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悪役令嬢、召喚!!

クレアとハイロラが戦うことになる少し前に時は遡る。

クレアたちはいつものように学校で授業を受けていた。


「よし。今日はここまで。次は召喚があるから遅れるなよ」


教師はそう言って教室を出て行く。

直後、両隣の2人が崩れ落ちた。


「む、難しいよ~」

「何言ってるか全然分からないッス~」


ぐったりとする2人。

普段はここでクレアが苦笑いしながら慰めるのだが、


「………」


今日は黙っている。

そして、その手には教科書が。


「あれ?クレアちゃん?」

「どうしたッスか?調子が悪いとか」


いつもとは違うクレアの様子に首をかしげる2人。

それを見たクレアは、手に持っていた教科書を2人に見せ、


「ごめんね。ちょっと召喚獣はどんなのが良いか悩んでたのよ」


「ああ。召喚ッスか」

「運命の相手だからねぇ。可愛い子が良いなぁ」


クレアの話を聞いて楽しそうにする2人。

だが、対照的にクレアの表情は真剣なモノであった。


「ん~?クレアちゃん?」


「あっ。いや、何でもないわ」


何でもないわけがない。

クレアが真剣な理由。それは、


 ーー召喚に良い思い出が1つもないわ!

思い出というのは、ゲームのイベントのこと。


その嫌なイベントの代表格が、メアリーの死亡。

エリーのメイドであるメアリーが死ぬ理由も、この召喚にあるのだ。


流れとしては、主人公の召喚した巨大なふわふわウサギが暴走しエリーがそれを止めに来る。

だが、ウサギの力が圧倒的すぎてエリーでも止められず、ウサギの攻撃からエリーをかばってメアリーは死んでしまう。

といった感じだ。


 ーーとりあえずメアリーはこの学校にはいないけど、主人公の召喚したモノが暴走したらどうなるか分からない。そのためにも、強力なモノを召喚したい!


召喚するより、クレアが戦った方が強いとか言っちゃいけない。


そんなことで悩むこと数時間。


「それじゃあ、召喚をするぞぉ」


ついに召喚の時間となった。

この召喚の結果によって、クレアの運命は決まると言っても過言ではない。


 ーーここで、微妙な強さのモノを召喚するのが1番問題よ。

希望としては目立たないようなそこまで強くないモノか、主人公が何を召喚しても対応できるようなとても強いモノ。


召喚したら10年間次の召喚をすることは出来ないので、ここで何が出るのかはとても大切なのである。

クレアが不安な気持ちを膨らませている間にどんどん他の生徒たちは召喚を済ませていき、


「次はクレアだ。手をかざせ」


クレアの順番が回ってきてしまった。

教師が指さす場所には、青く光る魔法陣が


「……はぁ」


クレアは数秒それを見つめ、覚悟を決めた。

右手を魔法陣にかざして、魔力を流す。


ピカーッ!

と、光があふれ出し、


ポフンッ!

「え?」


クレアは出てきたモノを見つめ、数度瞬きをする。

それでも目に映るモノが変わらないので、今度は目を擦ってみる。


「え?」


それでも結果は変わらない。

クレアの目の前にいるのは、


「ギィー。ギィ」


と鳴く、全身が黒い人のようなモノ。

だが、人とは違ってその背中には羽が生えている。


「こ、これ?」


クレアは信じたくなかった。

なぜなら、その姿には見覚えがあったから。


「……えぇっと。なんて言えば良いんだろうな」


召喚された存在を見て、教師も難しい顔をしている。

なぜならそれは、


 ーーこれ、悪魔じゃぁぁんっ!

