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悪役令嬢、誰?どこ?

ある日の夜。

クラウンの拠点で、クレアたちは話をしていた。


「最近、苦霞(くがすみ)の話をよく聞くようになった」


「そうだね。民衆たちは、苦霞をこの辺りの支配者として認識しているようだよ」


クレアが苦霞の話を出すと、ファーストが同意の言葉を返してくる。

それから、クラウンのメンバーは真剣な表情になり、


「これで、血湯がどう動くかが問題ですねぇ」


「そうだな。俺たちが苦霞に認識されているって事はないだろうが、血湯にはある程度悟られている可能性があるからな」


苦霞は支配地域が接触していないが、血湯は北の方で接触している。

血湯もこちらがわに支配地域を伸ばしたいはずなので、認識されている可能性は十分にある。


「その場合、血湯が参戦するように言ってきたら面倒だよな」


「そうだな。苦霞に挟み打ちが成功したと思わせておいてその背中を俺たちに突かせるとか、そう言う考えになってもおかしくはないからな」


会議室ではその言葉を受け、沈黙が続く。

それから、


「「「クククククッ」」」


全員笑い出した。

その笑いは、難しい局面へ向かうに当たって燃えているという笑いなのか、それとも、


クレアたちが会議を行ってから数日後。

夕食を食べながら雑談をしていると、


「大変そうだよね。北のイトー王国」


「ああ。何だっけ?盗賊同士の縄張り争いだったか?気になるよな」


アンナリムが心配の色が少しこもった声で言い、ガガーラナが同意する。

2人とも戦火が広がり、こちらまで飛び火してこないか心配なのだ。


「一般人もかなり死亡してるって聞いたッス」


「そうだね。商品を運ぶ馬車にも容赦なく襲いかかってクルから、向こうの方から輸入してた商品が運べなくなったって聞いてる」


ギービーは心配そうだが、ハイロラは商業優先な思考。

 ーーそう言う面で見れば、ある意味次期会長としての才能はある?


「こっちも苦霞とか言うのがあったから、そこが争わないと良いんだけどね」


「ああ。苦霞なぁ」

「苦霞って言えばさ、こないだの事件の……」


苦霞についてのモノに変わる。

それを聞きながら、クレアは、


 ーー血湯(けっとう)は、こちらで苦霞が活動していると聞いているから、戦いが起きている北側だけでなく、南側にも常に人員を割いておかなければならない。だけど、苦霞は北側にだけ人員を割いている。これは、苦霞の方が有利ね。


そんな会話をした日の夜。

クレアはクラウンの拠点に来ていた。


「報告を」


「はい。まず、こちらが資料です」


ケモ耳少女のサードが、クレアに資料を手渡してくる。

そこに書いてあるのは、北で起きている争いについての報告。


「詳しいことは資料に書いてありますが、私から大まかな説明をさせて頂きます。まず、全体で見ると、苦霞が優勢です。しかし、血湯の指揮系統が非常に優秀なようでこちらが予想していたほどの被害ではありません」


