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悪役令嬢、魔法だぁ!

エリーが『左足』の傷を治し、少し沈黙が訪れた。

そこで、エリーは質問をしてみることに。


「さて、ではお前には火傷蜥蜴の内情を話して貰おうか」


エリーは敵の事情を知ることにした。

敵を知り己を知れば百戦あやうからず。

みたいな感じである。


「火傷蜥蜴は、慌ててたよぉ。毒龍が異様に強いし、この国から追い出されるしぃ」


そう言って、『左足』は小さくため息をついた。

エリーはその様子を見て、少しやり過ぎたと、


思わなかった。

 ーーいえぇい!なんかよく分からないけど、上手くいってるっぽい!!


「まあでも、今回は精鋭の半分くらいをここに投入したからねぇ。毒龍を殺せたのは嬉しいけど、その精鋭がほとんど死んだのは痛手だったんじゃないかなぁ」


「……なるほど」


エリーは素速く頭を巡らせた。

今までの話から考えると、


「まだ、足りないか」


そう判断せざるをえなかった。

そうなると、やることも変わってくる。


「お前たち。集まれ」


まずエリーは拠点にいるメンバーに声をかけた。

そして、良い感じに集まってきたところで、


「これより、緊急会議を行う。議題は、これからの方針についてだ」


「はいっ!」


エリーが議題を示す。

すると、早速1人が手を上げた。


「もっと火傷蜥蜴の幹部を引き抜けば良いと思います」


元気の良い声で提案される。

拠点は、数秒間静まりかえった。


「あぁ。うん。良い意見だね」


「そ、そうだねぇ。ほ、他の意見も聞いてみようかぁ」


他のメンバーは気を遣った。

クラウンは、アットホームな優しい闇の組織なのである。


「……もう少し掘り下げるぞ」


が、その気遣いはエリーによって打ち砕かれた。

半数が、「何言ってくれてるんですか?この野郎!!」という顔をしている。


それでもその気持ちを言葉には出さず、


「えぇと。クラウン様。それはどういった意味で?」


クラウンの部下が、おずおずといった感じで尋ねてくる。

エリーは、それに自信満々で、


「言葉通りの意味だ。いつかは正面からぶつかることを避けられないだろうし、今のうちに戦力を削っておくのは悪くないと思ってな」


と、答えた。

コレには、皆納得。


ただそれに納得はできたとしても、


「では、誰を狙いますか?」


「『左足』。裏切りそうな奴とかいるか?」


「えぇ~。裏切りそうな奴ねぇ。『右腕』は、利益で動くタイプだから、上手くやれば引き抜けるかもしれないよぉ」


部下が、『左足』に内情を聞き出した。

それを受けて、部下たちの頭の中では、有力候補は『右腕』となっていく。


「……利益で動くか。従うフリをしてこちらを裏切る可能性もあるから、あまり進んで引き抜きたくはないな。それよりも、我としては『左腕』を狙いたい」


沈黙が訪れた。

『左腕』なんて、引き抜ける要素が思いつきもしないのにエリーが狙うと言ってしまったのだから、それも当然。


「ま、まあ、幹部を狙うというなら、幹部の能力を教えとくねぇ」


『左足』が空気を変えるように口を開く。

クラウンのメンバーも、それで落ち着きを取り戻した。


「まずは、幹部全員が使える能力ねぇ。それが、『ステータス割り振り』」


「「「ステータス割り振り?」」」


「そう。具体的に説明すると、攻撃力を防御力にプラスしたりできるって感じだねぇ。まあ、全部のステータスを防御力に入れたのに、クラウンの攻撃は効いたんだけどぉ」


『左足』は自分の腹部を見ながらいう。

クラウンのメンバーは、それに優しい目を向けた。


 --あれ、私に変な視線を向けている子たちがいるわね。どうかしたのかしら?

