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悪役令嬢、新ステータス

「インク消し、売り切れです!!」


「「「えぇぇぇ!!!!」」」


売り切れの言葉を従業員が叫ぶ。

それを聞いた客たちは、驚きと落胆の困った声を上げた。


その様子を、エリーとファララは静かに眺めていた。

2人は10分ほど無言でいたが、その沈黙をファララが破った。


「すさまじい売れ行きですな。さすがはエリー様です」


「ありがとうございますわ。ただ、流石にここまで売れ行きが良いとは思いませんでした。完売になるのは、もう少し先だと思っていたのですが」


「うぅむ。意外と、字を間違って書いてしまうモノは多いのかもしれませんな」


2人ともそれぞれの感想を言う。

そうしている間にも、


「あっ。売り切れてる!」」


「店員さん!!インク消し、もうないんですかぁ!?」


インク消しを求めるモノたちが続々とやってきていた。

そんなモノたちに、店員が売り切れだと伝えていく。


そしてそれは数週間経過した後も、


「売り切れでぇす!!」


「「「うそぉぉ!!???」」」


いまだインク消しの人気は高かった。

そのため、インク消しは1人1つだけという制限が付くように。


それでも売り切れるのだから、かなり書き間違えるものが多いことが分かる。

そして、それだけ人気が高いと、変な名前をつけるモノがいて、


「また、あのインク消し商会無かったんだけど」


「まじで?もっとあの商会、頑張って欲しいよなぁ」


インク消し商会。

商品名と商会名が一緒になってしまっている。


こういう名前が広まってしまったのだ。

そして、広まってしまえば、それを消すことはかなり難しい。


「売れすぎるのも、良いことばかりではないのですね」


「そうですわね」


ファララ商会の名前がインク消し商会に変わってしまうと、会長のファララの知名度が落ちてしまう。

それは、商会としてはあまり良いことではなかった。

エリーもこれには苦笑いをするしかないのであった。


それから数日。


「エリー。これ、凄く良いぞ」


エリーは父親の言葉と主に、細長いモノを渡された。

先端が丸くなっていて、どこか見覚えがある形をしている。

というか、完全に見覚えがある。


「これ、何ですの?」


一応エリーは質問してみる。

すると、父親は胸をはって答えた。


「インク消しだ。字を書いているときに間違ってしまったときに、それで間違えた文字を擦ると文字が消えるのさ」


「へ、へぇ~。因みに、この商品がどこの商会のモノか知っておりますか?」


エリーは知らないだろうと思いながら尋ねる。

だが、一応父親は、


「ああ。それ、インク消し商会の商品だと聞いたぞ。まさか、その商会も買収するつもりなのか?」


正式ではない方の名前を知っていた。

エリーは自分の与えた商会への影響に、頭を抱えたくなる。


(前までは、ファララ商会って皆が知っている名前だったのに!なんでインク消し商会の方が有名になってるのよ!?)


なんてこともありつつ、結局商会関係で忙しかったエリーは暗殺など全く気配がないまま活動を続けていくのであった。

ただやりたいことは商売以外にもいろいろとあって。


とある王族たちとのお茶会の日。

第2王子のアロークスが驚きの発言をしてきた。


「最近、サッド家のデュランスと仲良くなったんだけど、エリーはどう思う?」


「え?デュランスと?」


デュランスと言えば、教会のイルデと会うように調整したばかりである。

エリーは家に帰ってイルデと面会し、このお茶会の1ヶ月ほど前に面会を成功させたのだ。


「イルデとたまたま会う機会があってさ。その時にデュランスの話を聞いて、興味があったからイルデも併せて3人で話してみたんだよ。そしたら、凄い意気投合して」


(イルデ。ナイス!!)

エリーは心の中でイルデを褒めた。


アロークスの話を聞く限り、特殊グループが完成したと言うことである。

エリーの頭には、これから起こりそうなイベントなど、気になることが沢山湧いてきた。


「イルデとデュランス。仲良くなったんですのね。良かったですわ。……実は、イルデにデュランスを紹介したのは私なんですの」


エリーはさりげなく、グループに関われるようアピールしておいた。

できれば、間近で3人のイベントなどを見てみたかったのだ。


「そうなの?デュランスとも仲いいのか。エリーは友達を作るのが上手いねぇ…………でも、なんで僕たちって気が合うのかな?」


アロークスは、自分たちの関係性を考えて首をかしげる。

それぞれ身分が高いという共通点はあるが、それぞれの親に似ているところがあるとも思えない。


まあ、エリーから見ると1番の共通点は正義感が過剰な所なのだが。

その共通点によって、ゲームを触ったモノたちはこの特殊グループのことを「正義感強メン」とか呼ぶ。


もっとひどいモノでは、「猪突猛進」とか、「正義感で前見えなくなった人たち」とか。「正義感以外を捨てたバカ」とか、色々ある。

流石にその辺りは可哀想なので、エリーは正義感強メンと呼ぶ。


「あっ!そうだ。エリーが全員と仲いいなら、僕たちと遊ぶのにエリーも混ざる?」


アロークスが思いついたように言った。

エリーは即座に。


「行かせて頂きますわ」


行くことを決定。

ここで行かないわけがない。


別にこの特殊グループが好きだったわけではないが、今までこの世界で過ごしてきて興味が湧いてきたのだ。

彼らと共に過ごしてきた時間は、エリーにとっても楽しいモノであった。


が、それよりも大事なのは、

(そのメンバーで集まられてアロークスたちの正義感がまた大きくなったら面倒だわ!忘れてたけど、私、アロークスから貴族の地位を剥奪されるんだった!!)



