりそう思って居なさそうな声で言う。

かなり、校舎の被害が大きくなっていているようだ。


だが、その被害が出るのもここまで。

やっと、ビームが消えたのだ。


「ふぅ。終わっちまったか」


敵の1人が残念そうに言う。

ほとんど全員が魔力を使い切り、これ以上ビームが撃てなくなってしまったのだ。


「良いじゃねぇか」

「そうだぜ。大分削れたし、後は楽勝だろ」

「さっさと攻め入っちまおうぜ」


それでも、敵のやる気はかなりあった。

校舎に目に見えて被害が出ており、後は生徒や教師たちを殺しまわるだけ。


近くの地雷は校舎が崩れ落ちたときの衝撃で爆発していたので、自分たちが爆発をくらうことはもうないだろうという余裕もある。

敵同士だった彼らもすっかり打ち解けていて、今は協力して学校側に立ち向かえそうだった。


「よっしゃぁ!」

「やってやるぅ!!」


敵が大声を上げ、学校側を向く。

そして、歩き出そうという所で、


「ま、待て!」


「んん?どうした?」

「何かあったか?」


「な、仲間が倒れてる!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