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悪役令嬢 植物と薬と

「エリー。今日は私とお散歩しましょう」


母親がエリーにそう言って、手を伸ばす。

エリーは満面の笑顔で手を握り、


「どこに行くの?」


かわいらしく首をかしげながら尋ねた。

すると、母親はエリーの部屋の扉を開け、黙って手を引いた。


エリーはよく分からないが、特に抵抗もせずついて行く。

2人はバリアルの部屋を通り過ぎ、その先にある両親の部屋も通り過ぎ、


ギィィィ!!

母親は突き当たりにある大きな扉を押した。


「うわぁぁぁ!!!」


柔らかい風が2人を包む。

2人の前には、色とりどりの花が植えられた花壇があった。


「ここは、お屋敷のお庭よ」


母親はエリーに優しく伝える。

ただ、エリーとしては内心、とてもビビっている。


 ーー確か、ここ。夜にうめき声が聞こえる所だった気がするんだけど!?


なんていう彼女の施行に母親は気づくことなく、


「このお花はマジックローズ。魔力を流すと、その人の持つ属性によって色が変わるのよ」


母親が庭の花を幾つか解説する。

そんな中で、母親が触ると変色したのがマジックローズ。


最初は赤色だったのだが、母親が触ると水色になった。

エリーは興味が湧いたので、触ってみることにする。


「わぁ!きれい!」


「ふふふ。良い色ね」


エリーは触ると、バラは薄く光った。

エリーの手から、黄色い、いや、黄金に光る花びらが現れる。


持つ人の属性によって色が変わると言うことだったので、エリーの光の加護に反応したのだと思われる。

因みに、ゲームの中でエリーはマジックローズを胸のポケットに挿していたのだが、その色は毒々しい紫色だった。


エリーは紫色に変色させる要因であった、ゲーム内のエリーが持つ『毒の加護』を思い出し、懐かしさに心が揺れる。

 ーーん?毒の加護って、確か……


エリーは、大事なことを思い出した。

それは、


 ーー『毒の加護』をエリーが貰うのって、初めてのパーティーに参加したときじゃなかったかしら!?


できればほしいものが、もしかしたらすぐに近くまで来ているかもしれないことに気づく。

そこから彼女の態度は変わり、


「これは?」


「それは女神の道ね。周囲の植物が健康に育つのよ」


「こっちは?」


「そっちはスキル草よ、ランダムで何か1つのスキルを持っているの」


エリーは植物を1つ1つ聞いていく。

それには、もちろん理由がある。


思い出した出来事を、攻略するためだ!

エリーの思い出した、エリーが毒の加護を手に入れる出来事。


エリーが毒の加護を手に入れるのは、エリーが毒を口に入れてしまうからだ!

毒の加護を持つと、毒が効かなくなるので、毒を無効化するために毒の加護がエリーに付けられた。


つまり、エリーはどこかのタイミングで毒を口にしてしまうのだ。

まあ、どこかと言われれば、それもエリーは思い出したのだが、今は関係無いだろう。


時が来れば分かるというモノだ。

さて、ではなぜ植物の名を熱心に聞いているかと言えば、


「コレは解毒草ね。飲めば毒を無効化できるわ」


解毒作用のある植物を知るためだ!

