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悪役令嬢、まさかの成功

ブシュブシュブシュッ!

次々と吹き上がる赤い液体。


そして、次々と倒れていく火傷蜥蜴の構成員。


「ふむ。こんなモノか」


エリーはそれを眺めながら呟いた。

直後、


ヒュンッ!

エリーの頭を上を、固いものがかすめた。


明らかに殺すつもりだったと分かる。

エリーは反撃として、後ろ蹴りを放った。


「ガハッ!!???」


エリーの蹴りを受けた少年は、血を吐きながら吹き飛んだ。

エリーはその顔を見て、


「久しいな。『左腕」」


笑みを浮かべた。

エリーのことを殺そうとしたのは、火傷蜥蜴の幹部である『左腕』だったのだ。


「くそ。仕留められなかったか」


『左腕』は顔をゆがめた。

そして、素速く横へと駆けだす。


それはまるで、エリーから逃げていくよう。

……否。逃げているのだ!!


「我から逃げられるとでも?」


内心『左腕』が予想より速いことに焦りながらも、余裕のある声色でエリーは話しながら追いかける。

すると、『左腕』の顔が更に歪む。


「ふざけんな!なんでこの速度を見て平然としてられるんだよ!!」


 ーーいや、平然としていませんが?逃げられるんじゃないかと思って焦っていますが?

エリーはそう思いながらも、ポケットに手を入れる。


取り出すのは、やはり呪いの装備。

エリーはそれをはめ、右腕に霧を纏わせる。


「フンッ!」


地面に手をつき、手で地面を押した。

霧を纏った腕は通常ではあり得ないほどの力を生み出し、尋常ではない加速力を生み出す。


「我から逃げるなど、百年、いや死んでも早いな」


ゴンッ!

と、エリーの拳が『左腕』の後頭部に激しく衝突する。


それを受け、『左腕』はそのまま前に倒れた。

それを逃がさず、


「『ダークバインド』」


エリーは魔法で拘束を行った。

『左腕』の下から黒いモノが現れ、そこから飛び出したモノが『左腕』を縛る。


「くそっ!拷問でもするつもりか!」


『左腕』はエリーを睨み付ける。

エリーはそれも良いかも知れないと思ったが、そこで、


 ーーそういえば、私、この子を勧誘するとか宣言しちゃったんだった。

ということを思い出した。


「……お前、我が軍門に降る気はないか?」


エリーは一応尋ねてみた。

ただ、その質問をしてから更に睨み付けが強くなったので無理だろうと思ってる。


「俺を勧誘か。一体どれだけ高い地位を用意してくれるんだろうな?」


「ん?…………お前は、補給部隊でもしてるのがお似合いだ」


「補給部隊、だと!?」


『左腕』の声に力がこもった。

エリーは、いつ反撃が来ても構わないように意識を集中させる。


「なんだそれ」


『左腕』の拳が強くにぎり混まれる。

拘束を破られることも考慮して、エリーはポケットの呪いの装備に触れた。


「火傷蜥蜴で最強と言われた俺が、補給部隊だと?」


『左腕』が震えだした。

 ーーうわっ。もしかして、凄い怒ってるのかしら?震えるほど怒るなんて。


「最強?我に負けた時点で、最強ではない」


「そ、そうか」


エリーが放った一言で、『左腕』のトーンが少し落ちた。

エリーは、更に怒るモノではないのかと首をかしげる。


その時だった。

『左腕』がバッと顔を上げる。


「勿論お前について行く!よく分かったな。俺が戦いを嫌いだって!いやぁ。戦ってて分かるモノなのか?」


感心するような声を『左腕』は漏らした。

エリーはそれに無言で肩をすくめる。


勿論心の中では、

 ーーえ?戦うのが嫌い?本当に?火傷蜥蜴最強なんじゃなかったの!?

