悪役令嬢、襲われる!?
「この棒を、敵の地面に突き刺したら、地中でも目印になって良いんじゃないかと思うんだ」
ハイロラは真顔で言う。
だが、
「敵の足元にそんなモノが突き刺せるのって、一体どんな状況なのよ」
クレアはあきれた顔で言った。
ハイロラも、流石に無理があったかと肩をすくめた。
「まあ、1つ使えなくたって問題ない。まだまだ選択肢はあるんだから」
ハイロラが下がる。
すると今度は、
「クレアちゃん!次は私だよ!私が考えたのは、コレ!!」
アンナリムが出てきた。
恋愛関係が得意なアンナリムが、戦闘面に使えるモノを考えられるのか不安だったが、その手の中にあるモノを見て考えを改める。
「それは、通信機?」
「そう!魔導通信機。コレを幾つか地中に埋めといて、足音が聞こえたところに敵がいるって分かるの!これは、元々埋めておかなきゃ行けないけないから、防衛戦の時くらいにしか使えないけどねぇ」
いくつも地中に通信機を置いておいて、音の聞こえた位置から敵を特定すると言うことである。
ーーあれ?結構使えそう?
「次は私の番ッスね」
アンナリムの次はギービー。前の物が良かっただけに、今度も少し期待が持てる。
その太い両腕には、巨大な機械が抱えられていた。
「え、えぇっと。ギービー?それは?」
クレアは頬を引きつらせながら尋ねる。
ギービーはその様子を不思議そうに見ながらも、良い笑顔で応えた。
「これは、地雷精製機ッス」
「じ、地雷?」
「地雷ッス。あの、踏んだら爆発するヤツッス」
ギービーはどこか誇らしげに言う。
ーーじら?何のために……って、もしかして、考えとしてはアンナリムと同じで、
「爆発したら爆発音が聞こえるはずッス。だから、その爆発音のしたところに突撃すればギレも上手く戦えるはずッス」
「な、なるほど」
確かに有効ではあるだろう。
だが、
「ただ、地雷設置した私はどうすれば良いの?」
クレアが訪ねる。
なぜか、尋ねられたギービーも不思議そうにして、
「どうするって、何が?」
「……私、地雷設置するときは何処にいるのかしら?」
「どこ?どこって、地雷で囲まれた安全なところ、に」
そこでギービーも表情が固まった。
地雷に囲まれた場所にいると言うことは、
「私、地雷を設置している間、外に出れないって事よね。というか、そんなに囲むように設置したら、私外に出られないじゃない」
「……そ、そうッスねぇ」
ギービーはがっくりと肩を落とした。
クレアはその様子に苦笑しながらも、
「ありがとうギービー。参考にするわ」
「そうッスか。なら良いんスけど」
そう言いながらも、落ち込んでいる様子は変わらない。
ーー考えて貰えるのは良いけど、この子たちの精神がかなり心配ね。
「じゃあ、次は俺だな」
今度はオシャレ好きの少年ガガーラナ。
次席で合格した優秀者であるので、クレアとしてはかなり期待しているが、
ーーガガーラナは私の相手をしてたから、あんまり考える時間なかったと思うのよねぇ。
あまり期待を大きく出来そうになかった。
「俺からの提案は、コレだ」
そう言ってガガーラナが取り出したのは、大きなシート。
カバーがしてあって、表面に直接触れられないようになっているが、
「何コレ?」
クレアはそのシートがなんなのかよく分からず首をかしげる。
その様子を見てガガーラナはにやりと笑い、解説を始めた。
「これは、粘着シートだ。触るとくっついて、身動きがとれなくなる」
「ふぅん」
ーーあの虫とかネズミを捕るときに使うヤツかしら?