「ほぉ。それは凄いな」


サードの話を聞き、クレアは素直に感心する。

かなり不利な戦いのはずなのだが、それでも被害が少ないというのはそれだけ指揮が優秀なのだという、その組織の強みが分かる。


「ふむ。確かに、被害は小さいな。中規模の拠点が3つ壊されただけか。しかも、その拠点は火を付けて逃げたため苦霞の物にはならなかったと」


「はい。非常に対応が迅速です。もし矛を交えることがあれば、これは警戒しておくべきかと」


サードの言葉に、クレアは大きく頷く。

 ーー数週間で全滅するかと思ってたけど、この感じなら2ヶ月は持ちそうね。もし戦うことがあれば、まずは指揮官を真っ先に殺しに行くべきかしら。


「とはいえ、時期のズレはありそうだが、ここまでは概ね予想通りと言うことだな?」


「はい。血湯が長く持ちこたえること以外は、予想通りだと思われます」


「そうか。では、予定通りに今後も動くように」


「了解しました」


サードが頷き、クレアから返却された書類を受け取る。

クレアは資料に書いてあったことを思い出しながら、


「我は少し血湯を煽ってくるとしよう」


クレアは拠点を出る。

向かうのは北。


血湯がいる北を目指して、クレアは走る。

 ーーちょっと南側を刺激してあげれば、更に人員を南に割かなければならなくなる。そして、そうなれば、北側が薄くなって、


血湯は潰れてしまうだろう。

と、クレアは仮面の中で黒い笑みを浮かべた。


「張り切ってやるか」


クレアは今後を妄想しながら盗賊たちを殺していった。

次の日、盗賊殺しの妖精の話が騒がれたのは言うまでもない。


それこそ雑談をしていると、


「そういえば、北の戦いに盗賊殺しの妖精が加わったんだってね」


アンナリムがそんな話題を出してきた。

真っ先にそのはなしに反応するのはハイロラ。


「殺されそうになってた商人が助けられたって言ってた。商会としては、盗賊殺しの妖精にお礼がしたいって父さんは言ってたけど」


「へぇ。盗賊殺しの妖精を見たヤツがいるのか、どういう顔してたんだ?」


ハイロラに質問するのはガガーラナ。

彼も含めて、民衆たちは盗賊殺しの妖精の正体に興味があるのだ。


「残念ながら、顔は見てないらしいよ。ただ、あの光と共に首が切れるのは、盗賊殺しの妖精ぐらいしかいないだろうって」


「そうッスかぁ。残念ッス。盗賊殺しの妖精には感謝している人も多いし、顔を知りたい人も多いと思うんスけどねぇ」


ギービーが心底残念そうに言う。

それに、クレア以外が頷いた。


 ーーえ?そんなに私の顔を見たいの?面倒なことにならないと良いんだけど。

クレアは、顔を見ようと執拗に追ってくる者がいないことを願うのであった。


「ま、まあ、盗賊殺しの妖精も、顔は見せたくないからそんなことしてるんでしょ。あまり触れない方が良いんじゃない?」


クレアが自分が危機に陥らないようにするため、そう言っておく。

半分は理解しているが諦めきれないという顔をして、


「顔を見られたくないの?なんで?」

「あっ!もしかして、どっかの王子様がやってるとか!?」


アンナリムが首をかしげ、ギービーが妄想を炸裂させる。

 ーー悪いわね。中身は王子じゃなくて私よ。


それはそれで盛り上がりそうな事実を胸の内にしまいながら、クレアはごまかそうとそれらしい理由を考える。


「例えばそうね。……純粋に力があることを知られたくないって可能性もあるわ」


「なんで?」


力を示せば、英雄のように見られることが多い。

だが、


「国から、騎士にならないか?みたいな勧誘が結構来るんじゃないかしら?国の犬にはなりたくないって言う人もいるでしょうし」


「あぁ。それはあるかも知れないッスねぇ」


全員が納得したような表情に。

 ーーよし!これで私の顔を見たいとか言う考えを持つ者を減らせたわ。


クレアは達成感を覚える。

が、


「で、それは良いとして、」


アンナリムが話題を変えるように言う。

 ーーえ?何?その、本題入りますみたいな言い方!?凄い嫌な予感が!?


「エリー様のことなんだけど」


 ーーあっ!私のことだったぁぁ!!

クレアは更に嫌な予感がする。


「あぁ。エリー様ねぇ。そう言えば、学校来てないんだっけ?俺が聞いた話だと、よく商会の方にいってるって事だったけど」


そう言って、ガガーラナはハイロラを見る。

ハイロラはその視線を受け、首を横に振る。


「いや。僕は見てないなぁ」


「となると、何処にいることになるんスかね」


エリーの居場所の話になった。

 ーーどうしよぉ!どうやって誤魔化そう!!


