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悪役令嬢、恋愛強者?

「あ、ありがとうございましたぁ」


最後の餌やりも終わり、エリーたちはサーカスを後にした。

帰りながら、エリーはレベルが上がったスキルのことを考えた。


 ーーなんで精神支配のレベルが上がったのかしら?私、司会者の精神に影響は与えていないはずだし。あそこで様子がおかしかったのはオーガくらいだったけど……。

そこまで考えて、更に頭をひねるエリー。


「オーガ、まるで何かに怯えてるみたいでしたね」


悩むエリーの横で、アシルドが無邪気な声を出した。

エリーはどういう事かとアシルドへ目を向ける。


「そういえば、ひざまずいてる感じだったし」


バリアルもアシルドに同意。

それから、途中までで言葉を止め、エリーを見た。


「どうかされましたの?」


「いや。もし怯えてるんだとしたら、怯えられていたのは、司会の人か」


司会の人。

もしくはエリー。


 ーーえ?私じゃないわよね!?司会者の人が怖かったのよね!?




なんてこともありつつ、


「いやぁ。楽しかったね」


「そうですねぇ。僕もお土産沢山買えて嬉しいです!」


バリアルとアシルドが、エリーの横で騒ぐ。

エリーたちは旅行が終わり、現在帰国中だ。


まだ暗い時間。

エリーは潮風を感じている。


「貿易もできるようになりましたし、私も色々と楽しかったですわ」


エリーは兄弟たちに合わせて言う。

だが、2人は少し冷たい目でエリーを見た。


「エリー。僕たちとの思い出より貿易の方が楽しかったんだね」


「お姉ちゃん。もう少しお金以外のことにも興味を持って下さい」


2人からのふてくされたような声が、エリーの心に刺さった。

 ーーあっ。もしかして、地雷踏んじゃったかしら?


エリーは嫌な予感がしたので、すぐに対応を始める。

こうなった場合、効果的なのは、


「ご、ごめんなさい。もちろん、2人と色々行ったのも楽しかったですわよ」


変な言い訳をしないことだ。

掘った墓穴が大きくなければ、素直に謝るのはかなり効果的である。


そうして口が滑ったと反省しつつ帰国までの間ゆっくりしていると、


「エリー様!!」


エリーを呼ぶ声が聞こえた。

エリーは何事かと不思議に思いながら声のした場所へと向かう。


「どうしましたの?」


「ふ、船が大量に迫ってきています。おそらく略奪目的の海賊船かと」


船乗りの男が焦ったような表情で報告をする。

エリーも、流石に今の情報だけでは判断できなかったので、直接状況を見ることに。


「……うわぁ。確かに、海賊船に見えますねぇ」


エリーは迫る船を見ながら呟いた。

相手の船は小さいのだが、数が多い。


「こうなったら、新兵器を出しますか」


「おぉ!ついにアレを出されるのですね!すぐに用意致します」


エリーが怪しい笑みを浮かべると、考えを察した男が動いた。

 ーー科学の力、見せてあげるわ!!


ただ一応その前に、


「何用だ!!」


エリーの船の船員が叫ぶ。相手の所属を確認しておく必要はあると考えての事だ。

すると、向こうからの返答は、


「ひゃっはぁ!!その船と、金目の物をよこせぇ!!!」


というものだった。

役人の振りをすると言うこともないらしい。


「自分から悪人だと言ってくるのですから、相当なモノなのでしょう。やってしまってください」


エリーはあきれた顔をしながら、船員に命令した。

指示された船員たちは新兵器を構えた。


今まで、船についている兵器は毒龍に襲われた魔物船が使ったような光る球だった。

あれの材料は、特殊な金属と大量のエリーの魔力。


純粋な魔力のエネルギーを放射して攻撃していた。

だが、今回の新兵器は、そんな力業ではない。


「一応聞いておく!何をされたか知らずに死にたいか、それとも!恐怖に怯えながら死にたいか?」


「はぁ!死ぬのはお前らだっての!!」

「「「そうだそうだ!!」


船員の言葉に、海賊たちは馬鹿にしたように騒ぐ。

直後、


ドオオオオォォォンンッ!!

大爆発が起こった。


爆発の起きた地点では、数十隻の船が沈み、焼け、消滅している。

勿論その中の人が無事なわけもなく。


「………へ?」

「え?何が、起きて?」


その光景を見て、数秒固まっていた海賊たちだったが、やっと回復してきた。

彼らも、何が起こったのか把握できていない様子。


「うぅん。予想通りと言ったところですわね」


「そうですね。風の影響を受けても、この程度でしたらおそらく大丈夫でしょう」


逆に、エリーたちの方は冷静な分析を行っていた。

そして、分析だけではなく、


「それでは、第2射いきます!」


「はい。お願いします」


ドオオオォォォォン!!

また爆発が起こった。


これだけで、海賊の半分以上が壊滅したのである。

さすがは科学。


さらに数分後、

ドオォォォオンッ!!

