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悪役令嬢、貿易しましょ

「「え?」」


国王と、その国王を探しに来た男性は、呆けた。

それから先に動いたのは、探しに来た男性で、


「も、申し訳ありません!まさか、かのハアピ家の方々とはつゆ知らず。陛下の代わりに謝罪させて頂きます」


すぐに頭を下げてきた。

エリーたちは顔を合わせ、首をかしげる。


「え?なぜ謝られるのですか?」


「謙遜なさらないでください。ハアピ家と言えば、近年急激に勢力を伸ばし、技術の発展を促し、現在小国さえしのぐほどの力を持った1番の有力者ではないですか」


エリーたちはまた顔を見合わせてた。

まさか、外国からはそんな風に見られるとは予想していなかったのだ。


「うぅん。……そういえば、ハアピ家当主との会談があるんだよな。どうだ?良かったらお詫びもかねて参加させてやるぞ」


国王の発言に、探しに来た男性は苦笑を浮かべた。

こんな子供を会談に参加させても、意味などないといいたげに。


しかし、


「あら?会談に参加させてくださいますの。是非お願い致しますわ」


エリーは喜んで参加することを決断。

こうして会談が決まったので、バリアルたちとは別行動となった。


そのまま案内の男性に連れられ国王と一緒に移動した先には、当然もう1人の会談の相手が。


「エリー?どうしてここに?」


訳が分からないと首をかしげる父親。

エリーが苦笑を浮かべ、王が事情の説明を行った。


「……なるほど。それは、幸運でした、ね?」


最後が疑問形になる父親。

エリーはその事情を察してなんとも言えない表情を浮かべた。


 ーー命は助かったけど、私から金をむしりとられるだろうから可哀想。とか思ってる顔ね。

エリーは、父親の心情をそう予想した。(完全に正解である)


「それでは、会談を始めようか」


「ええ。まずは同盟の話ですが……」


父親たちと国王が、何やら国政に関する話し合いを始めた。

エリーはこの国の求めるモノを知るため、その会話に耳を傾ける。


そしてしばらくその話が続いた後、


「……では、同盟は継続と言うことで。それでは次に、貿易の話なのですが」


貿易。

その言葉を聞いた瞬間、エリーの目が変わった。


「貿易か。とは言っても、転移陣の現在の状況を考えると、変更点は何も無い気がするが」


王が難しい顔をして言う。

父親は、悩むように手を顎に当てた。


だが、エリーには分かる。

それは、悩んでいるのではなく、笑みを隠しているのだということが。


「ふむ。転移陣しか貿易方法がないから、困りますねぇ。なぁ。エリーもそう思うだろう?」


「ええ。困りますわね。私たちと違って、転移陣しか貿易方法がない方々は困りますよねぇ。私たちと違って」


問われたエリーは微笑んだ。

エリーも、父親に乗ることにしたのだ。


「……ふむ。かなり煽られているな。で?何が言いたいんだ?」


国王はあきれた顔をしながら尋ねてくる。

父親は、胸を張っていった。


「我が娘が説明しましょう」


 ーーいや。私かい!

