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悪役令嬢、体験会

「それではお兄様。移動しましょうか。お三方とは、しばらくお別れですわ」


エリーがそう言うと、クイフ、ターリル、ガリドルの3人は首をかしげた。

バリアルは予定を理解しているようで、仕方なさそうな顔をしている。


 ーーバリアルの、仕方ないなぁ~。って言う顔が怖いんだけど!何!?まだ戦い足りないとか、そういう感じ!?

エリーはちょっと危険を感じた


「私たちは、これからお勉強がありますの」


エリーは事情を説明する。

それで3人は、納得したような表情をした。


「もう勉強を始めてるのか」


「早いなぁ」


ターリルとクイフは素直に尊敬の声を上げた。

だが、ガリドルは、少し違う反応を見せる。


「実は、僕も勉強は手を付けてるんだ。良かったら見学して良いかな?」


ガリドルは、マウントをとりたかった。

どういうマウントかと言えば、


「そんなのも分かんないのかよぉ。ぷぷぷ。仕方ないから、僕が教えてやるよぉ」


こんな感じだ。

ガリドルの頭の中では、完璧なマウントの取り方が思い浮かんでいた。

エリーたちの事を嫌っているわけではないが、ターリルが剣術でまけたため自分が巻き返そうという謎の対抗心を見せているのである。


そんなことを考えているとは知らず、


「失礼致します」


エリーは、部屋へと入る。

部屋には、教育役であるキシィと弟のアシルドが待っていた。


「あら?エリー。その方々は」


キシィは、エリーの後から部屋に入ってきた面子を見て、少し驚いた様子を見せた。

このメンバーにも勉強を教えて欲しい、とでも言われると思ったのだろう。


「ああ。この方々は見学ですわ」


エリーが安心させるように言うと、キシィは分かりやすくほっとした表情をした。

それから、チラチラ3人の方を気にしながらも、授業を始めた。


「えぇ。まずは、アシルドに復習でこの問題をやって貰いましょう。それから、バリアルはこれ。エリーはこれよ」


キシィから問題を渡される。

エリーたちは、ペンを持って渡された紙に書き込みを始めた。


「お、終わりました」


まず、アシルドが終了した。

そこで、キシィは採点を行い、今日の授業をアシルドに伝え始める。


「今日アシルドにやって貰うのは、この第3魔法方程式で……」


アシルドに行われる話を聞きながら、エリーはチラリと横目で見学者たちの表情を見る。

勉強を始めていないクイフとターリルは、興味深そうな顔をしていた。


問題は、ガリドル。

凄いムカつく顔をしている。


 ーーあの顔、自分の方が上だと思ってる顔ね。年下の子供に勝って喜ばないで欲しいわぁ。

エリーは少し呆れながら、問題を解いていく。


「終わったよ」


「ああ。では、バリアルは、加護の歴史について学んで貰いましょう」


バリアルが解き終わり、今度はバリアルへの解説が始まった。

ターリルとクイフの表情は、大混乱していて知恵熱が出そう。みたいな感じである。


ガリドルも今度はかなり険しい顔をしていた。

 ーーギリギリ知っているといった感じかしら?


