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悪役令嬢、回想終了

「何ですの?その試験免除の条件は」


エリーは学長に詰め寄る。

学長はその様子に苦笑しつつも、少しうわずった声で、


「その条件は、平民として入学試験を受けて頂き、主席を取って頂くことです。ただ、学力の前に平民としての身分も必要ですし」


必要ですし、無理でしょう。

エリーには学長がそう言いたいことが分かった。


だからこそ、エリーの笑みは深まった。

なぜなら、


「私、実はファララ商会という所で商品開発と提供を行ってますの。()()として」


エリーは悪役らしい笑みを浮かべた。

それによって、盛大に学長の頬が引きつる。


「い、いや。ですが、そこから主席を取ると言うことも」


「分かってますわ。ですので、とりあえず入学試験だけ受けさせて頂きますわ。主席がとれなければ、この話はすっぱり諦めます」


エリーには無理だろう。

そう思ったからこそ、学長は少しだけほっとしたような表情をしていた。


帰宅後。

学長から聞いた話と、自分の意見を父親に伝えた。

それに父親は、


「主席になれなければ諦めるというのであれば、それで構わない。主席がとれるのであれば、それはそれで役に立つしな」


といって、了承した。

エリーは父親の許可も受けたので、その日から夜に勉強を追加で行う。


そして、受験日。

エリーは数枚の紙に向き合っていた。


 ーーこれは、本で読んだことがあるわね。

周りの受験者が頭を抱える中、すらすらと問題を解いていった。


魔法学、歴史、数学、化学、地学、現代語。

エリーはそれぞれの教科で、何の苦もなく問題を解くことが出来た。


それによって、結果は当然と言うべきか。

結果発表の日になって、


「主席クレア。って、書いてありますわね」


エリーは1番上に書かれた名前を見てニヤリと笑い、父親へ報告した。

流石にエリーが主席をとれるとは思っていなかったので、父親は頬が引きつる。


「お、おお。よく頑張ったな。や、約束通り、平民の学部に通うといい!」


その後家族に報告し、友人たちに報告し。

ただ、それ以外には学校関係者くらいしか知っているモノなどいない。


そうすることによって、エリーは目立たず楽しいキャンパスライフを送ることが出来る。

予定だ。


思い起こすのが、エリーのコレまで。

エリーは思い出した諸々に、少し懐かしさを覚えながら、


「……平民学部主席。クレア」


挨拶を終えた。

直後、パチパチと拍手の音が聞こえてくる。


ただ、拍手をしているのはほとんどが平民の学部の生徒たち。

貴族の学部のモノたちは、興味すらないという表情だ。


 ーー話には食いついてきてたけど、こういう所はシッカリとしてるのね。

クレアことエリーがそう思いながら横を見ると、


 ーーうわぁ。貴族はやってないのに。

王族の2人が拍手をしていた。


エリーがなんとも言えない目を2人に向ける。

すると、2人は息ぴったりに、


 ーーいや、親指立てても、何がグッジョブなのか分からないわよ!!