数日後。

屋敷に招待状が届いた。


内容は、アロークスからの遊びの提案。

当然エリーは了承し、当日。

エリーは神殿に入る。


「皆様。こんにちは」


「あっ。エリー」


「エリーちゃん。久しぶりぃ」


男子3人がエリーを迎える。

メンバーは当然、特殊グループのモノたち。


第2王子のアロークス、教皇の息子のイルデ、サッド公爵家の長男デュランスだ。

このメンバーの地位で考えると、1番下はエリー。


いくら公爵家の令嬢でビジネスをいくつも成功させているからと言って、それで地位が上がるわけではない。

同じ公爵家のデュランスにも、次期公爵とただの令嬢では格差があるのだ。


それでも、男子たちがエリーを見下すことはない。

理由は勿論、友人だから。


こうして3人との時間が始まるわけだが、今回エリーが遊びに参加した理由は2つ。

1つは、特殊グループ関連のイベントが見たかったから。


そして、もう1つは、特殊グループのモノたちが折角押さえつけていた正義感を爆発させないようにするためだ。

(私の安全第一!)


3人が過剰な思想にならないように監視しようと決めたエリーに、イルデから小さな箱が手渡された。

エリーは首をかしげる。


「イルデ?どうしたんですの?」


「いやぁ。僕たちを出会わせてくれたのはエリーだから、お礼がしたいと思ってさ。3人で選んでみたんだ。良かったら貰ってくれると嬉しいな」


「まあ!そうなんですの?勿論頂きますわ!!感謝致します!」


エリーはお礼を言って受け取る。

中身は、指輪だった。


(綺麗ねぇ。結構高そう。……ん?指輪?そう言えば、特殊グループを作ったときに、3人から主人公にプレゼントされるのも指輪だった気が)

少し嫌な予感がしながらも、エリーは指輪を人差し指にはめる。


《特殊アイテムを装備。条件達成により、新機能が解放されます》


(ああぁぁぁ!!!!なんか面倒くさそうなことになったぁぁぁ!!!!)


エリーの貰った指輪。

それが、ゲームで主人公に贈られるモノと同じだとしたら、それには特殊な効果が付いていることとなる。


その能力は、全ステータスの上昇だ。


え?それ、加護の効果でもあったよね?

と、思うかも知れないが、全く別物である。

なぜなら、ゲームでのステータスと、この世界でのステータスは大きく違うからだ。


そのステータスは、


《エリー・ガノル・ハアピ》

オシャレ:B  ダンス:C  体力:A  学力:A  魔力:AA  攻撃力:A  精神力:A

財力:AA


こんな感じである。

こんなモノが、なんとエリーの視界の端に映っているのだ。


(視界の端に映るの、慣れないわねぇ)

エリーは、視界の端に残り続けるステータスに違和感を感じた。


「ん?エリー大丈夫?もしかして、指輪、気に入らなかった?」


「え?いやいや、そんなこと無いですわ。皆様から貰ったモノが気に入らないわけないではないですか。大切に致します」


違和感を感じているエリーを、イルデが心配してくる。

エリーは慌ててごまかした。


「この指輪、かなり高そうに見えますけど、どちらで買われましたの?」


「それは、旅の行商人から買ったんだよ」


「へぇ。では、私が買いに行くことは難しそうですね」


エリーは適当な雑談をしつつ、頭の中で新たなステータスについて考えていた。

まず、通常のステータスが、


【ステータス】

名前:エリー・ガノル・ハアピ

種族:人

LV:735

職業:公爵令嬢

HP:179200 MP:17920

攻撃力:6730 防御力:6730 機動力:6840 運:7800

スキル:『魔力感知LVMAX』『魔力操作LVMAX』『暗殺LVMAX』『一撃必殺LVMAX』

  『剣術LVMAX』『演技LV5』『洗脳LV5』『精神支配LV4』『呪纏LVMAX』

  『手加減LVMAX』『呪いLV8』『短剣術LVMAX』

称号:『力の器』『魔力と共存するモノ』『魔力を扱うモノ』『暗殺者』『断罪者』『死刑執行人』

 『死を知らせぬ者』『終わりを始まらせる者』『剣聖』『呪いを御すモノ』『力を御するモノ』

加護:『光の加護』『毒の加護』『闇の加護』


少し見たことのないスキルや称号があるかも知れないが、それは夜の活動中にい色々あったのだと察して貰いたい。

それよりも、問題はこのステータスと、新しく手に入れたステータスの差だ。


まず、新しいステータスにはスキルや称号、加護、レベルが書かれていない。

それ以外に書かれているモノで共通しているのは、攻撃力と言う文字だけである。


なのだが、攻撃力は新旧のステータスで表すモノが違う。

古いステータスで表している攻撃力は、純粋な肉弾戦闘での攻撃力。


それに対して、新しいステータスの攻撃力は、精神力というモノと関連したモノだった。

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