悪役令嬢、強い幹部
左足と別れ、エリーは帰り際に幾つか火傷蜥蜴のモノたちを殺害して帰った。
それからは何事もなく、次の日へ。
「ん?どうしたお前たち」
エリーは夜になり、クラウンのアジトへ入った。
なんと、そこにはほとんどのメンバーがいる。
ーーえ?毒龍を守るはずでは!?
エリーは、なぜアジトに集まっているのか分からず、焦った。
「……申し訳ありません。クラウン様」
クラウンのメンバーを見て首をかしげているエリーに、ファーストが謝ってきた。
それに続いて、他のモノたちも頭を下げてくる。
ーーえ?これもしかして、
エリーは嫌な予感がした。
「な、何があったのだ?」
「………毒龍が、壊滅しました」
嫌な予感が的中した。
エリーたちが守る予定だった毒龍が、壊滅してしまったというのだ。
ーーこれじゃあ、火傷蜥蜴がまた戻ってきちゃうじゃない!!
エリーは目の前が真っ暗になった気がした。
「……詳しい報告を聞こう」
エリーは暗い感情を押し込め、とりあえず状況確認をすることに。
部下たちは頷き、報告を始めた。
「まずはA地点ですが、こちらは『左腕』にやられた様です」
「B地点も同じく『左腕』に」
「C地点は、2地点の壊滅を受けて逃亡しようとしたモノとそれを止めようとしたモノ同士で争いが起こりまして」
「D地点は………」
エリーに各地点の壊滅という言葉と、その壊滅理由を聞いた。
たまにあるバカかと思うような壊滅理由に、エリーは頭を抱えたくなりながらも報告を聞いていく、
「……以上となります」
報告が終わった。
エリーは誰にも聞こえないような大きさで、ため息をついた。
ーー完全に壊滅してるじゃない!!しかも、ほとんどの壊滅理由が、『左腕』にやられたって言うモノなんだけど!!
1人でほとんどの壊滅を作った『左腕』という存在に、エリーは文句をたれた。
「……仕方ない。では、まだ残っている火傷蜥蜴の精鋭たちを始末してくる」
今できることはそれくらいしかない。
将来の脅威を減らすには、そうするしかないのだ。
「どこに残っているだろうか」
エリーは火傷蜥蜴の拠点を探す。
とは言っても、最初は知っているアジトがあるので探すと言うほどの作業ではない。
「まずは1つ目」
エリーは魔力を感知して、中に人がいないか探る。
だが、全く反応はなかった。
「いないのか」
残念に思いながらも、何か良いアイテムが残っていないかと考えながら拠点の扉を開く。
そこには、
「っ!?何だコレは!?」
大量の死体が転がっていた。
エリーは死体に駆け寄り、顔を確認する。
「この顔、見覚えがあるな。確か、火傷蜥蜴が逃げるときに一緒に消えた人間の1人だったはずだが」
エリーは、この者も火傷蜥蜴だったのだろうと推測した。
だが、
「なぜ、殺されたんだ?」
「首の切り傷以外に外傷はなし」
エリーは死体の損傷を確認していく。
その結果、全ての死体が同じ殺され方をしていることが分かった。
「1人でこの数をやったのか?」
エリーは疑問に思いながらも、次の場所を探すことにした。
するとそこも、
「やられてるな」
死体だらけだった。
そして、同じように首の切り傷だけ。
「首をこんな簡単に狙えるとは、相当な腕の持ち主のようだな」
切り傷と言っても、そんなに生やさしいモノではない。
首の半分以上が切断されるレベルの傷だ。
「ここもダメか」
エリーは更に幾つかの拠点を確認した。
結果は全て全滅。
そして、知っている中では最後となる拠点にたどり着いたところで、
「死ねぇぇ!!!」
「死ぬのはお前だよぉぉ!!!」
争っている声が聞こえた。
エリーは素速く魔力を感知し、争いが起こっている場所へと向かう。
ーーん?あれは!?
エリーは戦っている2人を見て、驚く。
「おい『左足』。こんな所で何をやっている」
エリーは声をかける。
すると双方がエリーを向き、それぞれの反応を見せた。
「あぁ。お前、生きてたんだぁ」
『左足』は嬉しそうに言う。
なんと戦っていたのは、昨日エリーが毒龍へ入れようとしていた『左足』だったのだ。
「お前は何だ?『左足』の仲間か?」
『左足』と戦っていた少年が尋ねてくる。
エリーはそれに、肩をすくめて答えた。
「答える気はないって言うのか!なら、お前も殺してやるぜぇ!!」
ーーいや!違うわよ!!まず、『左足』がどんな立位置にいるか分かってないし。
「貴様は何者だ?」
エリーは、『左足』と戦っていた少年に尋ねる。
左足が火傷蜥蜴のモノであることを考えれば、戦う相手は必然的に毒龍。
ーー私から逃れるために、下へつくと嘘をついた。それから、部下になるというフリをして毒龍に近寄いて、殺したと言った感じかしら?