と、焦っていた。


だが、エリーはすぐに思考を切り替える。

エリーは前世で活躍してきた中で、大事な技術を身につけているのだ。


「分かる。とはいえ確実ではなかったから、賭けではあったがな」


「ほぉ。凄いな」


それが、空気を読む。という技術。

社会で生きていく中で、必須の技術。


詳しい事を言えば自己主張とのバランスが大事であり、空気を読むだけでもいけないのだが。

その辺りも、エリーも理解できている。


「我につくというのなら、拠点に連れて行きたいところだが」


エリーは少し悩んだ。

自分が連れて行くとなると、自分の正体を教えてしまうことになる。クラウンだというところではなく、エリーだというとこrを。


だがそこで、


「私が案内しますね」


エリーの前に、セカンドの妹である100(ワンハンドレッズ)が現れた。

エリーは突然のことに戸惑いながらも、


「任せた」


瞬時にそう判断した。

自分じゃできないから、他人に任せてしまおうという他力本願的な考えである。


「それでは、失礼致します。あなた、ついてきなさい」


「え?お、おう」


エリーの前から、100(ワンハンドレッズ)と『左腕』が消えた。

直後、少年の悲鳴が聞こえた気がしたが、エリーは気にしなかった。





なんていうあまりにも予想外な展開を迎えた次の日の朝。

エリーたちは父親の周りに集まっていた。


「よし。では、はぐれるなよ」


「「「はぁい!!」」」


元気の良い返事。

その返事は、エリーを含めた子供3人のモノだった。


 ーーこの子供らしい演技をするのも久しぶりねぇ。

エリーは久々にした演技に懐かしさを覚える。


《『演技LV5』が『演技LV6』になりました》


演技もレベルアップ。

良い旅ができそうな予感がした。


「それでは行くぞ」


父親が建物を出た。

その後に続いて、家族がぞろぞろついて行く。


「お兄様。アシルド。行きましょう」


エリーは兄弟に声をかけ、自分たちも歩き出す。

 ーー絶対こんな団体が歩いてたら邪魔よねぇ。

とは思うものの貴族としてのメンツなどもある以上余計なことはできず、結局目的地まではその状態で向かうことになった。


向かう先では子供達も楽しめるものが用意されており、


「わぁぁ!!!」


「す、凄い」


目を輝かせている子供2人。

エリーの兄弟である、バリアルとアシルドだ。


「お二人とも楽しめているようですね」


エリーは微笑む。


今見ているのは、サーカスのようなモノ。

弱い魔物を使って劣化版のサーカスが行われていたのだ。


「うわぁぁ!!!火の輪をくぐったぁぁ!!!」


「あ、あんな細い綱を渡れるんだ」


兄弟たちはサーカスから目が離せない様子。

ただ、正直に言ってエリーは飽きていた。


 ーー流石にしょぼいわねぇ。

そうなのだ。しょぼいのだ。


エリーが前世で見たサーカスの方が迫力があった。

 ーー早く終わらないかしら。

そう思い続けること数十分。


「さて、それでは最後に、魔物への餌やりをやるよぉ」


最後。

そう聞いた手、エリーの目が輝いた。


 ーー終わるのね!やったぁ!!!

が、その直後に、感情が変化する。


「それではぁ、……そこのお嬢ちゃん!来てくれるかなぁ?」


そう言ってピエロのような格好のモノが手招きをした。

その目はエリーの辺りを見ている。


 ーーん?どの子かしら?

エリーは周りを見回すが、女の子が近くにいる様子はない。


「……もしかして、」


「ほら。お嬢ちゃん。おいで」


エリーが自分のことかと自分に指を指すと、ピエロは頷いた。

仕方なくコレも経験だと考え、立ち上がる。


「エリー。楽しんでおいで」


「お、お姉ちゃん。頑張ってください!!」


兄弟たちに見送られて歩いて行くと、そのままステージ上へと誘導される。


「それでは、お嬢ちゃん。覚悟は良いかな?」


「え?ええ」


司会者の問いかけに、エリーは頷いた。

司会者はそんなエリーに、生肉のようなモノを手渡してくる。


「さて、それでは、魔物を呼んでみよう!皆も一緒に呼んでみようね!それじゃあ、いくよ!!オーガァァァァ!!!」


「「「オーガァァァ!!!!」」」


司会者が叫ぶと、それに続けて子供たちも叫んだ。

 ーーどこのヒーローショーよ。


エリーがあきれたようにツッコんでいると、奥の方で動きがあった。

背の高い何かがゆっくりと近づいてきて、


「グオオオォォォォォォ!!!!!」


叫んだ。

さっきの子供たちの大声とは違い、恐怖を感じさせる声。


「さて、お嬢ちゃんには、このオーガに餌やりをして貰うよ」


司会者はそう言うと、エリーに手招きをした。


「はい。どうぞ」


エリーは、オーガに肉を差し出す。

肉は長い棒の先にくくりつけられており、エリーに危害がないようにしてあった。


だがオーガという魔物は、そんなモノを気にしない。

強靱な肉体を持つオーガは、全身についている鎖を壊し目の前にいるエリーという少女へ、


「グアアアァァァァ!!!!」


「っ!?オーガ!とまれ!!」


司会者の静止も聞かず、オーガはエリーの前に、

ひざまずいた。


「「え???」」


エリーと司会者は一瞬固まる。

なぜ、オーガがひざまずいたのか分からない。


「うん。素晴らしいしつけがされているんですわねぇ」


エリーはそう納得し、肉をあげた。

オーガはそれを跪いたまま受け取り、食べていく・。


《『精神支配LV5』が『精神支配LV6』になりました》

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