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悪役令嬢、下見を満喫

「こちらです」


きっちりした服を着た初老の男性に案内され、エリーたちは大きな屋敷の前に来ていた。

エリーは魔力感知で暗殺者がいないかどうか探る。


そうしていると、


「大きい木造建築。違った文化だね」


隣にいた兄のバリアルが呟いた。

すると、案内をしてくれた男性が顔を輝かせた。


「ほう!そこに目を付けますか。ハアピ家も将来が安泰そうですなぁ」


そう言って大きく頷く。

エリーはその様子を見て、ただ者ではないと苦笑を浮かべた。


 ーー他国の家の将来を考えるんだから、一般の執事ではなさそうね。どこか値踏みするような雰囲気もあるし。高位の人の執事だったりするのかしら?

エリーは男性の職業を推測。


「本日はごゆっくりお休みください。それでは、また明日で迎えに参りますので」


「ああ。頼むよ」


男性はエリーが推測している間に去って行った。

父親はその背を見送った後、目の前の建物へと入った。


 ーーたのしみね。異国の地。


胸を高鳴らせていると早速気になる物が始まって、


パクパクモグモグ。

食卓に並んだ料理を、エリーは黙々と食べる。


「エリー。凄い食べるね。気に入ったの?」


バリアルがその様子を見て尋ねてくる。

エリーは1度ポカンとした表情をした後、首を縦に振った。


「そうですわね。なかなか素材が変わったモノが多くて。………輸入したいですわ」


「……そっか」


兄の目が少し冷たくなったことを、エリーは気にしない。

コイツ金のことしか考えてねぇのかよ、と思われても、決して気にしないのだ。


そsれよりも。


「お父様。明日はどうされるのですか?」


エリーは父親に話を振った。

別に、兄の言葉を気にしたわけではない。ないったらない。


「あぁ。明日は、それぞれ自由行動とする。私は少し会談などがあるから、全員で観光地を回るのは明後日にさせて貰う」


「なるほど、自由ですか」


エリーはどこに行こうかと悩んだ。

とは言っても、この土地のことなどほとんど知らないから、行き当たりばったりにはなりそうだが。


なんてこともありつつ夕食も終わって夜。

ここの夜は、なかなか盛んな夜であった。


「ゲヘヘヘ!」


「いやぁ!やめてぇ!!」


少女に、柄の悪そうな男たちが迫る。

少女は目にいっぱいの涙を浮かべ、怯えることしかできなかった。


「いいじゃねぇか!」


男たちの1人が、少女に手を伸ばした。

その手が、か弱い少女を傷つけようとしたその瞬間、


ブシュュ!!

その手が切られた。


「「へ?」」


男たちも少女も、突然のことに唖然とする。

そうして呆けている間に、


ブシュブシュッブシュッ!!

また多くの血が舞った。


「え?え??」


最後に残ったのは、血まみれのままただただ困惑する1人の少女だけだった。

そんなこともありつつ、


「これで58人」


エリーは自分の下にできあがった血の水溜りを見ながら呟く。

エリーは盗賊ごろ……ではなく、町の下見をしていた。


58という宇数字は、エリーのことを案内してくれた人たちの数。

決して殺した数ではない。


ないったらないのだ!

そんなエリーは、


「ん?あれは」


また案内してくれそうな人を見つけた。

すぐにその人物に近寄り、


パチュンッ!