という相変わらずの音と共に大爆発。

そして、


「殲滅成功しました」


爆発後、しっかりと残党が無いか確認してから、船員が敵の全滅を告げた。

エリーは満足そうに頷く。


「新兵器は成功と言うことですわね」


エリーが新兵器として使ったモノ。

それは、ナトリウムだ。


ナトリウムは、水に入れると爆発を起こす。

ナトリウムを手に入れるなら、海水を溶融塩電解すればすぐに手に入る。


簡単に言うと、

海水に雷魔法で電気を流し、そこから出てきたモノを水中に入れると爆発を起こす。といった感じだ。


「簡単に作れますし、コレは良いですねぇ」


船員が深く頷く。

エリーはそれを聞いて、


 ーーコレでテロとか起こされないわよね?できるだけ製造方法は話さないように言っておかないと!!

と、他の所で使われないか心配になるのであった。


こうして新兵器の使用も行ないながら船は進んでいき、


「ふぅ。疲れたぁ」


「ん~。長旅でしたわねぇ」


エリーたちは自宅へ帰ってきた。

元気いっぱいである子供のアシルドやバリアルも、船での長旅や異国の文化に触れて流石に疲れている。


だが、そんな疲れているときにも、時間は待ってくれなかった。

父親が手に紙を1枚持ってエリーたちの前に現れる。


「お父様、どうされました?」


「実は、王から手紙が届いてな。……公爵家を集めてパーティーを開くそうだ」


父親の言葉を聞いて、エリーたちの目の色が変わった。

王がパーティーを開くというのは、あまり珍しいことではない。


だが、公爵家を集めて、という言葉が引っかかったのだ。

あまり公爵家だけを集めてパーティーを開くと言うことはない。


「何か、極秘の情報が明かされるのでしょうか?」


エリーは思案顔で呟く。

父親もそれに同意するように大きく頷いた。


 ーー王族主催のパーティ。変なことが起きなければいいんだけど。





時間は少し遡って。

エリーたちがアーニ王国へ旅行に行っている間。


「毒龍が壊滅したか」


いつもくらい雰囲気だった空間が、その日はいつにも増して暗かった。

その部屋に集まっているのは、貴族のモノたちや教会関係者。


エリーの暗殺などを計画していたモノたちである。

現在彼らは毒龍が壊滅し、打つ手がなくなっているのだ。


「こうなってしまっては火傷蜥蜴にもう逆らえないぞ」


「そうだな。くそっ!俺たちはこんな所で死ぬのか!?」


彼らは悔しそうに呟いた。

だが、その言葉の節々に諦めが感じられる。


「……なぁ。どうせ死ぬなら、せめてあの小娘を殺して俺たちの子孫が生き残れるようにしないか?」


そんな中、諦めたからこその発言が出てきた。

周囲のモノたちも、諦めムーブになっていたのでそれに賛同する。


「いいな。せめて、ヤツだけでも道連れに」


「ハアピ家の飛躍を止められるなら」



貴族や教会のモノたちはエリー殺害を目論んでいるのだが、エリーはそれを知ることができなかった。

エリーは一応警戒していなかったのだが、盗聴をしていなかったクラウンのモノたちは完全に終わったモノだと考えていたのだ。


そのため、ここでエリーに思いがけない危機が迫ることとなった。

そんなことも知らず、エリーは、


「あの2人をお友達として紹介する予定だったわね。予定表に、どのパーティーでやるか書いておかないと。あと、他の貴族にもパーティーの招待を受けてるんだっけ?」


と、自室でのんきに予定を立てていた。

しかも、その予定は王城でのパーティーの後のモノである。


コンコンコンッ。

「失礼致します」


そんなことをしていると、専属メイドのメアリーが入室。

その顔は、どこか明るい。


「あら?計画は順調のようですわね」


「はい!エリー様の考えて下さった『バリアル様とアシルド様に優しくして、大人な感じを見せつけよう作戦』は順調です!!」


メアリーは目を輝かせて言う。

エリーはその様子に、満足そうに頷いた。


エリーの専属メイドであるメアリーは、バリアルやアシルドに好意を抱いている。

年下好きという風に思えるかも知れないが、王子や他の貴族の子供などには食指が動かないらしい。


メアリーは、エリーも気に入っているし、そんなメアリーのために、エリーが考えたのが、

『バリアルとアシルドに優しくして、大人な感じを見せつけよう作戦』である。


普段、貴族である2人は恋愛などとは無縁。

優しくされても、確実に裏に何かあることが当然。


貴族社会で生きることは、かなりストレスが掛かることなのだ。

さて、そんな中で、裏のない優しさを見せてくれる相手がいたらどうなるだろうか?


もちろん、落ちるだろう。

可愛い弟に優しくするお姉ちゃん的な感じを見せられれば、即落ち間違いなしである。


「私が考えた割には、まともな感じがしますわ」


「え?エリー様のお考えは、素晴らしいモノばかりな気がしますが」


メアリーが不思議そうに言ってきたので、エリーは「そうかしら?」と笑う。

すると、メアリーのスイッチが入ったようで、急にエリーの素晴らしさについて熱く語り出した。


それを聞き流しながら、エリーは勝手に自分が進めている作戦の方も成功しているようだとか苦心する。

その作戦は、


初心(うぶ)な男の子を落とすならコレ!ドキドキ!ラッキースケベ大作戦!!』である。

 ーー私が恋愛に絡むと、ゲーム知識のせいでろくな事にならないわね。

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