エリーに冷たい目を向けた者もいるとかいないとか。


「それで僕の能力は、死角に入っている範囲なら何の制限なしに瞬時に移動できる、『瞬間移動』っていうのだよぉ」


『左足』はそう言って立ち上がると、直後姿が消える。


エリーが振り返ると、そこには消えたばかりの『左足』の姿が。

 ーー便利ねぇ。屋敷歩き回るの疲れるし、私も欲しいわ。


こうしてまず最初の説明は終了。


「次は、『左腕』の能力だね。『左腕』は、ステータスが常に5倍になってるよぉ」


『左足』は何ということもなさそうに言う。

だが、部下たちは慌てた。


「な、何だそれ!?」


「5倍って強すぎるだろ!??」


「ク、クラウン様!本当にコレを狙うんですか!?」


部下の1人がエリーに詰め寄ってくる。

エリー、少し腕を考えた後、頷いた。


「ほ、本気ですかぁ~」


そんな感じで、会議は続いていく。

夜はこうして更けていった。


そうして新たな情報と新たな目標を定めたのだが、翌日。

全く関係ないところも変化を始めてしまった。


勉強を教わろうと、いつもの部屋に行くと。


「ごめんなさい。エリー。私には、もう教えられないわ」


そう言って、キシィに頭を下げられた。

エリーは意味を理解するのに数秒間固まったが、理解ができると表情を厳しい物に変える。


「ということは、私との約束を破る。ということでよろしいですの?」


そう尋ねるエリーの声は、とても冷たかった。

キシィは顔を少し青くしながら、全力で首を振る。


「ち、違うわ!!」


「では、どういう事か説明していただいても?」


エリーが冷たい笑みを浮かべると、キシィは下を向いた。

それから、決意を込めた表情で顔を上げ、


「エリーのレベルに、私が追いつけなくなったの。もう、私が教えることが不可能な次元にエリーは行ってしまったのよ」


「………そう、ですか」


エリーも理解はしていた。

キシィの話せるネタが尽きてきているということに。


「私の教えられることは全部教えたから、私の知らないような難しい本も読んだわ。でも、それは私が分からないのにエリーには分かって、逆にエリーに教えられる始末で。もう、あなたに私は教えてあげられることはないのよ」


キシィは暗い表情で語った。

エリーも、否定できないのでそこに関してはなんとも言えない。


「じゃあ、私はこれからどうすれば良いのでしょうか」


エリーは自分のこれからを尋ねた。

 ーーまあ、聞いてみたは良いけど。キシィには、本を読めくらいしか言えないわよねぇ。


と、思っていた。

だが、


「魔法を、勉強して貰うわ」


「……へ?」


キシィは考えていた。

エリーに魔法を学ばせるということを。


「魔法ですの?確かに私は1つも魔法は使えませんが、先生などは」


「大丈夫よ。教えてくれる方も見つけたわ」


キシィは笑顔で答える。

昔の冷たい目はそこにはなく、今は優しさにあふれていた。


「では、どなたが教えてくださるんですの?」


エリーは魔法を教えてくれる人物を尋ねた

キシィは苦笑して、


「こちらに来て貰っているわ。お入りください」


キシィは、部屋の扉の方に声をかけた。

そこから出てくるのは、


「さっきぶりね。エリー」


「え?お母様?」


現れたのは、アルティーナ。

覚えていないだろうが、エリーの実母である。


「アルティーナ様は、中級までの基本魔法が使えるのよ」


キシィが実母を呼んだ理由を説明する。

エリーは、今まで知らなかった設定を知って、興味深そうに母親を見た。


「では、お母様。これからよろしくお願い致します」


「分かったわぁ!私に任せなさい!」


母親は自信満々に胸を張った。

 ーー魔法。ファンタジー感が更に増してきたわ。


密かにテンションを高めつつエリーたちは、訓練場に移動した。

母親は、そこで水晶を取り出す。


「まあ、意味が分かるかは分からないけど、属性を図るわね。この水晶に触って貰えるかしら?」


「あっ。はい」


エリーは水晶に触れてみる。

その水晶は、少し鑑定に使われた水晶に似ている気がした。


ズオッ。

触れた水晶に変化が起こる。


「金と紫と……黒?」


母親は首をかしげた。

エリーはその反応を見て、焦る。


 ーーこの属性って、加護とかの影響が出るヤツよね!

エリーは、黒いモノが闇の加護の影響だと理解した。


「き、金と紫が混ざったんではないですか?2属性持っているとこうなるとか」


「ん~。そうかしら?まあ、何でも良いわ」


特に気にしたようもなく、母親は水晶をしまった。

そして、


「それじゃあ、炎魔法を覚えましょうか」


「へ?」


エリーは戸惑った。

その様子を見て、エリーがよく聞こえなかったのだと思い、母親はもう1度言う。


「炎魔法、覚えましょう」


「……はい」


さっきの属性調べるのは何だったんだ。

という感じである。


「それじゃあ、お手本を見せるから見ていてね」


「はい!!」


「フー。……よし!『ファイアァァァボォォォォルッ!!!!!』」


1度深呼吸をして、目を閉じる。

それから、クワッ!と目を見開き、有名な炎魔法を叫びながら、腕を振りかぶった。


 ーーえ?ファイアーボールよね?そんな気合い入れる必要が、

ボンッ!!


ちょっとした爆発音。

当たったら火傷するだろうなぁ。といった感じの威力。

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