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悪役令嬢、弱者の足搔き

「ふははは!!!」


「さ、最低!」

「権力乱用ッス!」


勝ち誇ったように笑うハイロラ。

友人の2人は、悔しそうにそれをにらみつけた。


そんな中、クレアは逆に落ち着いている。


「ハイロラ。それは、会長に許可はとっているのかしら?」


「は?とってない。でも、俺が言えば取れるに決まってるだろ」


「そう。なら、まだ慌てるようなこともないわね。あなた程度ができるとは思えないわ」


クレアはそう言って笑みを浮かべる。

ハイロラは目を見開き、顔をゆがませた。


「お前!余裕ぶるのもたいがいにしろよ!」


「余裕ぶってるんじゃなくて、本当に余裕なのよ。ファララさんは優秀だったけど、あなたは微妙なのね」


「言わせておけば!!」


ハイロラの目は血走っていて、今にも飛び掛かって来そうな雰囲気。

だが、クレアはそれを冷たい目で見ていた。


そうするとだんだん不安になってきたのか、


「覚えておけよ!!」


そう言って、ハイロラは去って行った。

クレアはそれを困った顔で見送る。


「クレアちゃん。良かったの?」

「商会の息子って言ってたッスよ!クレア、今後の生活が」


友人たちが心配したような表情でいってくる。

クレアは、安心させるように笑みを浮かべる。


「大丈夫よ。会長は理解のある人だから。それに、」


「「それに?」」


 ーーそれに、私が会長より立場が上だしね。

とかは言えないので、


「いや。そんなに商会の名前を地に落とすようなことはしないと思うわ」


「それはそうッスね」

「女の子との契約を一方的に切ったって、商会の名前に傷がつくからねぇ。……でも、ファララ商会って、そんな名前を聞いたことないんだけど」


2人は納得したように頷き、それから、アンナリムが首を貸した。

クレアは、原因を知っているので、


「ファララ商会は、インク消し商会って言われてるところの正式名称よ」


「「え!?インク消し商会って、そんな名前だったの(ッスか)!?」」


「そうよ。インク消しが有名になりすぎて、自分の名前を皆知らないって、ファララ会長が嘆いてたわ」


クレアは苦笑する。

友人たちも、困ったような笑みを浮かべた。


「さて!とりあえず、この話は終わり!ストレス発散もかねて、なんかやるわよ!」


「「おおぉ!」」


クレアたちは気分転換もかねて、遊んだりお風呂に入ったりした。

そして、次の日。


「クレアちゃん。手紙が来てるよぉ」


「あら。ありがとう」


寮で1番偉い(?)ジャミューから、手紙を受け取る。

クレアがその手紙を開けると、


『この度は愚息がご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした』


から始まる、謝罪の手紙だった。

差出人は当然、


 ーー会長。苦労してるわね。普段から頑張ってるし、安心させるようにお返事を書かないと。

なんてことを考えて穏やかな気持ちになったのもつかの間。


「流石父さん。仕事が早いなぁ」


馬鹿にするような声が聞こえてきて気分は急降下。

その声の主の目は、嫌らしく歪んでいた。


「そうね。仕事早いわね」


クレアはそう言って微笑む。

その笑みを見たハイロラは怪訝そうに眉をひそめる。


「どうした?泣いてわめかないのか?ああ。もしかして、ショックすぎて夢だとでも思っているのか?」


「いやいや。夢なんて思ってないわ。……ああ。でも、次の商会の会長があなたなのは夢だと思いたいわ。ちょっと商会を乗り換えた方が良いのかしら?」


クレアがそう言って肩をすくめると、ハイロラは顔を歪ませる。

また何か言おうとしたところで、


「ハイロラ君にも手紙が来てるよ」


先ほどクレアにも手紙を渡してくれたジャミューがそう言って、手紙をハイロラに差し出した。

発言を邪魔されて少しむっとしたような表情になるが、黙ってハイロラは手紙を受け取った。


「クレアちゃん。本当に大丈夫なの?」


今なら大丈夫だろうかと思い、そこまでの様子を見ていたアンナリムが話しかけてきた。

クレアはそれに黙って頷き、自分の手紙の一部を友人たちに見せる。


「「「えぇ?」」」


3人が同時に驚きのこもった困惑の絵をハッする。

その3人は、アンナリムとギービー、そしてハイロラ。


「え?謝罪の手紙?」

「凄い会長が下手に手紙書いてるんスけど!?」


クレアが見せた手紙を見て、アンナリムとギービーは驚いている。

まさか、会長からの手紙に謝罪が書かれているとは思わなかったのだ。


「ど、どういうことだ?解約しないだと!?」


ハイロラは自分の手紙に目を通し、驚きの声を上げる。

クレアを解約しない旨について書かれているのだろう。


「なぜ、なぜだ!お前なんて、商会には必要ないはずなのに!」


そう言って、ハイロラはクレアを睨む。

それに対して、クレアは苦笑を浮かべ、


「そんなに難しい話ではないわよ。ファララ商会は今、急成長中よ。ここで私が解約されて抗議の声を上げれば、商会の名に傷がつくし、成長度合いも下がるはず。それこそ内部情報を漏らされたら最悪ね。こんな所で名前を下げるようなことをする必要がないのよ」