いわゆる悪魔と呼ばれる存在だったのだ。


「……悪魔って、強いの?」


クレアは教師に尋ねる。

教師は顎に手を当てて少し考えるような素振りを見せた後、


「強いヤツは強いぞ。だが、その悪魔は下級悪魔だからなぁ。ほとんど使い物にならないって言っても良いかもな」


「……そう」


クレアは肩を落とす。

教師はそれを同情のこもった目で見つめていた。


 ーーまさかの使い物にならない悪魔!意外すぎるわ!……でも使い物にならないなら、それはそれでいいか。

クレアは当初の願いを思い出し、メンタルを切り替える。


「クレアちゃん。どうだった?」

「どうだったッスか?」


友人たちがクレアに寄ってきて結果を尋ねてくる。

アンナリムは猫のようなモノを胸に抱えていて、ギービーはその大きな肩に可愛さをかなり高められたカメレオンが乗っていた。


「……実はね」


クレアは2人に事情を説明する。

2人は話を聞き終わると、困った顔をしながらその肩に手を置いて慰めてくれた。


「いや、そんなに落ち込んではいないのよ」


「いやいや。クレアちゃん。素直になって良いんだよ」

「そうッスよ。主席としての威厳を気にしなきゃいけないッスから、胃が痛いのは分かるッスよ」


 ーー本当に気にしてないんだけどなぁ。

そう思ってはいながらも、クレアは2人に励まされてうれしさを感じた。


他の生徒たちの召喚が終わる間、2人としばらく雑談をする。

そうしていると、


「クレア、どうだった?」


そう言って話しかけてきたのはオシャレ好きの少年ガガーラナ。

ガガーラナにも事情を説明すると、


「……あぁ。うん。ドンマイ」


微妙な顔で、こちらもまた励ましてきた。

だが、その途中で、


「あっ。でも、悪魔は育てればかなり強くなるって聞いたぞ」


「え?そうなの?」


クレアは、鍛えてみようかと思い、

 ーー鍛えるなら、同族である『右腕』に預けてみても良いかしら?


なんて希望を抱いたところで、


「全員召喚は終わったな?それじゃあ、次の時間は召喚した者同士で戦うからな」


「え?戦う?」


クレアは不安を覚えた。

なぜなら、


 ーーこの子弱いのよね?戦えないわよね?

召喚された悪魔が弱いとため、戦えないからだ。


「とりあえず、ペアを組んで誰と戦うか決めてくれ」


エリーは友人たちの方を見る。

友人たちも分かっていたようで、頷き、クレアを入れようとしたところで、


ガシッ!

と、クレアの手が捕まれた。


 ーーすっごい嫌な予感がするわ。

そう思いながら、恐る恐る振り向くと、


「クレア。僕と勝負だ!」


笑顔でそう言うのは、ハイロラ。

この間決闘を断られたハイロラである。


 ーー面倒くさいのが来たぁぁ!!

最悪なことに、その面倒な相手と戦うことになってしまったのである。


「クレア。その、すまん」


そう言って申し訳なさそうにしているのは、オシャレ好きの少年ガガーラナ。

決闘とかの話を作ってハイロラを焚きつけた張本人である。


「まさか、こんなことになるとは予想できなくて」


ガガーラナは居心地悪そうに言う。

確かに彼の言うとおりこんなことが予想できるわけがないのだが、


「ねぇ?誰のせいでこうなったか分かってんの?」

「次席なんスよね?もっと頭を使って欲しいッス」


クレアの友人2人から目茶苦茶怒られていた。

 ーー被害者の私が言うのもアレだけど、流石に可哀想だわ。


「ま、まあ、2人とも落ち着いて。今は先に、私がどうすれば良いか作戦を一緒に考えて欲しいわ」


「……クレアちゃんがそう言うなら」

「仕方ないッスね。ガガーラナ。次はないッスよ」


「あ、ああ。分かってる」


クレアのお願いによって、どうにか2人を落ち着けることに成功。

ガガーラナは謝罪ではなく感謝の意味でクレアを拝んでいた。


「で、どうすれば良いと思う?」


クレアは落ち着いた3人に尋ねる。

3人は少しの間悩むような素振りを見せた後、


「まずは、悪魔が何できるか知らないと」

「そうッスね。名前とかは決めたんスか?」


「あぁ。名前ね。能力把握の前にそっちが先よね」


クレアはその意見に納得する。

ということで、悪魔に、


「あなたに名前を付けるわ」


「ギィ?」


名前?

と言いたげに悪魔は首をかしげる。


「鳴き声からギィ、だと捻りがないから、ギレにしようかしら。キレがありそうよね」


「ギィ!」


壊滅的なネーミングセンスにより、悪魔はギレと名付けられた。

名付けてみると、どこかかわいげがあるように思えてくる。


「で、ギレはどんな事が出来るのかしら?」


「ギィ?ギィギィ!!」


ギレは楽しそうにぴょんぴょんと跳ね、周りを見回す。

それから、人気がないところに移動して、右手を前に突き出した。


「ギィ!」


ビュオッ!