そんなこともありながら、入学式は終わりを迎えた。


「クレアちゃん、主席だったんだ!凄いんだね!!」


「そう?別に、凄くはないけど、褒められるのは嬉しいわね」


「ふふっ!友達が主席なんて、誇らしいよ!!」


入学式も終わり、クレアことエリーとアンナリムは2人で話しながら歩いていた。

話の内容は、エリーが主席であること。


「あっ!そうだ!私、勉強苦手だから、勉強教えてよ」


「かまわないよ。ただ、全部私が教えると時間が掛かりすぎるから、授業を聴いて分からないことを聞いて頂戴」


「分かったぁ!ありがとね。クレアちゃん!」


「いやいや。友達のためなら、それくらいはするわよ」


クレアがそう言うと、アンナリムは満面の笑みを浮かべる。

 ーー主人公が来たら、この子はどうなるのかしら?私と友達で居続けるというのは、流石に楽観的すぎるわよね。


エリーはそんなことも考えながら、会話をしつつも今後の予定を考える。

そんなことをしている間に


「着いた!ここが寮だね!」


「これが、私たちの寮」


生徒たちは、平民も貴族も関係なく寮生活である。

ただ、あまりにも数が多いので、寮は幾つかに割れている。


寮は、全部で6つ。

貴族用や平民用という感じではあるが、区分は更に細かい。


では、クレアが入る寮は、


「ここが、優秀寮かぁ」


隣のアンナリアが呟く。

それから2人は見つめ合い、寮へと足を踏み入れた。


「おっ!」

「新人が来たか!!」

「いらっしゃぁい」


出迎えるのは、数十人の先輩たち。

では、なかった。


 ーーここが優秀寮。天才の巣窟。

エリーは警戒を欠かさず、周りを見回す。


この優秀寮は、エリートのみが入ることの出来る寮。

加護を持つモノと学年での成績5位までしか入ることの許されない寮だ。


「いらっしゃい。可愛い後輩ちゃんたち。まずは、コレにサインをしてくれるかな?」


クレアたちを出迎える先輩たち。

その中から、緑の髪の女性が出てきて、紙を差し出してくる。


「ん、これは?」


クレアは差し出された紙に首をひねる。

アンナリムの方も、同じように不思議そうにしていた。


「それは、ちゃんとここに入れるかどうか確認するための書類だよ。たまにだけど、どうしてもここに入りたい子が条件をクリアしていないのに入ってきちゃうことがあるから」


「そうなんだねぇ。まあ、面白そうな気持ち分かる!」


アンナリムが楽しそうな顔で言う。

先輩であろうと、敬語は使わない。


この世界において、年齢で優劣が付けられることはないのだから。

大事なのは、身分と能力。


たった1、2年早く生まれたところで関係なく、能力が高ければ後輩だろうと敬語を使う。

貴族の場合は別として、この世界はそういう風習があった。


そんな気質を実感しつつ記入を終えると、


「2人ともごめんね」


先輩は謝ってきた。

因みに、他の出迎えの先輩たちは後から来る生徒たちのために待機中である。


「え?私たち、何かされた?」


アンナリムは首をかしげる。

ただ、クレアには先輩が謝る理由が分かっていた。


「構わないわ。寮の全員が出迎えるなんて伝統、ここの人たちの研究に比べる価値もないもの」


「そう言ってくれると助かるよぉ。変にプライドが高い子がたまにいてさぁ。しかも、そういう子が5番目とか言う微妙な順位で入ってきたりしてさぁ」


「へぇ。大変なんだねぇ」


学生寮には、寮の先輩全員が後輩を出迎えるという伝統がある。

だが、この優秀寮では研究者気質のモノが多く、それを無視したり、気付いてなかったりするモノが多いのだ。


本来なら50人近くは寮に生徒がいるはずなのに、20人以下しか出迎えがいないのは、そういうことなのである。

先輩は頭を押さえ、小さくため息をついた。


「まあ、2人も強制はしないから。でも、出来れば、何かあった時は参加してくれると嬉しいな」


「は~い!私はあんまり研究気質じゃないから、参加しようかな」


「助かるぅ。参加人数が少ないから、困ってたんだよぉ」


アンナリムは笑みを浮かべながら参加すると言う。

先輩は、本当にありがたそうにお礼を言った。


「私は、商会の仕事さえなければ参加できると思うわ。研究は出来るときにやればいいけど、商会の仕事の方は早いほうがいいから」


「ん?クレアちゃんは商会で働いているのかい?」


「え?クレアちゃん。そうなの?」


先輩だけでなく、アンナリムも驚いていた。

クレアは無言で頷き肯定しておく。


「へぇ。凄いねぇ。私なんて、魔道具を作ったはいいものの作り方は難しいし素材は貴重だしで売り物にならないって言われたんだよぉ」


「そうなの?それは災難(?)ね。……ああ。そう言えば、先輩の名前を聞いてなかったわ」


「ああ。言ってなかった?私、ジャミュー・ポーラッセ。一応最上級生の主席だよ」


ジャミューは笑顔で自己紹介。

 ーージャミュー。名前は数回出てきたけど、立ち絵は出てこなかったモブキャラね。


主人公も優秀寮に入ってくるので、ジャミューはゲームに出てくる機会が数回あった。

ただ最上級生と言うこともあり、出てくる期間は短い。


そのこともあって、出番自体も少ない。

会話は出会ったときの挨拶、そして、研究の話。


他にも幾つかあったが、主な会話はそれくらい。

因みに研究に関しては、ゲームに出てきた内容だけ見るとよく分からなかったが、


 ーーそういえば、魔力を圧縮させる研究をやっていたんだっけ?興味深いわね。

クレアは前世には理解できなかった研究について興味が湧いた。


「ジャミューは、どんな研究をやってるの?」


アンナリムも興味が湧いたようで、質問する。

ジャミューは、その言葉を待ってましたとばかりに目を輝かせて胸を張り、


「わた」「おっ!新人が来たぞ!!」

「いらっしゃぁい!!」


「…………」


自信満々に言おうとしたところで、新入生が来て邪魔された。

ジャミューはかなりまだ話したそうな顔をしている。


「後でまた聞くから、今は新入生の対応してきたら?せ・ん・ぱ・い」


「そ、そうだね。そうさせてもらうよぉ」

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