「ど、何処にいるのかしらねぇ~?」


クレアは心の中で焦りながらも、口では頑張って落ち着き払って言う。

その頭の中では、焦りを覚えながらも打開策を考えていた。


「私はさ!どっかの平民と、身分差の恋をしてると思うんだよねぇ。今は、その平民と一緒に暮らしてるとか」


アンナリムが妄想を炸裂させる。

クレアたちは、それを聞いて苦笑した。


が、あながち完全に間違っているわけではない。

 ーー恋はともかく、平民と一緒にいるのは間違いじゃないのよね。しかも、あなたの目の前にいるんだけどねぇ。


「アンナリムの妄想は良いとして、真面目に考えるとどうなってると思う?」


「どうなってるだろうねぇ。僕の方に情報が来てないことを考えると、商会にもいないし、アーニ王国にいるわけでもなさそうだし」


ハイロラが言う。

ファララ商会はエリーの指示でアーニ王国の方でも商業をしているので、そちらの方面の情報も持っているのだ。


「それで?リムはどうしてエリー様の話なんか急に出してきたの?」


クレアは、隙を見て話題をそらした。

とは言っても、コレが気になっていたことも事実。


「ん?理由はね、王子様とか、公爵家の方々とかが、強い恋の波動を放ってたからだよ」


「どういうこと?」


アンナリムの語る理由に、クレアは首をかしげる。

恋の波動は、アンナリムの持つ恋の加護によって感じられるモノなのだが、


「あの恋の波動は、多分恋をしてる波動だと思うの。それで、皆波動が強いから、もしかして同じ人を好きなのかなぁ?と思って」


「それで思い当たったのが、エリー様ってことッスか?」


アンナリムが事情を説明し、ギービーが確認を取った。

アンナリムはギービーの言葉に頷く。


「そう。王子様たちがお茶会をしてるって聞いたことがあったから」


「あぁ。珍しいことに、王子様たちと次期公爵様が全員集まってるんだっけ?」


王族とエリーだけが行っていたお茶会は、次期教皇候補のイルデや次期公爵たちも参加して行われるようになっていた。

 ーーなんでその存在を知ってるのかしら?


「私、その話聞いたことないわね。どこで聞いたの?」


「ん~。地元で聞いたよぉ。なんか、そのお茶会に子爵家の令嬢が呼ばれたけど、緊張しすぎてその人たちはお菓子を1個も食べられなかったって」


「あぁ。そうなのね。子爵家の人たちは可哀想だわ」


クレアはそう言いながら、

 ーー噂の出所は、私が招待した2人なのね。なら、情報漏洩の心配はなさそう。


クレアは一安心。

それで、また雑談に戻ろうとしたのだが、


「で?クレアちゃんはエリー様が何処にいるか知ってる?」


アンナリムにそう尋ねられた。

適当なことを言って誤魔化そうと思ったのだが、


「主席様の推理、楽しみだな」

「クレアは頭良いッスからね。分かっちゃうかも知れないッス」

「おお。クレアの意見を聞いて勉強させて貰うよ」


何て言うことを言われてしまい、クレアは悩む。

 ーー真面目に答えないわけにはいかないじゃない!……えぇっと。なら、


「あれじゃないかしら。結構暗殺されそうになってるって聞くし、暗殺されるのが怖くて屋敷に引きこもってるとか」


「あぁ。そう言えばそうだね」

「可能性はあるな」


 ーーふぅ。どうにかなったぁ。……でも、今後もこうなる可能性はあるわ。今のうちに、エリーがどうしてるかとかいう言い訳を考えておかないと。

クレアは今回のことを反省し、次に活かそうと誓うのであった。


そんなことがあった翌日。

クレアが起きてくると、


「あっ!クレアちゃん!」


「ん?ジャミュー?どうしたの?」


寮の長であるジャミューが話しかけてきた。

クレアが用件を尋ねると、


「クレアちゃんに手紙が来てたから、渡しておこうと思って」


「え?手紙?誰かしら?とりあえず、ありがとう」


手紙が記憶になかったので首をかしげるが、一応お礼を言って受け取る。

クレアが手紙の差出人を見ようとして手紙を裏返し、


「うわっ!?」


盛大に頬を引きつらせた。

 ーーなんでここに出してくるのよぉ!!


「大丈夫?クレアちゃん」


その様子を見てジャミューが心配してくる。

が、クレアはすぐに手紙を後ろに隠した。


「だ、大丈夫よ」


クレアは手紙をポケットにしまいながら言う。

その顔は、どこか焦り気味。


「本当に大丈夫なのぉ?クレアちゃん。何か隠してない?」


「いや、かくして」


クレアはそこまで言って、気付く。

 ーー落ち着け私。ここは素直に、


「隠してるわよ。誰だって秘密はあるモノでしょ?」


クレアは笑顔で言い放つ。

コレにはジャミューも予想外だったようで、上手く言葉が出てこない。


「……っおお。クレアちゃん。開き直ったか」


「開き直ったわけじゃないけど、まあ、そこはどっちでもいいわ。それじゃあ、手紙ありがとう」


クレアは手を振って、自分の部屋へ手紙を持って帰る。

その途中で、


「ん?クレアちゃん。何その手紙。まさか!ラブレーター!?」


「おぉ。クレア。モテモテッスね!」


なんて声をかけられても苦笑いするしかなかった。

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