気合いと共に、ギレの手から黒いモノが放出される。


「え?あぁ。うん。何て言えば良いんだろう」

「これはまた、表現しづらいッスね」

「使い方次第では生きてきそうだが」


その効果は、3人が言ったレベル。

壁に黒いモノが当たったのだが、少しだけ壁を削り取ることが出来た程度だった。


「ぅん。これは本当に作戦を考えないと」


クレアはそう結論づけた。

そして、友人たちと共に、この能力をどう生かし、どう戦っていくのか考えていくのである。


「最初は、………」

「ああ。それから、……」


そうして作戦を立てること数分。

さすがに休憩時間は長くなく、


「よし。全員そろってるな。それじゃあ、これより召喚したモノを使って戦って貰う!」


「「「おおおおおぉぉぉぉ!!!!」」」


教師が戦いを宣言し、生徒たちが歓声を上げる。

それぞれ相棒を手に入れて、気分が高まっているようだ。


だが、それとは対照的に、


「……はぁ」


「ク、クレアちゃん。頑張ろっ!きっとあの作戦なら上手くいくから!」

「そ、そうッスよ。上手くいくと思うッス」


クレアがため息をつき、友人たちが必死にフォローする。

長い間そんな作業が行われるかと思われたが、


「まずは、クレアとハイロラに戦って貰おう!」


「「「おおおおぉぉぉ!!!!!」」」


初戦でクレアが戦うことになった。

クレアとハイロラが中央に集まり、生徒たちは離れていく。


「クレア!僕が勝ってみせるよ!」


「そう。随分と自信があるのね。……じゃあ、棄権するわ」


「「「「………はぇ?」」」


クレアとハイロラの戦い。

初戦ということもあり、最高潮の盛り上がりを生徒たちが見せる中、その雰囲気をぶち壊すようにクレアは棄権することを宣言した。


「え?棄権?」

「聞き間違いじゃないよな?」


完全に予想外のことで、生徒たちは困惑している。

それは当然対戦相手のハイロラも同じで、


「お、おい!何のつもりなの!僕は君に勝つために勝負を!」


声を荒げるハイロラ。

だが、クレアは不思議そうな顔で、


「え?私が棄権したんだから、あなたの勝利なのよ?折角勝ったんだから、そんなに怒らずにもっと喜ぶものじゃないの?」


「っ!」


クレアが言うことは正しい。

が、ハイロラは納得がいかなかった。


「で、でも」


言い返そうとするハイロラ。

だが、上手い言葉が見つからない。

そんなとき、


「流石に棄権はなしだ。戦うくらいはしてくれ。それがこの授業の目的なんだから」


教師が口を挟んできた。

流石に授業の目的と言われてしまえば、クレアも断ることは出来ない。


「……分かったわ。なら、戦いましょう」


クレアは渋々といった感じで納得し、ギレに合図を出す。

ハイロラも、複雑な表情で召喚した立方体の何かを前に出した。


「よし。それじゃあ、仕切り直していくぞ。両者構えて、………始め!」


教師が開始の合図を出す。

 ーーここまで作戦を立てておいて良かったわ。何事も最悪のケースを考えるべきね。


「ギィ!」


ギレは、作戦通りに右腕を前に突き出す。

そして、黒いレーザーのようなモノを放ち、


「……クレア場外!ハイロラの勝ち!」


「ハイロラの勝ち!」


「「「お、おおぉぉ」」」


教師がハイロラの勝利を告げる。

見学をしている学生たちは、盛り下がりきった声を出した。


「あら。衝撃に耐えきれなかったのね」


クレアはそう言いながら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()となったギレに近寄り、手を貸して起きるのを手伝う。

 ーー自滅、撤退。相手と戦いたくないときには、悪くない手だと思うわ。


「な、なんだよ。それ」


ハイロラは複雑そうな表情でクレアを見て、そう呟く。

納得がいっていないようだ。


「……そんなのないだろ」


そう言いながら、ハイロラは見学者たちの方に歩いて行く。

納得は行かないようだが、これ以上やってもムダだと判断したようだ。


「クレアちゃん!上手くいったね」

「お疲れ様ッス」

「お疲れ。クレア。でも、後でハイロラが突っかかってくるかも知れないから気をつけろよ」


「皆ありがとう。ハイロラには気をつけておくわ」

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