クレアはそういう考えで納得した。
「それで?害虫でも捕まえるの?」
クレアはシートの活用方法を尋ねる。
ーー私は大丈夫だけど、アンナリムとかが虫は嫌がりそうだな。
「いやいや。害虫なんか捕まえてどうするんだよ。これは、戦いで使うんだ。敵をコレで捕まえて、コレと格闘している間に、地面から出てきてグサッと」
「ふぅん。なるほどねぇ」
クレアは納得したように頷く。
だが、次席ガガーラナ君の考えはこれだけでは終わらない。
「しかも、シートだから移動させようと思えばめくるだけ」
「お。それは良いわね。でも、相手もシートごと移動したりとかしそうじゃない?」
「チッチッチッ!」
ガガーラナはキザっぽく人差し指を振った。
ーーちょっとムカつくんだけど。
「このシートと地面は、魔力を流すとくっつくんだ。剥がせるのは、魔力を流した本人だけ。だから。敵に剥がされることはないってわけだ」
「ほぇ~」
「どうだ?」
誇らしげに胸を張るガガーラナ。
他の友人たちの欠点を改善するアイディアを出してきたわけで、誇る気持ちもよく分かる。
だが、
「それで?相手の位置はどうやって特定するの?」
「……へ?」
ガガーラナは間抜けな顔をした。
1番大事なところを考えていなかったわけである。
「へ?じゃないのよ。動けないとしても相手が何処にいるのか分からないと、攻撃しようにも攻撃が当たらないじゃない」
「で、でも、それは目視で、」
「1回見てから距離と方角を考えて潜れと?かなり正確に移動する必要があるわよ」
「………」
ガガーラナは黙ってしまう。
完全にお手上げのようだ。
「まあ、参考にさせて貰うわ。ありがとう」
「………………」
ガガーラナの提案が終わり、1周目が終わった。
そう。1周目が。
「よし。今度はまた僕だね」
1周目が終われば2周目が。
2周目が終われば3周目が始まるのだ。
約1時間ほどかけて、友人たちが交代でクレアに提案を行っていく。
コレまで作り上げてきたクレアたちの友情の力と言えよう。
ただ、その結果が、
「「「「………うぅん」」」」
全滅という悲しい結果ではあったわけだが。
落ち込んだ様子の友人たちを見て、クレアは目を閉じた。
ーー色々やってくれた気持ちは嬉しいし、ここまでのことをムダにはしたくないわ。なら、どうにか今までのことを活用できる方法を、
そうして考え、思いついた。
「そうだ!」
クレアが目を見開いた。
友人たちは、突然声を上げたクレアに不思議そうに注目している。
「全部合わせれば良いのよ!」
「全部って?」
アンナリムが尋ねてきた。
クレアは、アンナリムと同じように不思議そうにしている友人たちを見ながら話し始める。
「今までのアイディアを全部組み合わせて、いいとこ取りをすれば良いのよ。それぞれ参考に出来るとこは多かったし、それを組み合わせれば!」
クレアは希望のこもった声で言う。
すると、友人たちの落ち込んだ顔に明るさが戻ってきた。
「本当!?私たち、クレアちゃんの役に立てるの!?」
「やれることがあるなら、落ち込んでる場合じゃないッスね!!」
「全部かぁ。子供っぽいと思ってたけど、ある意味今回に関しては合理的かもね」
「やるなら、俺も全力で考えるぞ」
アンナリム、ギービー、ハイロラ。ガガーラナの順で、それぞれ自分の意思を述べる。
ただ、共通して彼らには目に光がともっていた。
「よぉし!やるぞぉ!」
「「「「おおぉぉぉぉ!!!!!」」」」
もう1度考える。
今度は、全員が集まって、意見を出し合った。
それから数十分後。
「これなら、いける!」
クレアは完成した作戦に何度も頷いた。
納得の表情である。
「やったねぇ」
「そうッスねぇ」
クレアと同じように喜んでいる友人たち。
そんな中、1人だけ他のモノたちとは笑みを浮かべているモノがいた。
その笑みは、まるで誰かを罠にはめるような笑み。
だが、皆喜んでいてその笑みには気付かない。
「……なぁ。クレア」
「何?ガガーラナ」
「折角だから、今回考えたのを試してみたくないか?」
「?」
ガガーラナの言葉に、クレアは首をかしげる。
クレアはそんな反応だったのだが、
「私やりたい!」
「私もッス!」
「見てみたいよ」
友人たちはやってみたいと言い出した。
流石にこの状況で断るわけにも行かず、クレアは小さく頷いた。
その結果、精神的に苦しむことになるとは知らずに。
数日後。
その日は、迫ってきている聖女召喚の3日ほど前。
「死ねぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「殺せぇぇぇぇ!!!」
ドーンッ!
ドカァァァンッ!