エリーは、今回起こったことを予想する。
だが、その予想は外れることとなった。
「俺様を知らないのか?俺様は、『左腕』、火傷蜥蜴の幹部様だ」
「……ほう」
『左腕』。
クラウンの部下が、毒龍を壊滅させた要因として話していた存在。
「なら、なぜ『左足』と戦っているんだ?」
エリーは尋ねる。
『左足』も火傷蜥蜴の一員な訳で、仲間なはず。
「は?それは勿論、『左足』が裏切ったからに決まっているだろ」
「そうだよぉ。お前、僕が毒龍につくって言ったの忘れたのぉ?」
ーー本当に裏切ってたんだぁ。
というのが、2人の話を聞いて思った感想だった。
「そうか。残念だったな。『左足』。毒龍はすでに壊滅したぞ」
「そうだねぇ。僕も驚きだよぉ。『左腕』が来るとは思ってなかったからねぇ。……あっ!でも、こっちに来てた火傷蜥蜴の雑魚たちは全滅させといたよ」
『左足』は思い出したように告げる。
エリーも流石に驚きを覚えた。
「あぁ。アレをやったのはお前だったのか。…………ふむ。そうまでしてお前が毒龍に協力するというのなら、我も共に戦おうではないか」
「おぉ!本当ぉぉ?僕も、『左腕』に1人では勝てないから助かるよぉ」
エリーは『左足』の隣に並んだ。
そして向かいの『左腕』を見据える。
「はんっ!1人増えたところで、俺様に勝てると思う、グフォッ!」
先手必勝。
エリーは素速く『左腕』の懐に入り込み、ボディーブローを放った。
「はっ!!」
それに続いて、今度は『左足』が『左腕』の後ろへ現れ、後頭部へ回し蹴りを放った。
ーーうわぁ。私がやっといてなんだけど、痛そう。
「ぐああぁぁぁ!!!!」
『左足』とエリーから攻撃を受けた『左腕』は、痛みのためか叫び、腕を振り回した。
エリーたちは素速く後退し、それを避ける。
「や、やるじゃねぇか。特に鳥仮面のお前。今のは重かったぜ」
『左腕』は震える声で言う。
声も震えているし、手でパンチをくらった場所を押さえているので、相当痛かったことが読み取れた。
「ん?今のは挨拶代わりだぞ」
だからこそ、エリーは煽る。
こうして相手を怒らせ。自分に注意を引き
「隙ありィ!!」
『左足』に攻撃させるという作戦だ。
『左足』の跳び蹴りが、また『左腕』の後頭部に直撃した。
ガスンッ!
「っ!?」
重い音共に、『左腕』の体が前に倒れた。
だが、その方向きは途中で止まる。
「か、硬い!!」
想定以上の硬さだったのだ。
足が逆にしびれるほど。
そしてそこへ、
「ふんっ!」
『左腕』が反撃とばかりに腕を振る。
『左足』は、バックステップでそれを躱した。
「あれぇ。効いてなさそうだねぁ」
「当然だ。お前の攻撃など、痛くもかゆくもない」
『左腕』は余裕そうな笑みを見せる。
直後、その顔がぶれる。
ガンッ!
「グフッ!??」
その顎にアッパーカットが直撃し、少し浮かび上がった。
更に追撃で、連続のボディーブローが入る。
「ぬおぉぉぉお!!!?????」
『左腕』は腹筋に力を入れて耐えた。
子供には似つかない筋肉の感触が、殴っているエリーの手に伝わる。
「効いてないとしても、やらせて貰うよぉ!!」
攻撃に『左足』が加わる。
腹部への連撃、頭部への連続蹴り。
それでも、『左腕』はよろめくことすらなかった。
「ふぬぬぬぬぬぬうっ!!!!」
『左腕』は、全力で耐えた。
エリーの拳を受けても、『左足』の蹴りを受けても倒れないなんて、かなり異常に見えた。
「ふぬあああぁぁぁぁ!!!!!!」
突然『左腕』が叫んだ。
クロスさせていた両手が開かれ、『左腕』から強い覇気が出る。
「おっと」
エリーは数歩下がった。
だが、『左足』は下がらずに蹴り続ける。
「邪魔だぁぁ!!!」
「っ!?うわああぁぁぁ!!????」
『左足』はいとも簡単に吹き飛ばされてしまった。
エリーは苦笑いを浮かべる。
「覇気によって吹き飛ばすか。我も、少し本気を出した方が良さそうだな」
エリーは認識を改め、指輪を取り出した。
その指輪に込められた呪いを、自分の体に纏わせていく。
「な、何だそれは!?」
『左腕』は、エリーの腕に纏う靄を見て、警戒心をあらわにした。
だが、エリーは質問に答えず、そのきりが纏った拳を突き出す。
「ふんっ!……な、なぁぁぁ!???」
『左腕』は、全力で耐えた。
だが、それでもエリーの拳は止められず、
ズゴォォォォ!!!
『左腕』は地面を滑っていった。
後ろにあった木々を押し倒しながら、左腕の勢いは収まっていく。
その顔には、苦悶の表情が浮かんでいた。
「……すさまじい力だな。だが!それで俺は殺せない!!」
『左腕』は叫んだ。
『左足』には、それが苦し紛れの言葉と分かる。
だが、エリーは別の受け取り方をする。
それが挑戦だと受け取った。
「良いだろう。では、もう1段階上げようではないか」
エリーはそう言って、更に追加で指輪を取り出した。
ーー3つの呪いによる攻撃。これを耐えられるかしら?