エリーが推測しながら問題を解いていくと、数分後にやっと終わった。

エリーは顔を上げ、


「終わりましたわ」


「………ぁ。全問正解ねぇ。えぇっと、今日のエリーへの授業は、魔法反射による魔力濃度計算についての、極小範囲のはんらんまりょくかんけい?について、解説を………」


途中からキシィの知らないような単語が出てきて、読み方がかなりあやふやな感じである。

話が難しすぎて、クイフとターリルはただ呆然としていた。


ガリドルは、必死に考えようとしたが途中で力尽きたようで、口から魂が抜け出ていた。


そんな様子で勉強は進んでいき、1時間ほど。


「それでは、今日はここまでにするわ」


「「「ありがとうございました」」」


授業が終わった。

エリーは1度伸びをして席を立つ。


「「「……」」」


エリーが後ろを見ると、見学者3名の顔が目に入った。

3人ともうつろな表情をしており、ピクリとも動かない。


「お三方。大丈夫ですの?」


エリーがそう呼びかけても返事はない。

エリーは首をかしげて、もう1度、


「お三方ぁ?」


「「うおっ!?」」


少し大きめの声で言ってみると、クイフとターリルは正気に戻った。

だが、ガリドルの方はまだ正気に戻っていない。


1番精神的にダメージを受けたのが、ガリドルだったよう。

エリーは人差し指を立てて、


プニッ。

指から伝わる柔らかい感触。


「っ!?あ、エ、エリー嬢」


その柔らかいものは、ガリドルの頬だった。

さすがに触られると、意識が戻ってきた。


そして、意識が戻ってきて最初に見たものはエリーの顔。

その顔が、いわゆるガチ恋距離という近さにあった。


「大丈夫ですの?お具合が悪いようでしたら、少し休みますか?」


「い、いや。だだだ、大丈夫だ」


ガリドルは首を振る。

エリーはそれを心配そうに見ながらも、立ち上がり、部屋の扉へと向かった。


「もうすぐ昼食のお時間ですから、遅れないでくださいまし」


「「「分かった」」」


エリーの呼びかけに、3人はうなずく。

それを確認してから、エリーは部屋から出て行った。


残された3人のうち、ガリドルの顔が少し赤く染まっていた。


そのまま昼食を食べて午後になって。

今度は、剣術の時間。


「それでは今日も始めましょうか」


「「よろしくお願いします」」


バリアルとエリーは、教師役のヒューズールに頭を下げる。

今日は、2人だけでなく、


「「「よ、よろしくお願いします!!」」」


勉強の方は見学していた3人も、参加することに。

剣術の経験がないらしいクイフとガリドルは、どこか緊張したような表情をしている。


「それでは、今日はお三方も参加すると言うことで、少し基本の時間を少なくしましょう」


ヒューズールは、3人を楽しませるための内容を考えた。

そのため、飽きやすい基本練習は少し抑えめに。


「それでは、軽く模擬試合を行います」


「「「「はい!!!」」」」


模擬試合が始まる。

最初はクイフとガリドルの戦い。

内容は割愛するが、結果はガリドルの勝ちだった。


次の試合は再戦であり、


「そこまで!!バリアル様の勝ち!」


ターリルとバリアルの戦い。

その戦いは、もう1度バリアルの勝利で幕を閉じた。


「くっ!負けてしまったか!」


「いやぁ。今回もギリギリだったよ」


さて、これでやっとエリーの順番が回ってきたわけだ。

ただ、


「あの、私はどなたと戦えばよろしいのでしょうか?」


対戦相手がいなかった。

男子は全員戦い終わってしまったのである。


そこで相手として出てきたのが、


「では、私がお相手になりましょう」


ヒューズール。

 ーー子供相手に戦って、どういう結果で終わらせるつもりなのかしら?


「あら。ヒューズール様がお相手して下さりますの?」


エリーは笑みを浮かべて、剣を構えた。

ヒューズールは黙って、同じように構える。


2人の様子を見たバリアルが出てきて、剣を上に掲げた。

バリアルが指示を出すつもりのよう。


「はじめ!!」


バリアルが手を振り下ろす。

直後、2人は同時に動き出した。


両者ともに、駆けだすが、両者で構え方が違う。


ヒューズールは上段に剣を構え、振り下ろそうとしている。

エリーは、剣を抱え込むような姿勢になっており、突きの準備をしていた。


「はぁぁぁ!!!」


ヒューズールは剣を振り下ろす。

だが、エリーはその脚を横にそらすこともなく、


「シッ!」


剣を突き出した。


「ぬおっ!?」


ヒューズールは驚きの声を上げる。

まさか、エリーが避けずに入ってくるとは思わなかったのだ。


とは言っても、仮にも元騎士。

この程度の攻撃、


キンッ!


「甘いですな!」


防ぐこともかわすことも容易い。

エリーの剣ははじかれ、体ごと横にのけぞる。


「そうですねぇ!」


エリーはそのままのけぞるようにしながらも、片足を軸にしてローキックを放つ。

狙いは、


ガクッ!

「うおっ!?蹴りでバランスを崩すとは、考えました、なぁ!!」


だが、エリーが成果を出したのはそこまで。

バランスを崩しながらも、振られた剣が、エリーの首の前で止まった。


「そこまで!師匠の勝ち!!」

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