ついでに、毒のある植物も知っておければ良いと思っている。


「これはぁ?」


「それはね。……」


「じゃあ、コレは?」


「それは………」


エリーは質問攻めを行った。

そうしながら、庭の奥へ奥へと入っていく。


そうしながら進んでいると、


「あっ!エリー!それ以上はダメ!」


エリーは先に行くことを止められてしまった。

そこでエリーは直感が働いた。


 ーー何かマズいところがあるのね。

誰でも分かると言う無かれ。


「ふぇ?何があるのぉ?」


エリーは好奇心旺盛な子供らしく、その先にあるモノに興味を示したように問う。

さて、ここで親の対応力が分かる。


他のモノを使って気をそらせたり、嘘をついて近づかせないようにさせたり。

いろいろな事ができると思うが、


「え?あ、あっちには毒のある植物があるのよ」


嘘とも本当とも言えないラインのことを言ってきた。

そこで庭園の開設は終わり、エリーの1日は過ぎ去っていくj。


「今日は沢山遊んで疲れたでしょう、シッカリお休みなさい」


「はぁ~い!」


エリーは母親の言葉に返事をして、ベッドに入る。

しばらく寝たふりをしていると、母親は部屋から居なくなった。


「、、、いきましょうか」


エリーは音を立てずに立ち上がり、夜の世界へと駆けだした。

昨日よりも早く、まっすぐに目的地へと向かう。


「こんばんは!」


昨日より30分ほど早く着いた。

コレなら、昨日とは違って余裕を持って帰ることができるはずだ。


「おう。来たのかい。仲間になるって事の詳しいことを話し合うんだったかしらねぇ?」


「そうよ。それじゃあ、私のやりたいことについて話すわね」


エリーは自分の夢を語った。

それはもう、妄想を超えた妄想を語りまくったのだ。


聞いている老婆の顔もかなり歪んできている。

 ーーあ、あれ?調子に乗ってバカなことを言い過ぎちゃったかしら?


「……なるほどねぇ。あんたは、『火傷蜥蜴』に対抗できる組織を作ろうって思ってるのかい」


老婆は顔をゆがめながらも、そう呟いた。

 ーーああ。優しいわね、おばあちゃん。中二病的な要素に頑張って付き合ってくれてるのね。なら、もう少しだけ甘えましょう。


「違うわ。全ての闇を支配できる組織を作るのよ」


「全ての闇を?………はぁ~。まあ、老い先短い命だしねぇ。その夢を一緒に走るのも悪くないかも知れないねぇ」


老婆はそう言って、表情を緩めた。

そして、突然床に片膝をつき、エリーに頭を垂れる。


「え?おばあちゃん?」


エリーは訳が分からないと言った表情で老婆を見る。

老婆はそんなエリーの疑問には答えず、


「私は、あなたに忠誠を捧げましょう」


頭を上げずに言った。

エリーは本格的に理解できなくなっている。


だが、ここでエリーの先ほど語った、夢への憧れに火が付いた。

 ーー闇の組織の部下が手に入るって事よね!これは良いんじゃないかしら!


「私は、あなたの忠誠を受け入れましょう」


そう言って、エリーは老婆の前に手を出す。

その手には、いつの間にか葉っぱが付いていた。


 ーーあら?コレはマズいのでは?

エリーは忠誠を捧げた相手への対応の仕方が分からず、心の中であたふたしている間に、


「なるほど。私は、あなたのために全てを捧げましょう」


老婆はそう言って、エリーの手の葉をとった。


「お嬢ちゃんが求めてるのは、私の薬師としての力って事かい」


老婆は葉をポケットにしまい、戸棚から幾つかのモノを取り出した。

そして、それを机に並べていく。


「これが、麻痺毒。これが神経毒。そして、これが魔力中毒薬だよ」


老婆はその並べたモノの解説を始めた。

突然のことにエリーは最初驚いていたが、それをシッカリと聞く。


実はというわけでもないが、エリーは勉強好きである。

知識欲が強いのだ。


だからこそ、母親の植物解説にも飽きずに聞くことができたし、老婆の毒の解説を聞くこともできる。

そして、その知識欲と知識のおかげで、前世ではほどほどに稼げる職業に就けていた、


「なるほど。じゃあ、少量で殺すなら?」


老婆の話が一段落したところで、エリーはその知識と今までの知識を結びつけて考えた。

因みに、今までの知識とは、前世でのゲームで得た知識のこと。


「少量で殺す?……それなら、これ、かしらねぇ」


そう言って、老婆は神経毒と、魔力中毒薬を混ぜた。

すると、赤色だった神経毒と、黄色だった魔力中毒が混ざったことで、オレンジ色のモノができあがった。


「これが、神経に大量の魔力を流させ、全身の神経が切れる毒。即死毒だよ」

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