「なっ。そ、そんなバカな」


ハイロラは狼狽えたような表情でクレアを見る。

だが手紙に書いてあることが全てであり、何も言えずに背を向けてかけて行ってしまった。


「あぁ。行っちゃった」


クレアはハイロラがいた場所を見て呟く。

その様子を見て、アンナリムとギービーが肩を叩いてきた。


「クレアちゃん。良かったね!」

「解約されないで良かったッス」


「そ、そうね。まあ、最初からそんなに心配してなかったけど」


友人たちに喜ばれ、クレアは少し微妙な表情をする。

 ーー危険性なんてないに等しいんだから、喜ばれても。


そんなクレアの横で感心したように、


「ファララ商会の会長かぁ。子育ては上手くないけど、他のことは色々出来る人なのね」


手紙を渡してくれた寮の長、ジャミューは呟いた。

同意するように友人たちも頷く。


 ーー会長。可哀想に。

クレアは、心の中で手を合わせた。

ただ結果が結果であるだけに何も言えないことも確かだ。


「名誉挽回に期待しましょう」


「そうだね。頑張れ会長!」


こうして一つの問題は解決。

その後は朝食を食べ、学校に行き、初日と同じような過ごし方をしては学校が終わった。


「……疲れたぁ~」

「同じくッス~」


「お疲れ様」


友人たちが疲れ、クレアがねぎらいの言葉をかける。

そんな生活が数日間続いた。


もちろん、商会の会長の息子ハイロラが騒いだり、オシャレ大好き少年のガガーラナとオシャレについて語りあったりもした。

そうすると、いつの間にか、


「今日はお休み!」

「遊ぶッス!」


いわゆる週末のようなモノがやってきて、休みとなる。

クレアは休み中に何をやるか考えていなかったが、実家に帰ったりしておくかと考えた。


だが、その予定は、


「部屋替えをするよぉ!」


という寮の長ジャミューの一言で崩れ去った。

 ーー会えないのは仕方ないけど、手紙くらいはちゃんと出さないと。


そんな判断をさせたジャミューの宣言。

それに対する寮生たちの反応は、


「「「「えぇ~」」」」


という不満のこもったモノ。

新入生たちはよく分かって折らず、不思議そうに首をかしげている。


「はいはい。不満なのも分かるけど、新入生たちに配慮しなきゃ行けないからね。部屋を決める優先順は、毎年恒例の魔導人形対決だよ!それじゃあ、例のモノを!」


ジャミューがそう言うと、後ろから何かが運ばれてきた。

そこそこのサイズがある箱が、いくつも積み重なっている。


「知らない新入生たちに説明しておくと、この魔導人形に魔力を流して、自分で操ることが出来るんだ!」


「「へぇ」」


新入生たちから興味深そうな声が上がる。

クレアも同じく、興味深げにそれを見て、


 ーー部屋を決めるって事だし、そこそこ高順位を狙わないといけないわね。窓付きの部屋が取れるくらいには頑張りましょう。

窓がある部屋を勝ち取るために、クレアはこの勝負への気持ちを高めた。


「それじゃあ、人形を配っていくよ。人形を貰った人は自分の今の部屋に戻って、30分間好きなように武装を付けたりしてね」


ジャミューは自分も魔導人形とやらを取りに行く。

クレアたちもよく分からないが、とりあえず人形を取りに行った。


「ふぅん。コレが魔導人形」


「凄いねぇ。綺麗な作り」

「こんなモノがあるなんて、さすがは優秀寮ッスねぇ」


友人たちと会話をしつつ、部屋へと戻る。

部屋へ戻ったら早速クレアは魔導人形をテーブルの上に置き、


「武装って言われてもねぇ。……呪いの装備とか付けてみましょうか。呪いの人形って、闇の組織とかでも使えそうだし」


そう呟いて、早速改造に取りかかった。


魔導人形のサイズは、高さがクレアの肩ほど。

関節や外見などの作りは人間の体をマネして作られていた。


「………ふふふっ。この関節を曲げたら、人間には絶対出来ないようなあれが」


マッドサイエンティストな雰囲気を醸し出しながら、クレアは改造を行う。

クレアと戦うモノには、ご愁傷様と言うほかないだろう。

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