と、やる。


エリーは、案内してくれそうな人は現行犯でやっている。

普段なら指名手配等で顔を覚えているのだが、残念ながら今はここの指名手配を知らない。


そのため現行犯でやるしかなく、少し効率は悪い。

だがなぜかは分からないが、エリーが祖国でやっていた頃よりも案内してくれる数は圧倒的に多かった。


なぜかは分からない。

祖国ではエリーが殺しすぎて、盗賊がいなくなったとか言われてもよく分からない。


「ん?あの人たち」


そんな風にしてエリーは100人近くに案内して貰って、現在は屋根を伝って探索中。

下見なのだから、探索するのは当たり前である。


少し路地裏のような所に入ると、エリーの目に黒ずくめの集団が映った。

その集団、どこか見覚えがある。


エリーは気になって、少し近くまで行ってみた。

そして、黒ずくめたちの会話に聞き耳を立てる。


「……だろ?火傷蜥蜴の奴ら、こんな所まで来たのか」


「くそっ。こんな所まで俺たち毒龍を追ってくるなんて、奴らは暇なのか?」


毒龍。

彼らの口から、確かにその言葉が出た。


 ーーああ。どこかで見覚えがあると思ったら、毒龍の人たちだったのね。ここまで逃げてたなんて知らなかったわ。

エリーは生き残りの今後が気になったので、会話に集中する。


「そういえば、奴らの拠点が南の方にあるらしいな」


「ああ。あそこさえ潰せれば、もうちょっと長く生き残れるだろ」


 ーーよし。そこ潰そう。

エリーは即決した。


だがそれは、少し後回しだ。

今はさすがに遅くなりすぎてしまったのである。



「エリー。おはよう」


「おはようございます。お兄様」


ということで翌朝。

エリーたちはまた食卓を囲んで集まった。


「さて、今日は、言っていたとおり各自での観光だ。色々と異国の文化に触れ、楽しんできて貰う何かあれば、ここのモノに言ってくれれば、私に話が来るようになっている」


父親の話を、家族は黙って聞く。

ただアシルドとバリアルはエリーのことをチラチラと見ているので、一緒にまわりたいのだろうと言うことは容易にくみ取れる。


「それではまた夜に会おう。解散だ」


そして早速自由時間。

エリーは席を立ち、バリアルとアシルドの子供3人で集まる。


「それじゃあ、私も一緒に行こうかしら」


そこに追加されるのは3人に近づいてくるエリーの母。

エリーの母であれば特に反対する理由もなかったので、4人で行動することが決まった。


それぞれ気になる場所などはあるようだが、


「まずはこちらになじむために、こちらの服を買いますか」


エリーがそう提案すると、全員が賛成した。

ということで、エリーたちは服屋を目指す。


「ここですわね」


エリーたちは迷うこともなく服屋に着いた。

昨日の夜の下見の成果が出たわけだが、それには弊害もあって、


「エリー?服屋の場所を知ってたの?」


「え?あぁ~。……昨日、移動している間に見かけたんですのぉ」


という、ちょっと危ない場面もあった。

その後は特に問題なく服を買え、エリーたちは自由気ままな散歩へと出掛ける。


「ん?あっ!危ない!!」


そうして散歩している間に、突然バリアルが叫んだ。

その瞬間には、エリーの体が動いている。


ドンッ!

上から降ってくる木箱に当たりそうだった男性を、エリーが突き飛ばした。


「大丈夫ですか?」


エリーは、突き飛ばした男性に手を差し伸べながら尋ねる。

男性はその手を取り、


「助かったのである。褒めて使わそう」


なんてことをほざいた。

エリーはその偉そうな感じに苦笑しつつも、笑顔を浮かべる。


「どういたしまして。おけがはありませんか?」


「ああ。ないとも。麗しき少女よ。……ふむ。どうだ?我の養子になる気はないか?」


周囲の空気が固まった。

エリーはその言葉を受けて、とても焦る。


「あ、あの。頭でも打たれましたか?1度休める場所に」


「いや。大丈夫だ」


「いやいや。私の突き飛ばし方が悪かったかも知れないですし、やはり心配です」


「いやいやいや。君の突き飛ばしは実に優しさがあふれていたよ」


いやいや。

いやいやいやいや。

と、2人はしばらく言い合い続けたのであった。


それはなかなか長時間続くもので、


「……はぁはぁ。なかなか頑固ですわね」


「……はぁはぁ。其方の方こそ、なかなか粘るではないか」


エリーと助けられた男性はかなりの時間言い合っても決着がつかず、肩で息をしていた。

切りも良いし、これからどう別れようかとエリーが考えていると、


「陛下。探しましたよ」


疲れ切った声が聞こえた。

エリーが声の主に目を向けると、そこにいたのは眼鏡をかけた30代くらいの男性。


 ーー隈がひどい!若いのに!

エリーは男性がとても心配になる。


なお、30代を若くないといった奴はエリーの本気の攻撃が来るため発言の撤回を急いで行わなければならない。


「……って、陛下?」


エリーは大事なことに気がついた。

今、この男性は陛下と言ったのだ。


「おう。レガリス。来たか」


「来たかではありませんよ陛下。会談があるのに、何をしているんですか」


エリーたちの首が、ギギギギッと、応えた男性の方へ向く。

陛下と呼ばれたのは、エリーが助けた男性だった。


「「「えっ!?陛下!????」」」


「え?陛下?ほ、本当に国王陛下なんですの!?」


エリーは嘘だと言って欲しかった。

だが、


「ん?分かっていなかったのか。そうだぞ。俺がこの国の王。ダンガスだ」


エリーの期待は打ち砕かれた。

こんな奴が国王なのかと膝をつきたくなるが、すぐに気持ちを切り替え、


「それは、申し訳ございません。無知なモノで、国王様のお顔を理解しておりませんでした。今までの非礼をお許しください」


エリーは頭を下げた。

相手が国王だというのなら、これ以上の失敗は許されないのだ。


「はははっ。構わない。許してやろう。……それでは、知らなかったならもう1度聞こう。我の養子になる気はあるか?」


「ございません」


エリーはきっぱりと言った。

流石に即答で断られるとは思っていなかったので、国王は目を丸くした。


そこでエリーの母親が目に出て、


「申し訳ありません陛下、私ども、現在この国に滞在させて頂いているハアピ家のモノであり、この子はハアピ家の長女なのです」

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