あちこちから響く爆発音と執念の叫び声。
その光景は、まさに地獄。
今までクレアが経験してきた中で最悪の殺し合い。
クレアはそれを見ながら、手元のティーカップへ手を伸ばした。
「………凄い光景だねぇ」
「アンナリム。大丈夫ッスか?顔色悪いッスよ」
「ギービーもだよ」
「というより、俺たちは全員顔色悪いぞ。まあ、クレアは別だが」
友人たちの視線がクレアに向けられる。
その顔は、いつものように落ち着いた表情が浮かんでいた。
「……予想できてたからね」
そう諦めたように言うクレア。
何でこんなことになったのかと、過去を振り返る。
予感を感じたきっかけは、とても些細なこと。
ではなかった。
「血湯と苦霞が学園を狙っている?」
「……はい。どうやら、その可能性が高いようです」
それは、クラウンの拠点で報告を受けているとき。
報告で、クレアの通っている学園が狙われているという情報を聞かされたのだ。
「如何されますか?」
部下がクレアに伺うような目で見ながら尋ねてくる。
クレアは少し悩んだ後、
「阻止、できるか?」
できて欲しかった。
ただ、現実はそんなに簡単じゃない。
「申し訳ございません。あなた様のご命令とあれば全てこなさなければならないとは分かっているのですが、どうしてもこればかりは力及ばず」
「そうか」
部下たちは悔しそうな顔をしている。
ーーどうしようか。この子たちを学校に紛れ込ませても良いんだけど。
クそのまま悩み、次の日の朝。
友人たちはいつものように楽しそうな笑みを浮かべていた。
「……おはよう」
「おはよう!クレアちゃん!……って、大丈夫?」
「大丈夫ッスか?元気ないッスね」
心配そうに近づいてくるアンナリムとギービー。
クレアは2人に大丈夫だと手を振って応えた。
「本当に大丈夫なのか?」
「具合悪そうだけど」
「大丈夫よ。ただ、嫌な夢を見ただけ」
クレアがそう言うと、友人たちは疑わしそうにしながらもそれ以上の追求はしてこなかった。
ただ、ガガーラナは他のモノたちとは違って、何かを考えているよう。
「ガガーラナこそ大丈夫?何か考えてるみたいだけど、悩みでもあるの?」
「ん?いや、何でもない」
ガガーラナは首を振るが、どこか焦りのようなモノを感じた。
ーー何?昨日もだったけど、ガガーラナちょっと変よね。
そう考え、クレアは指を使って部下にサインを出した。
それからクレアたちは朝食を食べるため、食堂へ向かう。
友人たちは、移動しながらも雑談をしている。
「それでねぇ。昨日見た夢なんだけどさぁ」
「へぇ~。そうなんスか」
「面白いね。僕はさ」
「ほぉ~。変わってるな」
「………」
その横を、黙って歩くモノが1人。
クレアだ。
クレアは、うつむいたまま、何もしゃべらず歩いている。
流石に様子が変だと思ったのか、
「ねぇ。クレアちゃん。本当に大丈夫?」
「だ、大丈夫よ」
アンナリムが心配そうな声をかけてくるが、クレアは心配ないと首を振った。
それでも友人たちの心配そうな表情は消えないので、クレアは苦笑する。
クレアの元気がない理由は、血湯と苦霞という2つの闇の勢力によって学校が襲撃されると聞き、自分や友人たちが心配で、よく眠ることができなかった。
というわけではなく、単純に昨日の夜の活動を頑張りすぎた、というのが理由だ。
ーーふぁぁ~。ねむぅ~。
ただそれでも朝食も食べ終わり、クレアの眠気もかなり解消されて。
クレアたちは学校で授業を受けていた。
「コレが分かる人!」
「「「はぁい!!!」」」
教師の出した問題に、生徒たちが元気よく手を上げる。
このうるさい声が、クレアの眠気を吹き飛ばしてくれているという側面がないこともなかった。
今日の授業は数学。
この世界独自の計算方法も加えられた数学は、まだクレアたちが新入生ということもあり、そこまで難しいモノではない。
簡単な問題も多く、生徒たちも教師の出す問題にすぐに答えられる。
これが、いつもの授業の様子。
ほとんどのモノたちが今日も、このいつもが続くと思っていた。
だが、突然教室に入ってきた教師の一言でそのいつもは終わりを迎える。
「た、大変だ!!大量の武装勢力が、学園へ向けて進行してきている!!」
「「「「え、ええぇぇぇぇ!!!??????」」」」
絶叫が響いた。
直後、他のクラスからも絶叫が聞こえてくる。