エリーは片眉をピクリと反応させたが、すぐに気持ちを切り替える。


「分かりましたわ。お父様の頼みとあれば断れません。シッカリとご説明致しましょう。まず、私どもがここに来るために乗ってきた船を、国王様はご覧になられましたか?」


「え?あ、ああ。まだ見ていないな」


エリーの質問に、国王が戸惑いながらも答える。

エリーはその答えを受けて素速くプレゼン内容を考えた。


「では、先に私たちの船をご説明しますね」


とりあえず自分たちの作った船について解説していく。

最初は戸惑い気味だった国王の表情も、これを聞くと驚きと興奮に染まっていった。


「ほ、本当なのか?」


信じられないといった顔で、国王が尋ねてくる。

エリーは、余裕の表情を浮かべた。


「本当です。……ということで、私どもに沿岸部の一部の地域を貸して頂けませんか?」


「は?いや、何で貸さなきゃ行けないんだ?」


「決まってるではないですか」


エリーは自信ありげに微笑んだ。

すでに、エリーの中では勝利が確定しているからである。


「沿岸に作るモノと言えば、港。私たちに、港を作らせて頂きたいんですわ」


「は?港ぉ?そんなもの、作らなくても沢山あるだろ」


国王は不思議そうな顔をする。

だが、エリーは首を横に振った。


「残念ながら、ここの通常の港ではサイズが足りないんですの」


「サイズが足りない?……ああ。船が大きすぎてと言うことか」


エリーは国王の言葉に頷く。

すると、国王は悩むように手に顎を当てた。


「まあ、貸してやらないこともないが、こちらの利益がなぁ」


エリーはその言葉で、更に笑みを深める。

そんな言葉も予想済みなのだ。


「ならば、港の売り上げの1割を差し上げましょう」


「……ほぅ」


国王は興味深そうな顔をした。

逆に、父親は意外そうな顔をしている。


それでも口出ししてこないのは、エリーが信用されているから。

…………というわけでもない。


が、止められることもなく話は続いて、


「いいだろう。その条件で、貿易成立だ」


「ふふっ。これからよろしくお願いしますね。あっ。土地の件もお忘れなく」


2人はお互い手を握り合う。

貿易が成立したのである。


エリーは、それから手を離し、父親の方に目を向ける。

父親の顔には、国王たちには見えないようになっているが嫌らしい笑みが浮かんでいた。


「さて、それでは次は……」


父親は新たな交渉を始めた。

ここまでエリーと国王の会談を観察して、国王の性格はおおまかにつかめてたので、交渉を有利に進めるのは容易なことだった。


……。

数時間後。


「……いやぁ。良い会談をさせて貰いました」


「な、なぜこんなことに」


頭を抱える国王の姿を見ることができるのであった。


そうして会談が終われば、泊まる宿へと帰ることになる。

帰り道、エリーは父親と会談の内容を話していた。


「お父様もなかなか良い性格をされていますね」


「そうだろ?まあ、あんなに上手くいったのは、エリーが国王様の対応をしてくれたからさ。おかげでよく観察できたよ」


 ーー相手が国王でも容赦しないわねぇ。

父親の言葉に、エリーは苦笑を浮かべた。


父親はその表情を見て、何かを思い出したように視線を動かした。

そして、海の方を見ながら、


「そう言えば、港の売り上げの1割を渡すなんて、本当に良かったのか?」


父親が、エリーの出した条件について質問してくる。

エリーは少し悩んだような表情をした後、


「おそらく、大丈夫だと思います」


少し不安になる答えを出した。

父親は、エリーのそんな表情を見ることが珍しかったので、少し意外そうな顔をする。


「国王陛下が頭のよいかたなら問題ないはずなんですが、お父様とのお話を聞いていると…………」


「……なるほど。少し、やり過ぎたかも知れないな」


父親が目線をそらしながら言った。

国王を打ち負かしてしまったのが自分なので、エリーの不安を作り出してしまったモノが自分だと気付いたのだ。


「…………」

「…………」


しばらく沈黙が流れる。

数秒経つと、居心地が悪くなったのか、父親が強引に話を振ってきた。


「そ、それで、国王様が聡明であればどうなるというのだ?」


「まず、私は最初に大量の商品を運んでくるつもりです。そうすれば、物珍しさで一定数の方は商品を買うはず」


エリーがそう言うと、父親は不思議そうな顔をした。

そうなったとしても、1割も渡してしまえば痛手なのは間違いない。


だが、


「それから、こちらに持ってくる商品を減らすんです」


「っ!?」


父親は目を見開いた。

きっとこの国で人気の出る商品も沢山あるはずだと理解していたのだから。


「それを減らして国民感情を揺さぶり、条件の引き下げを行うつもりか!?…………我が娘ながら、恐ろしいよ。古典的な方法ではあるが、通用しそうな気がするね」


父親は笑った。

すると、丁度良く宿へと到着。


夕食を食べ、明日の家族での観光のために早めの就寝。

エリーはもちろん、夜の活動へ出掛けた。


「たしか、こっちだったはず」


エリーは聞いた情報を頼りに火傷蜥蜴の拠点を目指した。

走っていると数分後には、それらしい物が見えてくる。


「まずは、挨拶代わりと行くか」


エリーは右手を前に突き出す。

そして、魔力を感じ、


「『ファイアーショット』」


習ったばかりの魔法を放った。

炎の球が拠点へ飛んでいき、木造だった拠点が燃え始める。


「うわぁぁぁ!!???」

「火事だぁぁ!!!」

「水を、水を持ってこい!!」


火傷蜥蜴の構成員たちが焦ったように叫ぶ。

いや、ように、ではなく、実際に焦っているのだが。


「水魔法で時間を稼げ!!」

「『ウォォォォォタァァァァァボォォォォォォル!!!!!』」

「『ウォォォォォォタァァァァァァバレットォォォォォォ!!!!!』」


叫び声と共に打ち出される水の魔法の数々。

すぐに殺そうと思っていたが、その光景を見てエリーは魔法の習得にシフトチェンジした。


「うん。帰ってから練習するべきだな」


エリーは新たな魔法を習得して、すぐに使いたいという気持ちを抑えながら呟いた。

そうしている間に、大きな樽を抱えた筋肉隆々の男たちが戻ってきた。


そして、樽の中身を燃えている場所にかけていく。

そうするとさすがに、


シュッゥゥゥ。

「消火されたか」


とりあえず、表面上の火は消された。

エリーはそれを確認してから、


「ならば、死ね」


ここまで待っていたのは、重要人物がいるかどうかを確かめたかったからである。

幹部クラスなどがいるのであれば襲撃をされたことを知れば即座に逃亡なりするはずだが、そうした様子は見られない。ということで、特に注意せずに処分して良いと考えたのである。

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